グーグルでも1万人のレイオフの可能性、主要株主からの圧力と社内で高まる不安

グーグルで1万人レイオフの可能性

米労働市場全体では雇用は増えているが、テックセクターでは依然レイオフが続いている。

米労働統計局が12月2日に発表した11月の非農業部門雇用者数は、前月比で26万3000人と20万人超えの高水準を維持。レジャー/ホスピタリティ、ヘルスケア、政府部門での雇用増が反映された結果となった。

一方、11月のテックセクターは、メタやアマゾンだけでなく、ツイッター、シスコ、Stripe、セールスフォースなどの大手企業でレイオフが相次ぎ、レイオフ数は5万人を超えたと報じられている

同月の米テックセクターにおけるレイオフを規模順に見てみると、メタが1万1000人で最多。これにアマゾンが1万人、シスコが4100人、ツイッターが3700人、不動産データベースのZillowが2000人、オンライン中古車販売のCarvanaが1500人、フードデリバリーのDoorDashが1250人、暗号通貨取引所Krakenが1100人、Stripeが1000人、セールスフォースが1000人などと続く。

こうした状況下、次に大規模なレイオフがあるのではないかと報じられているのがグーグルだ。

グーグルでは現時点で、大規模なレイオフには至っていないが、各メディアはグーグル社内や株主の動向から、近いうちに1万人規模のレイオフがある可能性を報じ始めている

社内で広がるレイオフの不安、新しい人事評価システムで低パフォーマンス人材6%を抽出

1万人という数字は、おそらくThe Infomationが11月17日に報じたグーグルの新しい人事評価システムに関するニュースが情報源になっていると思われる。

The Infomationは情報筋の話として、外部からの生産性改善圧力の高まりから、グーグルは人事評価システムを刷新。この新システムのもと、マネジャーたちは、グーグルの全社員約18万人のうち、生産性が低い社員を6%選び出すことを言い渡されたという。全社員の6%がおよそ1万人となり、この「低生産的」と評価された社員がレイオフの対象になるのではないかとみられているのだ。以前の人事評価システムでは、生産性が低いと分類される割合は2%だったという。

The Infomationに続き、11月23日にはCNBCがグーグル社内でレイオフに関する懸念が高まっている様子を伝えている。

最近実施されたグーグル全社会議では、レイオフに関する質問が多数、Doryと呼ばれる社内質問システムで高い評価を受けており、社員の関心が高くなっていることが判明した。高い評価を受けた質問の中には、経営陣の責任を問うものも散見されたという。

評価が高かった質問の1つは、グーグルの社員数が前年比24%増となる3万6000人増加したことに言及しつつ、「ほとんどのチームは人員が減っている印象を受けており、この増えた社員はいったいどこに配属されているのか。また、生産性に関する懸念がある中で、短期間で社員をこれほど増やす必要性があったのか」と経営判断の誤りを指摘していた。

主要株主からグーグルCEO宛ての公開状、高まる圧力

株主からの圧力の高まりも、グーグルのレイオフ懸念を増大させる要因の1つになっている。

グーグルに対する投資家の圧力が高まっていることは、主要株主の1つであるTCI Manegementが同社サンダー・ピチャイCEOに宛てた公開要望書に見て取ることができる。

TCI Manegementとは、英ロンドンを拠点とするヘッジファンドだ。2022年4月時点の情報によると、運用資金は420億ドルに上る。同ファンドが所有するアルファベット株の評価額は、60億ドル以上という。

このTCIは11月15日付けで、サンダー・ピチャイCEO宛てに要望書を公開、この中でグーグルにおけるコストの高さを指摘し、コスト削減のために、人員削減や報酬水準の縮小に着手すべきとの要望を突きつけているのだ。

TCIは、グーグルにおけるこの数年間の雇用数の急増は、その増加スピード自体だけでなく、事業規模に照らし合わせても「過剰」だと指摘。また、グーグル、メタ、ツイッター、Uberなどのシリコンバレーの企業が今よりも遥かに少ない社員数で同水準の収益をあげられることは、公然の秘密となり、他のファンドも認識していると述べている。

またグーグル社員の報酬に関して、2021年の中央値が29万5884ドルと、マイクロソフトに比べ67%高く、また米テック企業トップ20社の平均より153%高いことに言及、この非常に大きな差(enourmous disparrity)は看過できないとし、従業員の報酬削減を求めている。

さらに、黒字化できていない部門の縮小/閉鎖を要求する文言も盛り込まれている。特にやり玉にあがったのは、自動運転車開発事業「Waymo」だ。

TCIは、自動運転に対する市場の関心が薄れ、フォードやフォルクスワーゲンなどの競合も市場を去っているのが現状であり、Waymoに投じられている過剰な投資を無視することはできないと強調。その上で、Waymo事業にかかるコストを大幅に削減すべきと要望を出している。

グーグルのオンライン広告以外の事業に関しては、9月にラップトップ「Pixelbook」とクラウドゲーミング「Stadia」事業の閉鎖が報じられたばかり。Waymoなど、他事業は今後どのような展開をたどるのか気になるところだ。

文:細谷元(Livit

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