花王「生活者情報開発部」は、2011年より更年期についての意識実態について、定期的に調査を実施しており、2021年12月に実施した「更年期の不調に関する意識調査」「暮らしと健康に関する意識実態調査」の結果などから、男性の更年期実態について2022年11月1日に公開した。
男性の更年期不調は、男性ホルモン(テストステロン)の急激な減少によって起こる、心と体のさまざまな不調。女性の更年期が閉経前後と期間が決まっているのに対し、男性には決まったサインや期間はない。
また、女性の場合は時期が過ぎれば落ち着くが、男性は対処しないと長引く恐れも。一方で、NHKと専門機関の調査によると『「更年期不調による離職」の経済損失は男女合わせて年間およそ6300億円に上る』とされているとのことだ。
●更年期にはさまざまな症状、中等・重症が疑われる男性は約3割
男性ホルモンの急激な減少によって起こる男性更年期の症状は、実に多様。女性でイメージする症状と異なるものも多くあり、「筋力の低下」や「睡眠の悩み」、「イライラする」や「憂鬱な気分」といった、心と体の両面で症状として現れる。
加齢男性症状調査表(AMS)のセルフチェック項目の症状でみると、「筋力の低下」が72%や「よく眠くなる、しばしば疲れを感じる」が68%、「関節や筋肉の痛み」が66%、「早朝勃起の回数の減少」が64%など、40~50代男性の半数以上が自覚する症状も多くある。
加齢による症状と思われがちなことから、自分では更年期の可能性を疑いにくいのかもしれない。
セルフチェックの項目は異なるが、症状レベルを男女で比較すると、軽症以上が疑われる割合は約6割と同程度だが、症状が中等・重症程度になると男性31%、女性23%とむしろ男性の割合が高くなった。
●更年期を「認めたくない」男性は女性の3倍
40~50代の更年期への向き合い方では、更年期を「やり過ごす」派(男性51%:女性44%)が最も多くを占めている。
次いで多いのが男性では「認めたくない」派で15%と、女性の5%の3倍にのぼる。また「ネットで調べる」派の割合は11%で女性の9%と同程度だが、「病院に行く」は9%(女性17%)、『友人と話す』が12%(女性22%)と、受診や誰かに相談する人の割合は、どちらも女性の半数程度となった。
話しにくい話題であり、なるべく足を踏み入れたくないと考える男性の姿が浮かび上がる結果となり、インタビューでは、たとえ不調に悩んでいたとしても、生活に支障が出るまで我慢してしまったり、受診科が泌尿器科であることを知らなかったりするケースもあった。
同社は、男性更年期の情報や理解が不足していることが、症状の悪化を招くことにもなりかねないとしている。
●ストレスを感じている人ほど、症状が重い傾向に
日常的にストレスを感じる頻度と、更年期症状の中等・重症の割合を見ると、ストレス頻度が「多い」では男性64%、女性56%、「やや多い」では男性36%、女性34%と、男女ともに、頻繁にストレスを感じている人ほど、症状が重い傾向にある。
男性がストレスを感じる大きな原因は、「仕事上の人間関係」が54%、「仕事の大変さ」が48%、「将来や老後の不安」が32%と仕事中心。
年齢が上がり重責を負うことがストレスになったり、つい仕事を優先して自分の不調を後回しにしがちになったりする可能性も考えられるとしている。
●「からだや心の不調」への理解や協力を求める相手は妻一択の傾向
更年期に対する理解があり、前向きに対処する男性はまだ少数派のようだが、不調であることを「誰にも知られたくない」と考える人は19%という結果となった。約8割の男性は、からだや心の不調について、誰かに理解や協力を求めている。
その1番の相手は、「配偶者・パートナー」で64%。女性は、友人や母親、娘など他にもさまざまな相手がいるのに対し、男性は圧倒的に配偶者・パートナーに集中している。
男性更年期については、知識や理解も人それぞれで、全く知らない人もいる。不調に対する悩みや対処方法などをオープンに話せる状況にないことも、男性が更年期不調になかなか向き合えない要因となっているのかもしれないと同社は考察している。
【調査概要】
「更年期の不調に関する意識調査」
◎2021年12月/インターネット調査/首都圏在住35~64歳男女/男性15,145人、女性15,122人
「暮らしと健康に関する意識実態調査」
◎2021年12月/インターネット調査/首都圏在住/45~64歳:男性665人、40~59歳:女性927人
「中高年男性の健康意識実態調査」
◎2015年3~4月/インタビュー調査/首都圏在住55~69歳男性/15人
<参考>
花王『更年期の不調に関する意識調査』