コロナ禍により「イベント市場」は大きな転換期を迎えた。リアルイベントの開催が難航したことで、オンラインイベントの開催やオンデマンド配信の需要が高まった。その一方で、企業の会見やセミナーなどでは顧客との関係性の築き難さや、オンラインイベントの代わり映えのなさなど、成果に結びつかない課題も生じている。

280万人以上のユーザーに利用されているイベントプラットフォーム「eventos(イベントス)」は、そんな時代の変容を受け9月1日にアップデートを実施。ユーザーにハイクオリティーなアーカイブ動画の視聴体験を提供する機能をリリースした。よりユーザーとのロイヤリティーを高めたブランド訴求を可能にすべく、イベントによる従来の単発コミュニケーションをオウンドメディアによるコンテンツマーケティングへ進化させる施策を打ち出している。

そこで本サービスを開発・運営するbravesoft株式会社 取締役CTO 兼 開発事業部長、過去にはTVer開発責任者であった清田耕一朗氏からイベント市場の変容を伺うとともに、同社がなぜコンテンツマーケティングへとかじを切るのか、イベントが未来に向けてどのようなアップデートを遂げていくべきかに迫った。

コロナ禍を経ても、オンラインイベントは「終わらない」

新型コロナウイルス感染症の影響から、在り方が大きく変わったイベント市場。2020年の市場規模はトータル8兆6,649億円、前年2019年の17兆4,890億円と比較すると49.5%と大幅に減少した。同時に、2020年4月の緊急事態宣言以降、8割程度のイベントはオンラインが主流になるなど、オンラインイベントの需要が大きく高まった。(参照:https://eventos.tokyo/blog/6017

そもそもコロナ禍以前から採用関連イベントは先行してオンラインを取り入れていたそうだが、「企業がマーケティングのために実施するオンラインイベントが本格的な市場になったのはコロナ禍以降という感覚です」と清田氏。リアルからオンラインへイベントの在り方が変容したことにより、イベントを開催する側・イベントに参加する側それぞれの意識も変化した。

bravesoft株式会社 取締役CTO 兼 開発事業部長 清田耕一朗氏

まず従来の“イベント主催業者がイベントを主催して、多くの企業はそれに出展する”形から、“オンラインで誰もがイベントを自社で主催できる”形へと変容した。そして、オンラインであれば物理的に距離があってもイベントへの参加が可能になった。

清田氏は「リアルイベントとオンラインイベントは全くの別物。コロナ禍が収まってもオンラインイベントは残り続ける」と語った。

「マーケティング手法としてオンラインを活用する施策はすっかり定番化しました。今後も活性化し、より成果を上げるための方法論がブラッシュアップされていくと予測しています。想像を大きく上回るスピードでオンラインでのイベントが進化していくのではないでしょうか」

「顧客の多様化=ニーズの多様化」プラットフォーマーとして感じるイベントの現在地

イベントプラットフォーム「eventos」もコロナ禍以降のユーザー層に変化が生じている。従来は来場者向けアプリとしてデジタル上で整理券やマップの提供を行うことがサービスの主流であった。しかし、コロナ禍以降立て続けにリアルイベントが中止に追い込まれたことでオンライン配信が主流に。同時に、この変化からオンラインイベントにおける新たな課題も見えてきたという。

「非常に多くのオンラインイベントプラットフォームが世の中に生まれている中、単純にライブ配信ができるだけでは来場者に飽きられる危機感があります。差別化を図るためには、主催者が描く演出を形にし、来場者や視聴者に感動を届けられるかどうかが大切。しかし、イベント業者だけではなく、あらゆる企業がオンラインイベントを実施するようになり、顧客が多様化したことによりニーズも多様化。あらゆるニーズに応えなければいけなくなりました」

そんな多様化したニーズに応えられる素地が「eventos」にはある。清田氏は本サービス独自の強みとして、“カスタマイズ性”を挙げた。Zoomなどの配信ツールと異なり、参加者を募るためのランディングページや登録フォーム、アンケート機能などイベントに特化した機能を多く有している。「いい意味でオールマイティーなプラットフォームだと自負しています」と述べた。

eventosでは自社でプラットフォームを作成が可能。さらに30種類もの機能を一元管理が可能となっている。

「オンラインイベントをやる場合、必要になるコンテンツは配信だけではないんです。ライブ配信前のランディングページの見せ方からライブ配信後のアンケートまで、トータルでイベントと捉えています。決済や顧客管理を含めて、イベント開催に必要となるツールは全て『eventos』で取りそろえています。

戦略上、何か一つをとがらせることで特定の領域に勝ちやすくなるとは思います。ですが、われわれの目指す先はユーザーの皆さんが“いかにイベントを成功させるか”です。リード獲得なのか、盛り上がりなのか、ユーザーによって成功の形はさまざまだからこそ、カスタマイズ性が高いことでどんなご要望にも応えられます。また、コロナ禍のように時代が変わればイベントの形も変化していく。どんな時代になってもイベント主催側はオリジナリティーあふれるプラットフォームでイベントの開催が可能になると考えます」

一気通貫でイベントを作り上げられるのは、bravesoft株式会社が元来開発会社であることも大きい。必要な時間と費用さえかければいくらでもカスタマイズが可能だ。これについて同社営業部門責任者 兼 ビジネスプロデュース事業部長の後藤瑞貴氏は次のように述べた。

「弊社では一度顧客の皆さんのやりたいことを全て聞くようにしています。例えば、『オンラインイベントを開催して、多くの視聴者数を獲得したい』という依頼があれば、なぜ視聴者数を得たいのかを考えます。多くの場合は営業の工数カットが一番の目的なので、『顧客管理ツールを連携しましょう』『ランディングページはこういう見せ方にしましょう』と柔軟に対応ができます。自社ブランドとして推し進めていきたい部分をかなえられるのは、他社のプラットフォームより勝っている部分だと感じています」

営業部門責任者 兼 ビジネスプロデュース事業部長 後藤瑞貴氏

ほかにも「社内のサポート体制も充実していることが『eventos』が選ばれる理由の一つ」と後藤氏。これらの理由から、イベント・展示会主催者やBtoB企業など、幅広い顧客が「eventos」を利用している。

新たな時代のイベントの形は「オウンドメディア」

「eventos」は2022年9月1日、新しいキービジュアルとキャッチコピー「Be a Nextream」を発表。「顧客企業と共にコンテンツマーケティングを支える“次の流れ=Next stream”になりたい」という思いが込められ、リアル・オンライン・ハイブリッドイベントでの活用を想定したイベントプラットフォーム機能をベースに“オウンドメディア”としての機能も追加する。

「これまで、イベントや展示会ではチラシやパンフレットといった販促物、紹介動画をその都度用意してきました。これらは全てマーケティング用のコンテンツを制作していることにほかなりません。しかしながら、コンテンツを体系的に整理して必要としている人にいつでも届けられるプラットフォームがない、積極的に効果的に発信できるすべが分からない実態があった。そこで、『eventos』では企業が“動画を軸としたオウンドメディア”を構築できるプラットフォームとして展開していきます。『eventos』を使えば、大きな手間をかけずに成果の出やすいオウンドメディアを構築できるようになります」

イベントプラットフォームから「コンテンツマーケティングプラットフォーム」へと進化する第1弾には「eventos ON DEMAND」として、大幅な機能追加を実施。ユーザーの視聴環境に合わせた画質が設定可能な「再生画質の変更」やユーザーにより多くの動画コンテンツを発見してもらえる機会が創出できる「アーカイブ動画一覧性の向上」のほか、「キーワード」「共通カテゴリ」機能で1イベント内全てのブースに対して横断的に検索ができるようになった。(参照:https://eventos.tokyo/blog/6637

「さまざまな配信ツールを活用することで容易にウェビナーの開催ができるようになりましたが、過去の配信を見返したり、人気のウェビナーを探したりするアクションは取れませんでした。コンテンツマーケティングプラットフォームとしてアーカイブされた動画コンテンツを配信することで、優良なコンテンツを視聴者にしっかりと届けることができるようになります」

2022年4月21日にローンチしたChatworkが運営する無料の動画オウンドメディア『ビズクロ Channel』でも「eventos」を活用している。運用担当者からは「eventos」を活用したオウンドメディアの作成について「基本的にTOPページのレイアウトや構成はドラッグ&ドロップのみで作成することができ、初心者や慣れないメンバーも取りかかりやすかった」と使用感が語られた。加えて、「動画ページの中に“テキストを入れるエリアを増やしたい” “このページには動画を二つ設置したい” など、その場で思いついた要素やアイデアを簡単に実行することができた」とのことだ。

「ビズクロ Channel」では自社でイベント運営・制作を行い、eventosでコンテンツマーケティングを行っている。

「通常のオンラインイベントやオンライン展示会は単発のイベントであることが多く、長期的な顧客接点を持てないことが課題でした。弊社のお客様からしても、いつでも好きな時に情報取得することができないため、利便性向上の意味でも単発イベント以外の方法を検討してきました。

そんな中、出会ったのが『eventos』です。従来のイベントプラットフォームは初期費用や保守運用費用が高いイメージがありましたが、比較的安価かつ適切に利用できています。また、顧客の声を拾い上げてアップデートを盛んに行っていただいている印象も。使い心地のアップデートや優先度の高い改善要望に対する機能開発が早いと感じています」

リアルとオンラインをシームレス化し、ビジネスに新しい流れをもたらす存在へ」

現状の「eventos」はリアルイベントツール、オンラインイベント配信ツールとしてイベントの利便性を高める存在ではあるが、「eventos ON DEMAND」という新たな付加価値を市場に提案することで、清田氏は「イベントをイベントで終わらせないツールに変換していく」とイベント市場の枠にとどまらない新たな市場の構築を示唆した。その上で「オンラインとリアルの境目なくマーケティングを推進するツールへと進化させていきます」と意気込んだ。

「365日オンライン展示会を開催するという内容で『eventos』を活用いただいている企業様がいます。オンライン上では来場者登録情報から出展企業様とマッチングする機能を展開しているのですが、同時並行で各都市部でオンラインに出展している企業様が出展するリアルイベントも開催しています。オンラインで展示している人がリアルでも出展することで、事前にオンライン上で接点を持ちながら、リアルイベントにも足を運び直接話を聞くということも可能になります。それは一つのオンラインとリアルのシームレス化だと思います」

シームレス化を目指す中、近い将来にはVRやARなどの新技術も取り込んでマーケティングに利用できるあらゆるコンテンツのプラットフォームに進化することを目指しているという。「一番大事なのは技術を使ってお客様の求める価値をいかに与えるか」と清田氏は語る。

「イベントはどこまでいってもコンテンツ力が勝負です。来場した人たちへ伝えたい体験や感情をいかにスムーズに届けられるかが大切になってきます。そこで必要になってくるのがテクノロジーだと思うんです。例えば、オンラインイベントでただ話しているだけの動画を流すのではなく、話している人のプロフィールや話している内容の字幕が表示されるとか、リアルイベントでもARの技術で同じような表現が可能になります」

このようにイベントがもたらす人々の体験や感情、さらにはその共有をテクノロジーの力で進化させることを「eventos」では「eventech(イベンテック)」と標榜している。今後は、「eventech」を通じて「ビジネスに新しい流れをもたらす存在になりたい」と力説した。

「オンラインイベントの現状の課題は、同じようなコンテンツが多く視聴者を退屈にさせてしまうことだと感じています。エンタメ系の展示会では会場に入ってから会場内を歩き回っている時間にワクワクと興奮を覚えられますが、ウェビナーなどで同じような感情になれることはあまりないと思うんです。オンラインもリアルも、ビジネスもエンタメも、どんなイベントの形でも飽きさせない工夫は確実に必要です。それが結果的に目的を達成することにつながります。なので、『eventos』では今後、人々は空間や時間などのあらゆる制約から解放され、感情や体験を共有できるようになる世界を目指していきます」

取材・文:阿部裕華
写真:西村克也