東北大学大学院理学研究科は、ソフトバンクとALESの協力の下、2社および国内の12研究機関18部局が参画する「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」を2022年8月に設立したと発表した。

同コンソーシアムでは、ソフトバンクが全国3,300カ所以上に設置している高密度なGNSS観測網(独自基準点)のデータについて、地震や気象などの幅広い地球科学の分野での活用方法を検証するとともに、新しい地球科学の創成を目指すという。

同コンソーシアムの活動によって、さまざまな自然現象の理解が進むとともに、自然災害(ジオハザード)の高精度な予測など、防災・減災に大きく貢献することが期待できるとのことだ。

ソフトバンクとALESは、GNSS観測データや測位技術の提供に加えて、同コンソーシアムでの研究成果に基づいて、事業化の検討や産学官連携による防災・減災での利用の提言などを行う予定であるという。

これにより、ソフトバンクがSDGs(持続可能な開発目標)で特定する6つのマテリアリティ(重要課題)のうち、「オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出」の実現を目指すとしている。

同コンソーシアムの設立の背景と概要

地震や火山活動に伴う地殻変動や、対流圏における水蒸気量などを高い時間・空間分解能で把握することは、現象の理解のみならず、それらの現象に関連する自然災害の発生予測を実現する上で非常に重要であるという。

日本の研究機関では、国土地理院が運用する全国約1,300カ所のGNSS観測網(電子基準点)のデータを活用し、高い精度で地殻変動場が調査されている。

一方、ソフトバンクは、GNSSの信号を利用したRTK測位により高精度な測位が可能なサービス「ichimill(イチミル)」を2019年11月から提供しており、GNSSの信号を受信する固定局として全国3,300カ所以上に独自基準点を設置して、運用を行っているとのことだ。

東北大学大学院理学研究科は、2021年6月からソフトバンクの独自基準点におけるGNSS観測データの提供を受け、地殻変動場の把握のための精度検証を実施してきた。

その結果、ソフトバンクの独自基準点から得られるデータは、高い精度で地殻変動を把握することが可能であり、国土地理院の電子基準点を補完する重要なインフラとして、防災・減災に大きく貢献し得ることが明らかになったという。

また、ソフトバンクの独自基準点は、地震や火山活動に伴う地殻変動だけでなく、対流圏における水蒸気量や、電離圏の動態把握にも重要な役割を果たすことが期待されている。

こうした背景を受けて、東北大学大学院理学研究科は、ソフトバンクとその子会社であるALESの協力の下、2社および国内の12研究機関18部局が参画する「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」を設立。

同コンソーシアムでは、高密度なGNSS観測網であるソフトバンクの独自基準点のデータを用いて、これまでにない高い時間・空間分解能で地殻変動や水蒸気量、電離圏などの動態を明らかにすることで、地球科学の分野における同社の独自基準点の活用方法を検証するとのことだ。

また、幅広い分野の地球科学の研究者が連携することで、新しい地球科学の創成を目指すとしている。

同コンソーシアムの活動を通して、地球科学に関する幅広い分野で研究が進展することで、さまざまな現象の理解が進むとともに、自然災害の高精度な予測など、防災・減災に大きく貢献することが期待できる。

また、ソフトバンクとALESは、GNSS観測データや測位技術の提供を行う他、同コンソーシアムでの研究成果に基づいて、独自基準点から得られるデータの民間での活用などの事業化の検討や、産学官連携による防災・減災での利用の提言などを行う予定であるという。

コンソーシアムの概要

名称
ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム

目的
高密度なGNSS観測網であるソフトバンクの独自基準点のデータについて、地球科学の分野での活用方法を検証すること。

想定する研究内容

●地震
地震に伴う地殻変動の正確な把握とそれに基づくメカニズムの解明、地震の長期予測

●火山
噴火現象に伴う地殻変動の正確な把握とそれに基づくマグマ源などの解明、噴煙現象の高精度な把握

●気象
対流圏遅延量の推定に基づく積乱雲や線状降水帯による豪雨の発生メカニズムの推定、積雪状況の把握

●電離圏
電離圏の乱れと自然現象(地震、噴火、津波など)の関連性の把握

●SARデータの補正
地殻変動の高精度把握のためのSARデータ解析における、対流圏起源ノイズなどの効率的な除去手法の確立

コンソーシアムの構成図

コンソーシアムの活動イメージ