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「現代のコングロマリット」と呼ばれるほど、幅広く他業種展開するGAFAM企業。
ビジネス領域が重複し、競合するケースが増えている。クラウド市場はその1つといえるだろう。
世界のクラウド市場でトップを走るのはアマゾンだが、マイクロソフトやグーグルも市場シェアを伸ばしつつある。
クラウド市場において、GAFAM企業間でどのような競争状態となっているのか、2022年4〜6月期決算の数字からその最新動向を探ってみたい。
アマゾンの売上構造
アマゾンは2022年7月28日に4〜6月期決算を発表した。
売上高は、1212億3000万ドルとアナリスト予想である1190億900万ドルを超えた。この発表を受けアマゾンの株価は13%以上上昇したという。
2021年4〜6月期の売上高1131億ドルからは7%の増加となる。一方、営業利益(operating income)は、前年同期の77億ドルから今期は33億ドルに下げた。
アマゾンの売上の大半を占めるのはEコマース事業での収益だが、クラウド事業や広告事業における収益も無視できない比率に拡大している。
Insider Intelligenceがアマゾンの2021年10〜12月期の売上高を分析したところ、アマゾン事業は以下の比率で成り立っていることが分かった。
2021年10~12月期の売上高1374億ドルのうち、もっとも比率が高いのがオンラインストアでの売上で、その額は660億800万ドルに上った。次いで、コミッション、フルフィルメント/出荷などを含むサードパーティセラーサービスが303億3200万ドルだった。
そして3番目に位置しているのがアマゾンクラウドサービス「AWS」で、この時点の売上高は177億8000万ドル、前年同期比では40%という高成長をみせた。このほか、広告事業が97億2000万ドル、アマゾンプライムなどのサブスクリプションサービスが81億2000万ドル、店舗事業が46億9000万ドルという構造になっている。
アマゾン決算にみるクラウド事業の現状
2022年4〜6月期のアマゾンのクラウド事業はどのようなパフォーマンスだったのか。
まず売上高は197億4000万ドルとアナリスト予想である195億6000万ドルを上回る結果だった。前年同期比では33%の増加。2022年1〜3月期の成長率である37%から減速したといわれるが、依然アマゾン事業の中では、成長エンジンという位置づけは変わらないようだ。
営業利益(operating income)は、57億2000万ドルでアナリストのコンセンサス予想である60億4000万ドルを下回る結果となったが、成長率は前年同期比36%増を記録した。
一方、競合となるマイクロソフトの4〜6月期の全体売上高は519億ドルで12%増、営業利益は205億ドルで8%増を記録。このうち「Intelligent Cloud」部門は、前年同期比20%増となる209億ドルを計上。このうち「Server products and cloud services」の売上高は、「Azure/その他クラウドサービス」が好調だったため、22%増の34億ドルに達した。
グーグルの今期全体の売上高は697億ドル。このうちクラウド部門の売上高は、前年同期の46億ドルから63億ドルと大幅にアップした。アナリスト予想は64億ドルだった。
アマゾンに猛追するマイクロソフト
世界のクラウド市場は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルに加え、他数社が寡占する構造となっており、この状態が今後しばらく続くものとみられる。
ガートナーが2022年6月2日に発表した最新のIaaSパブリッククラウド市場レポートによると、2021年時点における売上ベースの市場シェアは、アマゾンが38.9%でトップ。これにマイクロソフトが21.1%で追う形となっている。市場の3分の2は、アマゾンとマイクロソフトが支配している状況だ。
3番目はアリババで、シェアは9.5%。これにグーグルが7.1%、ファーウェイが4.6%で続く。
2020年から2021年にかけてのシェア変動をみると、アマゾンが2020年の40%から38.9%にシェアを減らしている一方、マイクロソフトが19.7%から21.1%、グーグルが6.1%から7.1%とそれぞれシェアを上げており、アマゾンのシェアを少しずつ削っていることが分かる。
2020〜2021年の売上成長率でも、アマゾンが35%増だったのに対し、マイクロソフトは51%増、グーグルは63%増とアマゾンより高い成長率を記録。この期間、IaaSパブリッククラウドサービス市場全体は、643億ドルから909億ドルと41%増加しており、マイクロソフトとグーグルのクラウド事業成長率は、市場全体の成長率を上回っていたことになる。
今後のクラウド市場
アマゾンがトップシェアを誇るIaaSパブリッククラウド市場は、2022年〜2023年にかけて拡大加速が見込まれており、各社の攻勢はさらに強まるものと思われる。
ガートナーは2022年4月19日のレポートで、IaaSクラウド市場は2022年に1197億ドル、2023年に1562億ドルと2021年の900億ドル規模から急速拡大すると予想している。
IaaSだけでなく、PaaS市場では869億ドルから1364億ドル、SaaS市場では1521億ドルから2080億ドルと2021〜2023年にかけて、クラウド市場は各分野で大幅拡大の見込みとなっている。クラウド各市場を合計した累計市場規模は、2021年の4109億ドルか2023年には5998億ドルに拡大するという。
既存のデスクトップ環境からの脱却が必須となるハイブリッドワークの普及や依然続くデジタルシフトなどがクラウド需要を押し上げる要因になると指摘されている。
また、メタバースのインフラ構築において、クラウド需要が高まることも想定できる。アマゾン、マイクロソフト、グーグルにおけるクラウド事業の比率は、今後さらに大きくなっていくのだろう。
文:細谷元(Livit)