ソーシャルメディア、月間アクティブユーザー数ランキング

広告収益減など決算報告が振るわないメタだが、ソーシャルメディア市場では依然圧倒的な影響力を持っている。

2022年1月時点までのデータによると、月間アクティブユーザー数で見たソーシャルメディアランキングでは、メタが運営するプラットフォームがトップ5中3つランクイン。3つのプラットフォームを合わせた月間アクティブユーザー数は50億人を超えている。

メタが運営する最大のソーシャルメディアはフェイスブック。月間アクティブユーザー数は、29億1000万人に上る。

世界ランキングでは、これにYouTubeが25億6200万人で続くが、3位と4位はメタが運営するソーシャルメディアがランクインする。3位は月間アクティブユーザー数20億人に達したWhatsApp、4位は日本でもおなじみのインスタグラムだ。インスタグラムの月間アクティブユーザー数は14億7800万人。

メタの主な収益源は、オンライン広告だ。2021年通年の収益は1179億ドルだったが、このうちオンライン広告収益は1149億ドルと全体の97%を占めていた

このオンライン広告収益の大半は、2つのソーシャルメディアから生み出されている。1つはフェイスブック、もう1つがインスタグラムだ。フェイスブックとインスタグラムによる収益の内訳は公開されていないようだが、フェイスブックがおよそ50%、インスタグラムが44%ほどと推計されている。一部では、2024年にはインスタグラムの収益がフェイスブックを上回る可能性も指摘されている

WhatsApp、企業の利用を促す施策

現在、広告収益が頭打ちとなっている状況、メタはWhatsAppによる別のビジネスモデルの模索に乗り出している。

2022年11月17日、メタはブラジル、インドネシア、メキシコ、コロンビア、英国で、WhatsApp上でカテゴリ別に企業を検索できる新機能をローンチした。

同社リリースによると、上記の国々ではWhatsAppの検索ウィンドウから、グロサリー、旅行、銀行などカテゴリごとに企業を検索し、同アプリ上で直接コンタクトできるようになったという。ロケーションベースの検索ができるため、現在位置に近い店を探し出し、商品在庫の有無やデリバリーの可否などを問い合わせることができる。

有名ブランドだけでなく、小規模な地元の雑貨店や飲食店がWhatsAppを利用しており、検索機能により、こうした小規模なビジネスを見つけやすくなることが期待される。

注目されるのは、企業・店舗の検索から支払いまでWhatsAppのみでワンストップで可能になるのかどうかという点だ。現在、WhatsApp上で支払いまで可能なのはインドとブラジルに限定されている。

インドとブラジルは、国別WhatsAppユーザー数1位と2位の国であり、これらの国々での運営結果を踏まえ、今後他の国でも支払い機能が拡充されていくものと思われる。

世界20億人のWhatsAppユーザーのうち、インドは3億9010万人、ブラジルは1億840万人と2国でほぼ4分の1を占める。これに3位米国7510万人、4位インドネシア6880万人、5位ロシア6470万人、6位メキシコ6230万人、7位ドイツ4830万人、8位イタリア3550万人、9位スペイン3300万人、10位英国3010万人と続く

WhatsAppのビジネスモデル

企業・店舗検索機能を導入する狙いは、企業ユーザーを増やすことにある。WhatsAppは、企業ユーザーの利用料が収益となるためだ。

WhatsAppは、LINEなどと同じメッセージアプリに分類されるもので、一般ユーザーは無料でメッセージ送信・受信を行うことができる。過去には1年目は無料で利用できるが、2年目から0.99ドルの利用料を一般ユーザーにも課金するモデルが採用されていたが、後に停止された

現時点では企業向けの「WhatsApp for Business」と「WhatsApp Pay」が主な収益源となっている。

WhatsApp for Businessは、APIを通じて企業がWhatsApp上で一般ユーザーとコミュニケーションを取ることを可能にするサービス。企業はこのサービスを活用することで、販売促進やカスタマーサポートの強化が可能となる。

料金体系は、一般ユーザーからのメッセージに対する企業の返信数により料金が変動する仕組みだ。24時間以内の返信は無料となり、課金はそれ以降の返信に対し行われる。また、返信の量が増えるほど、返信あたりの料金は安くなる。

たとえば、最初の25万件までは、返信1件あたり0.0085ドルだが、25万件以上かつ75万件までは0.0083ドル、75万〜200万件は0.0080ドルと返信数のティアごとに異なる価格が設定されている。

一方、WhatsApp Payは、現時点でインドとブラジルのみで利用できる支払いサービス。WhatsAppユーザーは、友人・家族・企業などに無料で送金することができる。資金を受け取る側に3.99%の手数料が課せられる

WhatsAppの重要市場、インドとブラジルでの取り組み

WhatsApp Payの前身となる取り組みはインドとブラジルで数年前に開始されたもので、今回のローンチまで紆余曲折を経てきた。

WhatsApp支払いサービスのベータ版が世界で初めてローンチされたのは、2018年のインドだ。そのまま同国で公式ローンチされるだろうとの期待が高まったが、規制関連の問題に直面し、インドでの取り組みは大きく遅れることになる。

この間、インドに代わる市場としてピックアップされたのがブラジルだ。

メタ(当時フェイスブック)は2020年6月15日、ブラジルでWhatsApp支払いサービスを開始した

しかし同月24日、WhatsApp支払いサービスはブラジル中央銀行により停止されることになる。同中央銀行は、ブラジルの金融システムへのリスクが高いと判断し、WhatsAppの支払いサービスを停止したという。

ブラジルでの支払いサービスが再開されたのは2021年5月。これに先立ち、2020年11月にはインドで支払いサービスが公式にローンチされた

またインドでは2022年8月29日、国内Eコマース大手JioMartとの提携により、WhatsApp内で商品検索から支払いまでをワンストップで行える体制が整備された。

月間アクティブユーザー数20億人に上るWhatsApp。フェイスブックやインスタグラムに並ぶ事業となるのかどうか、今後の展開が気になるところだ。

文:細谷元(Livit