三菱総合研究所(以下、MRI)は、研究レポート「CX2030:バーチャルテクノロジー活用の場としての広義のメタバース」を発表した。
広義のメタバースは、ゲーム・アミューズメントや一部のオンラインツールとしての利用にとどまらず、広範な産業領域に活用され、2030年代に向けて社会実装が進むと期待されるとのことだ。
1.背景
MRIでは50周年記念研究※の中で、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、バイオ・トランスフォーメーション(BX)、コミュニケーション・トランスフォーメーション(CX)の三つの変革(3X)を提示。
同研究レポートは、3Xのうち特にこれからのコミュニケーションのあり方を大きく変容させるCXに着目した調査研究の今期成果の一部をとりまとめたものであるとのことだ。
2030年代のCXの基盤技術はバーチャルテクノロジー(V-tec)となる。今期は、このV-tec活用の場として広義のメタバースに重点を置いた研究を実施したという。
2.研究成果の概要
同レポートは2部構成となっている。
第1部「V-tec活用の場としての広義のメタバース」では、広義のメタバース(バーチャル空間を対象とする原義のメタバース、そのサブセットであるパーソナルバース、およびリアルとバーチャルの融合空間を対象とするリアルバース)の特徴を明確化し、その展望を取りまとめたという。
第2部「V-tecの応用領域の俯瞰」では、五つの行動変容加速要素と生活者の生活行動類型のマトリックスを起点にしてV-tecの応用が有望な主要産業領域を抽出し、それぞれ課題起点でのV-tecの将来の利用イメージと期待される市場規模をまとめた。2025年には4兆円程度、2030年には約24兆円規模の国内市場が期待されるとのことだ。
メタバース内で価値創造、価値交換、価値消費などの経済活動を包含する本格的なメタバース経済圏は2030年代中頃から後半以後、情報通信・処理インフラの発展とともに発展し、最終的には数十億人を超えるユーザを持つ巨大な市場が新たに形成されると期待される。
同研究レポートを通じたメッセージは以下の5点。
- メタバースの概念が広がっている。メタバース(原義)、パーソナルバース、リアルバースそれぞれで用途や目的が異なるため、それぞれを分けて考えるべきである。
- 原義のメタバースは七つの応用型を持つ。潜在的にはバーチャルライフ型のメタバースへの期待が大きいが、本格的な普及までには相当の時間を要する。
- パーソナルバースは技術的には原義のメタバースのサブセットであるが、応用面ではプライベートな情報空間として特徴的な利用が進む。
- リアルをバーチャルで強化するリアルバースは多様な産業領域での活用が進む。
- メタバース(原義)、パーソナルバース、リアルバースの三つを合わせた広義のメタバースの社会浸透により、さまざまな社会課題の解消・緩和が進む。
先進技術センターでは、今後も社会課題をビジネスで解決するための情報を提供していくとのことだ。