日本の英語を考える会は、日本独自の「和製英語」と、誤訳や不自然な英訳による「伝わらない英語」の中から、2022年を象徴するワードをツイッター上で一般公募し、集まった約30の候補ワードやフレーズの中から、「日本の英語オブザイヤー2022」を発表した。
■「和製英語」部門
「和製英語」部門で選出されたのは「ライバー」。ライバーとはライブ配信を行う人で、Youtube、Instagram、TikTokなどライブ配信プラットフォームは今や多岐にわたり、なかにはライブ配信で生計を立てている人もいる。
このような人々のことを英語ではonline streamer、あるいはlive streamerと言う。和製英語である「ライバー」をそのまま英語表記しようとすると「liver」となるが、意味はレバー、すなわち肝臓の意味になってしまう。
また、次点で「メタい」と「リアル開催」が選出。「メタい」はアニメやドラマなどで登場人物が読者・視聴者視点で発言する手法(「紙面の都合で、今週はここまで」と作中キャラクターが発言する、など)のこと。
英語に接尾語「い」をつけて和製英語化するのはよくあるパターンで、たとえば「エモい」などもその一例だ。
もう一つの次点「リアル開催」は、オンラインではなく対面でのイベントや会議が徐々に再開されるようになった今年、見聞きすることの多いワードとなった。英語ではin-personと言う。
■「伝わらない英語」部門
「伝わらない英語」部門で選出されたのは「Humishige Naka body」。「Humishige Naka body」の日本語原文は「中文繁体」。台湾で使われている中国語の旧字体のことだが、英語ではtraditional Chineseという。
ウェブページの言語選択オプションの「中文繁体」が、機械翻訳によって「文繁」→フミシゲ、「中」→ナカ、「体」→ボディーへと誤訳された事例となっている。
同社は、機械翻訳の普及は多言語コミュニケーションを飛躍的に容易にしたが、その精度にはまだバラつきがあり、機械翻訳まかせにせず人間による校閲を組み合わせる必要があるとしている。
また、次点に選出されたのは「inundation」となった。気象庁HPなどで「浸水」の訳語として採用されているが、本来のinundationは「人や物であふれている、覆いつくされている」といった意味合いで、河川の氾濫はfloodまたはfloodingのほうが英語としては一般的。
台風やゲリラ豪雨など日本特有の気象状況を英語で適切に表現することは難しく、原文の意味するところを汲んで慎重に訳語を選ぶことが望まれる。また、災害警報においては正確さやわかりやすさが極めて大切であり、inundationとfloodの違いはなにか、訳語の定義を明確にすることも必要ではないかと同社は考察している。