そこで、帝国データバンク(以下、TDB)は、価格転嫁に関するアンケートを行い、結果を公表した。

■「全く価格転嫁できていない」企業は18.1%、価格転嫁率は4割を下回る

自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか尋ねたところ、「多少なりとも価格転嫁できている」企業は70.6%となった。

内訳をみると、コストの上昇分に対し、「すべて価格転嫁できている」企業は2.3%にとどまった。「8割以上できている」企業は11.7%、「5割以上8割未満できている」は16.7%となった。一方で、「全く価格転嫁できていない」企業は18.1%という結果に。

総じてみると、価格転嫁をしたいと考えている企業で、コストの上昇分に対する販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は36.6%と4割未満にとどまっている。

これはコストが100円上昇した場合に36.6円しか販売価格に反映できていないことを示している。

【左】価格転嫁の状況【右】価格転嫁の状況 100

■建材を扱う卸売業などで価格転嫁が進む一方、「ソフトウェア業」や「運送業」などは依然として厳しい状況

業種別の価格転嫁率をみると、「建材・家具、窯業・土石製品卸売」(53.1%)は全体(36.6%)を16.5ポイント上回っており、「機械・器具卸売」(50.9%)とともにコストの上昇分に対して半分以上販売価格に反映できている。また、「飲食料品卸売」(48.3%)では価格転嫁率が5割近くとなった。

企業からは、「木材製品はウッドショックにより市場全般が値上げを容認した」(木材・竹材卸売)といった声があがっていたが、「コストの上昇が急激すぎてすべてを転嫁することが難しい」(電気機械器具卸売)といった声にあるように、物価上昇に価格転嫁が追い付いていない企業も多くみられたとのことだ。

価格転嫁率 ~主な業種~

一方で、「ソフト受託開発」などを含む「情報サービス」の価格転嫁率は14.4%と全体を22.2ポイント下回る結果に。また、原油価格の高騰の影響を受けているトラック運送などを含む「運輸・倉庫」(17.7%)も価格転嫁が進んでいない。

「ソフト受託開発」からは「自社のような中小企業において、人件費の増加分を価格に転嫁することは難しい」や「価格転嫁が困難な業態である」といった声があがっている。

他方、「運輸・倉庫」については、「運賃交渉を継続中。業界内には積極的な値上げ交渉をすることによる荷主離れを懸念して値上げが進んでいないと考えている」(一般貨物自動車運送)といった意見が聞かれた。

企業の声

■政府の物価高騰対策の効果を実感していない企業は約7割

これまでの政府の物価高騰対策の効果について尋ねたところ、「大いに効果を実感している」が0.7%、「ある程度効果を実感している」が11.1%となった。

一方で、「あまり効果を実感していない」は38.9%、「ほとんど効果を実感していない」は34.3%となった。合計すると企業の73.2%で「効果を実感していない」。また、「どちらでもない」は15.0%となっている。

企業からは、「特に石油類に関しては、価格の上昇が抑えられているので、ある程度政府の対策の効果はあると思う」(ガソリンスタンド)といった声があがっているという。

一方、「中小企業が価格転嫁をするための仕組み作りや実効性のあるガイドライン作成を強く期待する」(工業用樹脂製品製造)や「運送業は何もかも値上がりし、価格転嫁を要望してもほとんど転嫁できずにいる。運送会社への直接的な燃料対策を実施してほしい」(一般貨物自動車運送)などといった政府に対する要望も聞かれたとのことだ。

政府の物価高騰対策の効果

同アンケートの結果、自社の主な商品・サービスのコストの上昇分を販売価格やサービス料金に多少なりとも価格転嫁できている企業は7割となった。

ただし、取引先の理解を得られないことや顧客離れへの懸念のほか、急速な円安進行などによる原材料費の上昇などに価格転嫁が追い付いていないことを背景に、全体の価格転嫁率は36.6%にとどまっている。

TDBは、政府には価格転嫁支援の強化に加え、物価の高騰による影響を受けているすべての企業に支援が行き渡る対策の実施が求められると分析している。