横浜ゴムは2022年7月、情報システム開発子会社のハマゴムエイコムの協力を得てAIによる配合生成技術を活用したゴムの配合設計システムを独自に開発し実用を開始したと発表した。

目標とするゴムの物性値を満たす配合をAIが提案するもので、これにより人が考え付かなかった配合など新たな知見を得ることができ、開発のさらなるスピードアップやより高性能な商品の開発が期待できるとのことだ。

今回のシステムは同社のAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ:Humans and AI collaborate for digital innovationをもとにした造語で、人とAIとの共同研究所という意味合いも込められている)」を推進するために開発。

従来の配合物性値予測システムではゴムの配合設計パラメーターを入力するとAIが予測される配合物性値を出力するプロセスであったのに対し、配合物性値を指定するとAIが候補となる配合を生成し目標物性値を満たすゴムの配合を提案することが可能になったとのことだ。

AIは数万件ものゴムの配合を学習しており、100種類以上の配合剤を組み合わせて候補となる配合を生成。その上で生成した配合の予測物性値と目標物性値とを比較しながら要求された配合を提案する。

さらに、基準とする配合や用いたい配合剤の指定のほか、特定の配合を選択しその周辺で配合データを生成することも可能で、人とAIが協奏しながら新たな知見が得られるシステム設計としたとしている。

同社は2020年に人間特有のひらめきや発想力とAIが得意とする膨大なデータ処理能力を活かした“人とAIとの協奏”によってデジタル革新を目指す構想として「HAICoLab」を策定。

人が設定する仮説に沿ったデータの生成・収集とAIによる予測・分析・探索を繰り返すことで未踏領域での知見の発見を目指しているとのことだ。

これまでにも2020年にゴムの配合物性値予測システム、2021年にタイヤ特性値予測システムを実用化するなど材料およびタイヤの設計開発プロセスでAIを活用した技術開発を進めてきたという。

今後はプロセスに加え製品やサービスなどの革新を目指して全社的にAI利活用を推進し、ユーザーエクスペリエンスの向上および内閣府が提唱するAIやIoTなどの革新技術により実現する新たな未来社会の姿「Society 5.0」の実現に貢献するとのことだ。

<「HAICoLab」の概念図>