GAFAMのレイオフ動向
新規雇用の一時停止に踏みとどまっていたGAFAMでも大型のレイオフが開始された。
11月9日には、メタが全社員の13%に相当する1万1000人以上をレイオフするというニュースが報じられた。2022年7〜9月期決算で、売上が前年同期比4%減の277億ドルに下がった一方、コストが221億ドルと19%増加。投資家からの懸念が噴出していた。同社は、一部の例外を除いて、2023年1〜3月期まで新規雇用の凍結を継続する計画という。
一方、グーグルでは現時点でレイオフには至っていないものの、レイオフの準備とみられる動きが社内で進められている。The Informationは情報筋の話として、グーグルがこのほど社員の評価システムを刷新し、生産性の低い社員をあぶり出そうとしていると報じているのだ。新評価システムのもと、全社員の6%、約1万人が「低生産性」と分類される見込みという。これまでの評価システムでは、「低生産性」と分類される割合は2%だった。
こうした中、現在アマゾンのレイオフ動向にも注目が集まっている。
2022年11月14日、ニューヨーク・タイムズがアマゾンのレイオフ計画の第一報を報じ、その後CNBCなど他メディアでも広く取り上げられた。
アマゾンのレイオフ計画では、全社員の3%に相当する約1万人が影響を受けるとみられているが、ニューヨーク・タイムズによると、レイオフは事業部門ごとに実施されており、レイオフ数は流動的で今後変わる可能性があるという。最も影響を受ける部門は、リテール、デバイス、人事部といわれている。
CNBCがリンクトインの情報として伝えたところでは、スマートスピーカーのアレクサ部門やクラウドゲーミング部門でレイオフが進められていることが明らかになっている。
アマゾンのレイオフ、2023年まで継続、インドではレイオフが困難?
2019年から2022年1〜3月期にかけて、アマゾンの社員数は79万8000人から160万人と2倍以上増加した。
増員は、本国米国だけでなく、英国やインドなど世界各地で実施されてきたため、レイオフもグローバルで実施されることなる。規模が非常に大きいため、レイオフに要する期間も長引くことが予想される。
CNBCが入手したアマゾンのアンディ・ジャシーCEOのレイオフに関する社内メモでは、レイオフは2023年まで継続する可能性があると言及されている。
世界各地で進められるアマゾンのレイオフだが、各国それぞれ異なる労働法があるため、国ごとにレイオフの進行状況は異なるようだ。
企業に厳しいレイオフ基準を課すインドでは、アマゾンは「Voluntary Separation Programme(VSP=希望退職プログラム)」を通じて、実質的なレイオフを進めようとしているようだが、企業の現状がレイオフ基準を満たしておらず、インド労働法に違反しているとの声があがっている。
地元紙The Hinduによると、アマゾン・インドはこのほど、現地社員に11月30日までにVSP申請書類の提出を求めるメールを送付。数日の猶予期間があり、12月5日まではVPS申請を撤回できるという。
VPSを申請し受理された場合、給与3カ月分に相当する退職金、在職期間に応じた特別給付などが支給されると報じられている。
一方、インドのレイオフ規定を定めた「Industrial Disputes Act 1947」では、同国でビジネスを行う企業は、事前に政府当局からの許可なしに、レイオフできないと定められており、これに抵触する可能性が指摘されている。レイオフを実施する際は、政府当局へのレイオフ申請を行い、その理由についても説明する必要があるとされる。
インドで政府当局がレイオフを許可するのは、市況が悪化し、ビジネスと雇用の継続が非常に困難な場合のみ。今回のアマゾンのケースはそれに当てはまらないとする批判が上がっている。
アマゾン、重要分野での投資を継続
アマゾンはレイオフを進めつつも、重要分野での投資を継続している。
1つはアマゾンプライムで注目された「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」などのオリジナルコンテンツ/エンタメ分野だ。
同分野への投資は、2020年の110億ドルから2021年には130億ドルに拡大。また、11月24日ブルームバーグが報じたところでは、アマゾンは映画館向けの映画制作に年間10億ドルを投じる計画という。年間12〜15本の映画を制作する予定だ。
インドでのクラウド事業にも注力しており、11月23日には、インド・ハイデラバードに同国2カ所目となるAWSクラウドインフラリージョンをローンチしたばかり。このリージョンでは、計4万8000人以上の雇用が生まれる公算という。
文:細谷元(Livit)