キアゲン社のデジタルPCR技術、新型コロナ感染症など病原体の下水継続監視調査の手法に米国CDCが推奨

キアゲン社は、同社の「QIAcuityデジタルPCRシステム(以下、QIAcuity)」が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)など30種類の病原体の下水継続監視調査に用いるデジタルPCR(以下、dPCR ※1)の手法の1つとして承認されたことを発表した。

キアゲン社

今回承認されたシステムは、QIAcuityと他社製の2種類で、米国疾病対策センター(以下、CDC)の全国下水継続監視調査システム(以下、NWSS)から公式に推奨されたことになるという。

CDCは今後、下水に含まれる病原体の分析方法を開発し、今回承認された2種のdPCRのいずれかを各公衆衛生研究所が使用していく予定としている。

なお、NWSSでは下水継続監視調査データとしてdPCRによって収集されたデータのみを採用し、CDCの「新興感染症の予防と制御のための疫学・検査試験強化プログラム(※2)」(ELC)協力協定において、その資金提供の条件に今回承認された2つのプラットフォームのいずれかを使用していることが組み込まれるという。

こうした枠組みの変化を受け、現在の定量PCR(以下、qPCR)を用いた分析方法が、dPCRを用いた方法に置き換えられ、より信頼性の高い検出方法であるdPCRの普及が加速すると予測されるとのことだ。

QIAcuityの多用途展開:
キアゲン社は、下水検査により新型コロナウイルス感染症の蔓延を監視することを目的とし、全米の公衆衛生研究所にQIAcuity dPCR装置を設置するという契約を米国政府と締結しているため、今回の承認へとつながったとしている。

現在、米国の70%以上の州に、QIAcuityを使用して下水監視を行える官民の研究所が少なくとも1ヵ所ある状況とのことだ。

QIAcuityシステムはこれら施設において、2時間で分析結果を出すという新しい基準を打ち立て、今後は、下水継続監視調査として、新型コロナウイルス感染症だけでなく、抗菌薬耐性菌「スーパーバグ」や大腸菌、リステリア菌といった食品由来の感染源の検出など、より一般的な疾病の調査にも応用が考えれているという。

それにより、公的機関は幅広い範囲の住民からデータを収集し、感染症の発生があれば早期に警告を発することが可能になるとのこだ。

今回のQIAcuityの承認は、同製品が新型コロナウイルス感染症以外にも有効であること、ひいては、キアゲン社のポートフォリオの幅広さと有用性を示すものだという。

実際に、キアゲン社は、QIAcuityについて、プロテオミクスなどの新しい研究用途へ拡大や臨床医療への展開を進めており、こうした分野では、異なるタンパク質間やタンパク質と遺伝子間の相互作用の解析を行うことで、ゲノム解析が補完され、より包括的に疾患像を把握することができるようになるとのことだ。

(※1)dPCR:
dPCRは、ごく微量のDNAやRNA、遺伝子をトレースしたタンパク質も定量化して検知し、ウイルスや細菌を原因とする感染症のほか、癌の突然変異といった疾患を検査できる。DNAやRNAの核酸やターゲットシーケンスをより精確に定量化できるため、従来の定量PCR(qPCR)よりも高精度、高感度な検査が可能となる。

(※2)新興感染症の予防と制御のための疫学・検査試験強化プログラム:
新興感染症の検出、予防、対応において、州、地方、地域の保健局を支援するプログラム

モバイルバージョンを終了