ゲームデバイス競争の激化 「フォートナイト」のモバイルプレイ可能が更なる起爆剤に?

フォートナイト、2年ぶりにモバイルデバイスでプレイ可能に

日本を含め世界的な大ヒットとなっているオンラインゲーム「フォートナイト」がXbox Cloud Gamingに登場し、アンドロイドとiOSで無料でプレイできるようになったとして注目を集めている。

フォートナイト開発企業であるエピックゲームズとアップルの法廷闘争が2020年8月に開始されて以来、フォートナイトはアンドロイドとiOSのアプリストアから削除されプレイできない状態が続いていた。

今回マイクロソフトが運営するXbox Cloud Gamingに登場したことで、同プラットフォームをインストールしているデバイスであれば、PCやモバイルに関係なくストリーミングプレイが可能となった。

Xbox Cloud Gaming自体は、2020年にローンチ、米国を含め26カ国でサービスが展開されている。ロイター通信によると、ユーザー数はおよそ1000万人ほどであるという。

マイクロソフトといえば、WindowsやOfficeソフトウェアで広く知られているためビジネス領域に強いテック企業というイメージがあるが、このところメタバースに絡みゲーム市場での攻勢を強めており、競争激化は免れない状況となっている。

今回マイクロソフトがXbox Cloudでフォートナイトの提供を開始したことは、ソニーなど競合企業に何らかの影響を与えると思われる。

たとえば、フォートナイトのデバイス別収益シェアを見ると、現時点ではソニーのプレイステーション4(PS4)が圧倒的に多いが、昨今のモバイルゲーム市場の成長を鑑みると、Xbox Cloudを通じてモバイルでプレイする利用者が急増し、それに伴い収益シェアも変化する可能性などが予想される。

公開されている直近データ(2018年3〜2020年7月)によると、フォートナイトのデバイス別収益シェアは、PS4が46.8%で最多、これにXbox One(コンソール)が27.5%、iOSが7%と続く。その他(ニンテンドースイッチ、アンドロイド、PCなど)は18.7%。モバイルのシェアはもともと小さいものだが、言い換えれば伸びしろがある領域ともいえるため、軽視はできない。

コンソールゲーム企業も無視できないモバイルゲーム市場

ゲーム市場の中でも、モバイルゲーム市場は市場規模が大きく、成長率を維持しているため、マイクロソフトを含め多くのゲーム市場プレイヤーにとって無視できない存在だ。

NewZooによる最新レポートによると、2022年のゲーム市場は前年比5.4%拡大し、2031億ドル(約26兆2423億円)に達する見込みという。その中でも最大を占めるのが、スマートフォンとタブレットを合わせたモバイルゲーム市場だ。市場規模は1035億ドルに達し、全体に占めるシェアは51%に上る。

一方、コンソールのシェアは29%(568億ドル)、ダウンロードPCゲームのシェアは19%(387億ドル)だった。

国別の売上高を見ると、これまで中国がトップを独走している状態が続いたが、2022年は米国ゲーム市場の売上高が初めて中国を超える可能性が見込まれている。中国におけるゲーム産業の締め付けの厳格化が背景にあるという。2022年の売上見込みは、米国が505億ドル、中国が502億ドル。

5Gの普及やモバイルデバイスの性能向上によって、モバイルゲームの可能性は拡大している状況。ゲーム市場におけるモバイルゲームの存在感は今後さらに高まっていくはずだ。

ソニーやテンセントを狙うマイクロソフトの攻勢

マイクロソフトのゲーム市場での攻勢がこれまでにないほど強いものであることは、同社が発表したゲーム開発企業Activision Blizzardの買収計画にみることができる。

2022年1月18日、マイクロソフトは米ゲーム開発大手Activision Blizzardを687億ドル(約8兆8766億円)で買収する計画を発表。日本でも話題となったことのある「キャンディークラッシュ」、また「Call of Duty」や「World of Warcraft」などの人気タイトルを数多く有しており、マイクロソフトの買収が成功した場合、2社のゲーム収益は、世界3番目の規模になるとみられている。

こうした事実に加え、この買収がマイクロソフト史上最大の買収額になるだけでなく、全額現金の買収案件で歴史上最大規模になるともいわれており、多方面から注目されている

これまでのマイクロソフトによる買収で最大規模となったのは、2016年のビジネスSNSリンクトイン買収だ。買収額は262億ドルだった。2番目は197億ドルのスピーチAI企業Nuanceの買収、3番目は85億ドルのスカイプ買収となる。4番目に位置するのは2020年のゲーム企業ZeniMax Media買収だが、買収額は81億だった。

マイクロソフトによるActivision Blizzard買収をめぐっては、その規模の大きさから公正取引監督機関である米連邦取引委員会が現在調査を実施しており、買収完了は2023年6月になるとみられている

現在、Activision Blizzardのゲームタイトルの多くがプレイステーションで提供されている。マイクロソフトによる買収によって、これらのゲームタイトルがどのような扱いになるのかが注目点の1つになっている。

最新報道では、買収後も現在プレイステーションで提供されているゲームは維持される可能性があるとのことだが、ブルームバーグが情報筋の話として伝えたところでは、全てのゲームタイトルではなく一部に限定されるもので、いくつかのゲームタイトルはXboxのみで独占提供することが計画されているという。

メタバース投資がゲーム市場に影響を及ぼすのは必至。ゲーム市場はこの先一層大きな変化に直面していくことになるのだろう。

文:細谷元(Livit

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