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箱根登山鉄道では、5月11日、関東運輸局長あてに鉄道線(小田原駅~強羅駅間)旅客運賃の変更認可申請を行ったと発表した。
主な申請内容
(1)鉄道事業の上限運賃認可制度について
鉄道事業の旅客運賃については、「鉄道事業法」に基づき、鉄道事業者の「上限運賃」を国土交通省が認可する「上限認可制」となっている。鉄道事業者は認可された上限運賃の範囲内で「実施運賃」(利用客から実際に収受する運賃)を設定することができる。
同社鉄道線の現行の「実施運賃」は「上限運賃」と同額であり、認可後についても同様に設定をする予定であるという。詳細は、国土交通省関東運輸局長の認可を受けた時点であらためて発表するとのことだ。
(2)申請日および改定予定日
申請日 2022年 5月11日
改定予定日 2022年10月 1日
申請した運賃
① 普通旅客運賃(大人)
② 定期旅客運賃(通勤・通学/1か月)(単位:キロ、円)
申請理由
同社鉄道線(小田原駅~強羅駅間)の輸送人員は、1990 年度の10,321千人をピークに逓減傾向となり2010年度には8百万人を下回る水準まで減少した。
その後、訪日外国人旅行者の増加を受けて2017年度には8,221千人まで回復したものの、令和元年東日本台風(19号)被災に伴う一部区間運休などにより、2020年度はピーク時の4割となる4,134千人まで大幅に減少したという。
このような厳しい事業環境下にあっても、輸送の安全確保という鉄道事業者としての最大の使命を全うするため、開業100年を超え老朽化したトンネルなどの設備改修・マクラギや電柱の更新工事などを計画的に実行し保安度の向上を図ってきたとのことだ。
また、利用客の利用環境改善施策として、新型車両アレグラ号を就役させたほか交通系ICカード乗車券「PASMO」を導入するなど、便利で快適なサービスの提供に努めてきた。
これに加えて、2020年度には令和元年東日本台風(19号)被災に伴う災害復旧により、被災前の運輸収入を上回る規模の設備投資を余儀なくされ、この結果、減価償却費が10年前と比較して7割以上増加しているほか、設備維持管理コストも大幅に上昇しているという。
一方で、鉄道線の旅客運賃は、1997年4月の改定を最後に、以来25年間改定を実施していないという(消費税率引き上げに伴う改定を除く)。
この間、有人駅日勤化や運転業務・出改札業務の委託などによる要員の見直し、保守作業の効率化や鉄道施設の長寿命化などさまざまな経営合理化施策に取り組み、コストダウンを進め現行の運賃水準を維持してきた。
今後について、引き続き鉄道輸送の安全確保と輸送サービスの維持を目的に、適時適切な設備投資とインフラの更新を実行しつつ、あわせて鉄道事業を健全に経営していく必要があるとのことだ。
公共交通としての役割を果たすための費用削減には自ずと限界があり、現行運賃水準のままでは中長期的な事業運営は極めて困難であると認識しており、引き続き経営合理化のための各種施策を推進し、固定費削減や生産性向上を不断の努力で実行していくが、利用客の負担に配慮しつつも旅客運賃をコストに見合った適切な水準に見直すため、25年ぶりとなる運賃改定を申請することとしたとしている。