心身ともに健やかであり、社会的にも満たされた状態であること意味するウェルビーイング。近年そのキーワードを耳にする機会が多くなっているなか、ウェルビーイングに関する新しい活動をスタートしたのが、教育や介護、生活といった事業を通じて「よく生きる」と向き合ってきたベネッセだ。ベネッセ(Benesse)は、ラテン語のbene(よく)とesse(生きる)をかけ合わせた造語で、英語ではウェルビーイング(Well-Being)。1990年に「Benesse=よく生きる」をフィロソフィ・ブランドとして発表し、SDGsが目指すウェルビーイングを理念として掲げながら、その実践を続けている。
そして今回、ウェルビーイングを問い続けながら日本の社会を見つめてきたベネッセが、「ベネッセ ウェルビーイングLab」の設立を発表。一人ひとりの多様な価値観の交流、ウェルビーイングへの理解を深める機会を創出していくとのことだ。
「ウェルビーイングとは?」という“問い”から、「よく生きる」のあり方をアップデートしていく
「Benesse=よく生きる」を掲げた90年代から約30年の時を経た今、社会のあり方や個人の考え方は大きく変化している。経済成長を中心とした価値観は過去のものとなり、より個人の多様な価値観を大切にする社会へとシフトしてきた。一人ひとりが真にウェルビーイングを考えられる時代に突入したといえる。
「ベネッセ ウェルビーイングLab」はそんな時代の変化を捉え、ウェルビーイングでありたいと願う人々のために設立された。ベネッセが、教育・介護・生活など人生のあらゆるステージを支援する事業を展開するなかで培った知見を活かし、ウェルビーイングへの理解を深め、これからの「よく生きる」のあり方をアップデートしていく。ラボから生まれた考えを事業化する可能性や、起業家を支援することも視野にいれながら、「ウェルビーイングとは?」という“問い”を中心に新しい可能性を広げていく予定だ。
ウェルビーイングにまつわる情報の発信と、多様な価値観にふれる対話型のオープンセミナーなども
「ベネッセ ウェルビーイングLab」は、独自コンテンツの発信や外部からの情報紹介に加え、今後はセミナーやイベントの開催なども視野にいれている。一方的な発信で終わることなく、リアルでの対話を重視し、相互理解を大切にするものだという。
活動のキーワードは「知ろう、話そう、考えよう」。
何をもってウェルビーイングであると感じられるかは人それぞれ異なるものだ。対話を通して多様な価値観を知ることからはじめ、一人ひとりのウェルビーイングが社会へと広がることを願い、子どもたちや学生、社会人、子育て世代、ご高齢者などさまざまな人々が参加できるコンテンツを提供していく。
幸福学の専門家である前野氏、ウェルビーイングの研究者である石川氏も社外フェローとして参加
ラボ設立にあたり、社外の有識者として幸福学の専門家であり慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏と、ウェルビーイングに関する研究の第一人者である予防医学研究者の石川善樹氏がフェローとして参画する。
ウェルビーイングの専門家に加え、さまざまな環境にいる方が参画し、多様性を大切にした発信・運営がなされる予定だ。今回フェローとして発表された前野氏・石川氏は以下のように期待を寄せた。
前野氏「もともと会社名がベネッセ(=よく生きる=ウェルビーイング)であるベネッセさんがウェルビーイングLabを開設されるという必然を心強く思います。私たちは、次世代の人類に自信を持ってバトンを渡すために、誰もが『よく生きる』世界を創ることに注力すべきです。未来は私たちにかかっています。今の日本は人口が減少し、経済が停滞し、閉塞感に包まれているという見方もありますが、私はそうは思いません。経済成長に偏りすぎていた時代から『よく生きる』こと第一優先の時代へ。産業革命以来の大変革期にあって、日本は産みの苦しみを終え、ウェルビーイング推進をリードする国として復活する時です。和の国(Land of peace and harmony)のこのラボから、世界を変えましょう」
石川氏「よく生きる(Well-being)とは、刻々と変わる自身や環境に対して適応し続けていくことです。だからこそ、Well-beingという単語には現在進行形を意味する“-ing”が含まれています。ゆえに『よく生きるとは何か?』という問いは、何か固定的・絶対的な答えがあるわけではなく、自身の状況や置かれた環境により多様な方向性が存在します。一方で、動的な概念であるがゆえにわかりづらさや混乱の原因ともなっています。
以上の背景を踏まえ、私が本ラボに期待したいのは『スタンダード的な存在』になることです。言い換えれば、みんな違ってみんないいというスタンスをとらないこと。もちろん、一人ひとりの『よく生きる』があってしかるべきですが、よく生きるための“土台”については共通項が得られるはずです。そこから多くの人がそれぞれの『よく生きる』に向かって歩んでいける。そんなラボになったら素晴らしいなと思います」
また、同ラボはベネッセが2022年4月に新設したESG・サステナビリティ推進本部が事務局となり、ベネッセホールディングス 常務執行役員 ESG・サステナビリティ推進本部長の岡田晴奈氏が所長を務める。今回、ラボ設立にあたり岡田氏は以下のようにコメントを寄せている。
「ウェルビーイングのかたちは人によって違うはず。ウェルビーイングの専門家の方をフェローに迎えながら、ウェルビーイングでありたいと願う方とともに一緒に考えていきたいと思います。さまざまな価値観に触れ、思いもよらない見方や考え方を知ることでワクワクすることが起きるかもしれません。『こんな情報があったらいいな』『こんな活動をやってみたい』など、あなたの声をお聞かせください。これからのウェルビーイングを一緒に創っていきましょう」
より豊かに、より幸せに……。そう願う人は「ベネッセ ウェルビーイングLab」のこれからに注目してみてはいかがだろうか。自分の人生をどうデザインしていくかが問われる時代。このラボで“よく生きる”ためのヒントが見つかるかもしれない。