サステナブルに関するZ世代の“本音” 持続可能な社会を担う世代は何を考えて行動しているのか?

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アパレル業界は、製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さなどから環境負荷が非常に大きい産業と指摘されており、国際的な課題となっている。具体的には、原材料の調達、生地・衣服の製造、そして輸送から廃棄に至るまで、それぞれの段階で環境に影響を与えており、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、アパレル業界が世界で第2位の環境を汚染する産業とみなされている。

また、環境省によると、日本の家庭から焼却・埋め立てされる服は年間約48万トンであると言われており、廃棄量の削減が課題となっている。この実情を知り、自身のアパレルブランドを持続可能なブランドへとリブランディングした女性がいる。サステナブルプロダクトブランド「L tokyo」を手がける、“ぷるこ”こと大久保楓さんだ。

ぷるこさんは、世界の約30%を占めるZ世代にあたる。Z世代は10年後の経済を大きく動かす中心世代とも言われ、この世代が持つ価値観や動向に世界中が注視している。そんなZ世代はサステナビリティに対する意識が高く、日々の生活の中に“当たり前”に取り入れていると言われるが、果たして実態はどうなのか——。ぷるこさんのお話を通し、サステナビリティにおけるZ世代の本音に迫る。

アパレルの廃棄問題を知り、ブランドを大幅にリニューアル

——昨年ご自身が手がけるアパレルブランドをサステナブルなブランドとして再スタートされたようですが、その背景をお聞かせください。

2019年に前のブランド「LOLIPOPKNIFE TOKYO」を立ち上げ、その際にアパレル業界が抱える廃棄の問題を知りました。アパレル業界では在庫が残ったらセールをする流れがあり、それでも売れなかったものは捨てられてしまいます。ブランドを始めた時はまだ18歳で、アパレル業界で働いた経験もなくまったく知識がありませんでした。ただ、無知なりに「まだ着られるのに捨てるの?」という疑問が湧いたんです。そこではじめて“サステナブルファッション”や“スローファッション”という言葉に触れました。

オンラインでの取材に応えるぷるこさん

知ってしまった以上、今までと同じやり方には抵抗があり、ブランドの休止を決めました。休止している2年の間にサステナブルファッションの有識者の方にお話を聞いたり、実際にサステナブルブランドを経営している方にお会いしたりして、自分なりに勉強しました。1カ月ほど行ったニューヨークでは、現地のファッション学校にお邪魔したり、古着屋さんを視察したりしました。日本とは違って倉庫のように大きな古着屋さんがたくさんあり、古着の量にも驚いた記憶があります。そして2021年の春に「L tokyo」として再スタートしました。

——ブランド休止の判断には勇気が必要だったと思うのですが、不安などはありませんでしたか?

そうですね。ブランドをスタートした時、東京と大阪でポップアップストアを開催して、自分が作った服をお客様に楽しんでもらっていることを直接感じることができたんです。だからこそ、お客様と真摯に向き合いたい気持ちがありました。モヤモヤした状態で次々とコレクションを出すのは違うなと思って……。待ってくださっている方がいるのもわかっていたのですが、いったん休止することを決めました。

再スタートするまでに2年もかかってしまったので、その間に「自分がつくるものは必要ないんじゃないか?」と不安になることもありました。初めは期待とワクワクしかなかったのですが、再スタートは不安が大きかったです。でも思っていたよりも温かく受け入れられ、反響もあったので嬉しかったです。

——「L tokyo」では“付け襟”を展開されていますが、どのような思いから“付け襟”の販売に至ったのでしょうか?

アパレルとトレンドは切っても切り離せない存在ですが、一着を長く着るというのがサステナブルファッションの概念のひとつです。私は昔からコーディネートが好きで、一着で何パターンものコーディネートを考えるのが好きでした。そこで、コーディネートを楽しめるアイテムとして付け襟を思いつきました。

アパレルとトレンドは切っても切り離せない存在ですが、一着を長く着るというのがサステナブルファッションの概念のひとつです。私は昔からコーディネートが好きで、一着で何パターンものコーディネートを考えるのが好きでした。そこで、コーディネートを楽しめるアイテムとして付け襟を思いつきました。

素材はリサイクルのPET素材を使用しています。付け襟はニッチな商品なので、たくさん製造できるわけではありません。そして正直、リサイクル素材の原価は高いため、素材や質を突き詰めると価格は上がってしまいます。でも買っていただけるのは同世代の方なので高すぎてもダメで……。サステナブルにシフトしても、またそこで新たにぶつかる壁が出てきました。なので、流行り廃りを意識したりシーズンごとで新作を出したりなど、無理をせず長く楽しんでいただけるようなモノづくりができればと思っています。

「L tokyo」オンラインストア

「サステナブルは自然な話題」ぷるこさんが語るZ世代の実態

——ぷるこさんはアパレル業界の実情を知り、経営者として行動に移したわけですが、消費者としてサステナビリティを意識して行動していることはありますか?

小さなことですけれど、マイバッグを持参したりマイボトルを利用したり。そのほかには生理用品をナプキンから吸水ショーツに変えました。マイボトルはいわゆる水筒ですよね(笑)。サステナブルの一例として大きく取り上げられることが多いですけれど、学生の頃にお弁当と一緒に水筒を持っていたので、その当時の感覚と変わりなく使っています。

以前にYouTuberとして活動していた時は、また同じ服を着ていると思われたくなくて、たくさん服を買っていました。でも今は、Tシャツ1枚を買うにしても一週間分のコーディネートが組めるかを考えて買っています。衝動買いが減りましたね。古着屋さんやフリマアプリで買うことも多くなりました。

YouTubeで付け襟を使ったコーディネートを紹介

——「Z世代はサステナビリティについて意識が高い」と言われることがありますが実際はどうなのでしょうか? ぷるこさんの友人や同世代の人たちはサステナビリティをどのように捉えていますか?

私自身「サステナブルな行動=意識が高い」とは捉えていません。プラスチックごみの問題やアパレルの廃棄問題などは事実として存在しているものなので、世代は関係なく個人がどう捉えて行動するかの話だと思います。

友人とは「新作コスメの色がかわいい!」と話すことと同じぐらいのテンションで、「どこの吸水ショーツがいいか」という感じで、サステナブルなプロダクトについて話をすることがあります。自然な話題なので、特に意識が高いという感覚はありません。

——そのほかにSDGsの17の項目の中で、興味・関心があることや周りで話題になる項目はありますか?

「つくる責任 つかう責任」です。つくる側としてはもちろんですが、自分が作ったものだけで生活できるわけではなく買うことの方が圧倒的に多いので、つくることを考えると同時に、どんなものを買って使えばいいのか?も考えるようになったと思います。

そのほか話題になるのは「ジェンダー平等を実現しよう」ですね。ジャンダー平等は労働環境につながる話だと思います。私自身は大学を出て就職をする流れではなかったのですが、今社会人1年目の歳になります。周囲では社会におけるジェンダー平等の話も度々聞くようになってきました。やはり私自身も身近な話になると、自分事として捉えるようになり、なにかできることはないかと考えるようになったので、まずは自身の周りの課題や問題に目を向けることが重要なんじゃないかと思います。

【左】前ブランドのルック撮影の様子 【右】付け襟製作の様子

意識するあまりの失敗も。サステナビリティとの上手な向き合い方とは?

——流行り言葉のように扱われることで “サステナブル疲れ”なんて言葉も耳にしますが、そのことについてはどのようにお考えですか?

“サステナブル”は代表的な言葉だと思いますが、新しい取り組みに対する言葉が広まることは良いことだと思います。でも、SNSや記事で発信されるものと、リアルな生活の中で語られるものには温度差があるように感じます。先ほどお話ししたように、友人とは好きなコスメの話をするぐらいの感覚のことであっても、情報として見ると難しくて遠い世界のものに感じてしまったり、堅苦しく見えてしまったりするかもしれません。

——サステナブルな行動を意識する上で、どのようなことが必要だと思いますか?

私はブランドを休止していた2年間はサステナブルな行動を意識しすぎて、自分の首を絞めていたように思います。マイボトルの中身がなくなった時に給水できる場所がなく、我慢していたことで熱中症になってしまったことがありました。本来であればペットボトルを買えばよかったのですが、サステナブルな行動を取るべきだという意識に縛られすぎて、元も子もない状態に陥っていました。それでは意味がないですよね。

行動のすべてをサステナブルにつなげるのは難しいので、その時その時、できる範囲で取り組むことが一番いいと思います。

気づいたら家の中のビニール袋が減っていたとか、昨年は服を捨てていなかったなとか、振り返ってみると積み重なっていることがあるので、無理をすることではないと思います。

友人とカフェに行った時、アルミのストローで飲み物が出てきました。私は普段からアルミのストローを使っているので「冷たい飲み物はさらに冷たく感じるから夏にいいよ」とおすすめしたのですが、友人は衛生面を気にしていて……。細いブラシが付いていて洗いやすいとも伝えたのですが、普段から使うことには躊躇しているようでした。

必ずしもサステナブルだからと言って取り入れる必要はなく、人それぞれの視点があるので自分の選択で良いのだと思います。

「買うことよりも行動を促したい」実践しやすいサステナブルなアクションを

——「L tokyo」の展望を含め、今後取り組みたいと考えていることがあればお聞かせください。

「L tokyo」では、自分の目が届く範囲でモノづくりをしたいです。会社もブランドも自分が立ち上げて小規模でやっている分、方向転換をするにしても、そこまで大きな問題にはならずに進められているのは良かったと思っています。ブランドの規模は縮小するかもしれませんが、今後はハンドメイドや在庫のアップサイクルを視野に入れていて、いろいろと検討している段階です。

個人としては、フォロワーさんが興味を持ってくれそうな実践しやすいサステナブルな行動を発信していきたいと思っています。フォロワーさんは同世代が多く、社会人になりたての方々です。もちろんいいなと思ったプロダクトは紹介しているのですが、買うことを促すよりも、例えば着回しを提案するような、消費せずともできる行動を促す方が興味を持ってもらいやすいのかなと感じています。

私はフォロワーさんに恵まれているんです。実際に私の投稿を見て「大学で環境問題を専攻しました」と言ってくださる方もいました。私の発信を素直に受け取ってくださるフォロワーさんが多いので、自分もみなさんのためになることがあったら発信しようという気持ちになりますし、これからもアクションを起こし続けていきたいです。

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