行き場のない野菜を、困難を抱える世帯の支援に 寄附食品物流ネットワーク構築の実証実験を実施

子どもの機会格差の解消を目指す、ネッスーは、農産地で発生した行き場のない野菜を、全国の困難を抱える世帯へ届ける寄附食品物流ネットワーク構築に向け、2022年12月23日より実証実験を実施し、2023年に本格稼働すると発表した。

同実証実験では、三浦市農業協同組合と連携し、豊作による市況の暴落や規格外を理由に発生した、「品質には問題がないけれども行き場のない野菜」を、青果物の流通を担う中央卸売市場を中継拠点として活用することで、大消費地である首都圏、中部圏、関西圏の約30,000世帯に寄附するという。

中央卸売市場が、寄附食品の流通拠点として役割を果たし、農産地や地域住民への貢献を実現することは、全国で初めての取り組みであるとのことだ。

■背景

わが国では、年間522万トン(2020年度)もの食品ロスが発生している一方で、子どもの7人に1人が相対的貧困状態にあり(2018年)、満足に食べられない子どもも多く存在している。

また、近ごろの物価高騰の影響により、支援が必要な世帯の困窮度は深刻化しているとみられ、フードバンク等による食支援の重要性が注目されているとのことだ。企業など生産者においても、SDGs達成への貢献のため、余剰食品を寄附することで、食品ロスを削減しつつ、困難を抱える世帯を支援する動きが活発化しているという。

子どものいる世帯にとっては、冬休みなど給食のない長期休みに家計が苦しくなるため、特に直近、支援を求める声が増加している。

■行き場のない野菜

大根やキャベツの一大生産地である三浦市では、さまざまな理由で「行き場のない野菜」が発生しており、その量は2021年度の大根だけで2,000トン以上にのぼる。三浦市農業協同組合は、農家と連携してフードバンクに寄附するなど、有効活用の道を模索してきた。

しかし、寄附が実現する量は1トン未満と少なく、全国の農業協同組合を合計しても、市況の暴落による行き場のない野菜の寄附量は、2020年度で2.5トン、2021年度で16.2トンに留まっていたという。

その理由は、大きく3つ。

1.寄附先となるフードバンク等との接点がなく、ニーズが拾えていないこと
2.寄附先に配送する手段がなく、個別配送しようとすると多額の物流費がかかってしまうこと
3.寄附先の保管スペースが狭かったり、冷蔵能力がないために、受け入れてもらえないこと

■実証実験の内容

ネッスーは、農家・農協、市場卸売事業者と連携し、「つながる、おやさい便」の仕組みを開発し、課題を解決するという。以下のように、各事業者が役割を担い、子どもたちに支援をつなげるという。

1.多くのフードバンク等と接点のあるネッスーが情報のハブを担う(システムも開発中)
2.卸売市場への農協の納品便に、寄附品も積み合わせて届け、ラストワンマイルはネッスーが担う
3.設備の整っている市場の卸事業者が、寄附品の荷受け・保管を担う

なお、同施策は世田谷区の地域連携型ハンズオン支援事業「SETACOLOR」に採択されており、都内中央卸売市場を管轄する東京都や、食品ロス削減などの課題解決に取り組む一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会のバックアップを受けているという。

さらに、食品ロス削減効果や支援世帯への経済的支援効果・栄養充足率改善効果を、東京農業大学との共同研究により評価。

■今後の展望

同実証実験だけで、昨年度の全国の農業協同組合の寄附量の約2倍の、30トンの寄附が実現。同社は、農業協同組合や、中央卸売市場との連携を加速し、野菜の寄附を拡大させることで、食品ロスを減らしながら、機会格差の解消と、子どもの栄養の充足を目指していくとのことだ。

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