富士通とセールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce Japan)は、このほど、ヘルスケア領域における新たなソリューション創出に向けた協業に合意したと発表した。

富士通の強みである医療や健康データをトラストに取扱うノウハウやコンピューティング技術と、Salesforceの強みであるCRM(顧客関係管理)のグローバルリーダーとしての実績とノウハウを活かし、推進していくという。

協業の第1弾として、両社は保険会社向けデジタルソリューションの提供に向けた共同開発に取り組むという。同ソリューションは、保険会社や医療機関の協力のもと、医療や健康情報からAIが予測した疾病の可能性などのデータをもとに、個人ごとの疾病のリスク評価を最適化した保険商品の開発を支援するもので、2023年度の実用化を目指すという。

両社は同ソリューションの提供を通じて、保険会社の新たな商品モデルの確立を支援し、パーソナライズ化された保険商品を広く普及させることで、個人の長寿命化に伴う多様な疾病に対する健康不安や先進医療による治療費の増大・老後期間の生活費など経済的不安の解消と、社会課題解決に貢献するとのことだ。

背景

急速に進む少子高齢化や長寿命化、また近年の深刻な感染症の拡大と、それらに伴う医療費の増大は世界的な課題となり、さらに健康寿命やクオリティオブライフ(QOL)の維持など、ヘルスケア領域における社会の関心は一層高まっているという。

個人の健康状態や疾病状況は、生活環境やライフスタイルによっても異なるため、よりパーソナライズ化されたヘルスケアに関する情報やサービスの提供が求められているとのことだ。

富士通とSalesforceは、2010年よりグローバルで包括的協業を開始しているという。今回、富士通とSalesforce Japanは、ヘルスケア領域でのソリューション創出に向けた協業の取り組みを通じ、さらなる関係強化とビジネス拡大を目指していくとしている。

協業における両社の役割

富士通:
医療機関などと連携し、電子カルテ上の医療データを本人同意に基づきトラストに活用可能にする仕組みの実現。
また、高度なコンピューティング技術とAIなどのソフトウェア技術を誰もが容易に利用できるサービス群である「Fujitsu Computing as a Service(CaaS)」を活用し、特定疾病の予兆を検知する独自分析、パーソナライズ化されたヘルスケアサービスの開発。

Salesforce Japan:
患者の様々な医療データを包括的に統合し、一元管理して分析することで、ぺイシェントジャーニーを可視化し、パーソナライズした医療体験を提供する、患者中心のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する製品群を活用。
具体的には、患者中心のDXの軸となる医療業界に特化したCRM「Health Cloud」、外部データの統合を担う「MuleSoft」、患者データの分析を担う「Tableau」など。

第1弾の取り組み概要

少子高齢化や疾病の変容、個人の生き方や価値観の多様化など、画一的なモデルが描きにくい状況から、保険会社は、加入希望者一人ひとりにより寄り添った保険商品を提供するため、保険商品のパーソナライズ化に本格的に取り組んでいるという。

同取り組みに貢献するため、富士通とSalesforce Japanは、保険会社や医療機関から提供された医療や健康データをもとに、AIにより個人の疾病リスクなどを予測し、最適化された保険商品開発を支援するソリューションの実現および保険業務全体のビジネスプロセスの最適化を目指して開発を開始するとのことだ。

これにより、保険会社は加入希望者に最適な保険商品を提供できるだけでなく、パーソナルデータを活用することで、予防から診断、治療、予後までをこれまでの平均値に基づくモデルからきめ細やかにトータルでカバーした新しい保険モデルを創出。

また、新たな保険商品の開発期間の短縮やシステム構築投資の適正化を可能とするとしている。

今後について

両社は、第1弾の取り組みとして合意した保険会社向けデジタルソリューションを共同で開発し、2023年度の実用化を目指すという。今後、さらにヘルスケア領域の革新に向けて様々な取り組みを進めていくとしている。

富士通は、保険会社、医療機関、製薬企業や医療機器メーカーなどと連携し、幅広いデータを最新のデジタル技術で有効につなげて利活用できるデジタルヘルスエコシステムの構築を進め、ライフサイクル全般にわたってパーソナライズされたヘルスケアの提供を実現。

今後も富士通は、サステナブルな実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、あらゆる人のライフエクスペリエンスを最大化する「Healthy Living」の取り組みを進めていくとのことだ。

Salesforceは、ヘルスケアに関わる様々なステークホルダーが「Health Cloud」を活用して患者を中心につながることで、革新的かつ最適なヘルスケアを患者に寄り添って、継続的に提供する「Connected Healthcare (つながるヘルスケア)」の実現を目指すとしている。