帝国データバンク(以下、TDB)は、ファミレス業界の店舗展開動向について調査・分析を行い、結果を公表した。
ファミレス店舗「閉店」ペース再加速 年度末までに1000店舗閉店見込み
苦戦が続くファミリーレストラン業態で、不採算店舗の閉店や業態変更といったファミレス店舗整理の動きが再び加速しているという。
TDBが上場する主な外食チェーン16社が展開する「ファミリーレストラン」業態の店舗数を調査した結果、2022年6月期時点で8420店舗判明。コロナ前の2019年12月期に比べて810店、率にして約9%の店舗が減少したとのことだ。
コロナ前と比べた店舗数の減少幅をみると、最も多いのは減少率「5%以下」の6社。次いで「10%超」の5社となり、店舗数の減少傾向には二極化がみられた。なお、最も減少率が大きいのはジョイフルで、直営店の3割に相当する200店超が閉店している。
リモートワークの普及などで繁華街やオフィス街都心部を中心にサラリーマンの来客が戻らないなど苦戦が続いていることに加え、近時は食品をはじめ原材料高、アルバイトなど人材確保難が重なり、多店舗展開を行うファミレス業態を中心に再び収益が悪化しつつあるという。
ファミレス大手のすかいらーくHDが昨年に続き、「ガスト」をはじめ採算が悪化した約100店舗を新たに閉鎖すると発表するなど、都心部を中心とした店舗再編の動きが再び活発化する兆しもあるとのことだ。
なお、足元では2021年12月期→22年3月期(0.5%減)、22年3月期→6月期(1.5%減)と減少ペースが再び加速。このペースが続いた場合、各社の店舗閉鎖計画や予測も含め、今年度末(23年3月期)の店舗数は8000店前後にとどまり、コロナ前から累計で1000店舗超の減少となる可能性が高いとしている。
進むファミレスの業態転換 ファミレス非専業8社、ファストフードや焼肉などの業態増加
こうしたなか、ファミレス事業を展開する外食各社では、他業態の店舗を展開するリブランディングといった動きが広がっているという。
ファミレス運営16社のうち、ファミレス非専業8社の店舗数合計から業態の変化をみたところ、構成比で最も増加したのは牛丼やハンバーガー、ホットスナックなどの「ファストフード」で、2019年12月期から1.2pt上昇。
次いで「カフェ」(+0.9pt)、「焼肉」(+0.4pt)、「すし」(0.1pt)などが続いた。特に焼肉業態では、居酒屋大手のワタミなど外食各社のリブランド先業態として注目を集めており、ファミレス業態でも焼肉業態の導入といった動きがみられるとのことだ。
一方、最も構成比で落ち込んだのは「居酒屋」で、同12月期から1.1pt低下。コロナ禍で居酒屋需要が大きく落ち込むなか、ファミレス同様に不採算店舗を閉鎖するケースが目立つ。
原材料高と人材確保難という新たなリスク直面 不採算店の閉鎖さらに進む可能性
苦境に転じたファミレス大手では、から揚げやカフェなど専門性の高いブランドへのリブランドを進めるほか、テイクアウトやデリバリーサービスの拡充、タブレットなどIT投資による人件費の削減、不採算店の大量閉鎖など、これまでにない大規模な改革が進んでいる。
背景には、和洋中の豊富なメニューと全国展開の店舗網で成長してきた、「総合外食」としての従来型ファミレスビジネスでは持続困難となるリスクを抱えていることがあげられるという。
さらに、足元では食材など原材料高に加え、アルバイトの確保難による働き手の不足など、当初の計画では想定しえなかった新たなリスクが出始めている。
外食事業の経営環境が再び厳しくなりつつあるなかで、これまで多く出店してきた都心店などを中心に、不採算店舗の閉鎖ペースは今後早まるものとみられるとTDBは分析している。
<参考>
帝国データバンク『ファミレス運営主要16社・店舗展開動向調査』