移住・関係人口促進のためのマッチングサービス「SMOUT」を運営するカヤックが、関係人口から移住・定住に関するサービス・メディアをまとめた「地域系サービス・メディアカオスマップ2021年度版」を本日公開したと発表した。

「地域系サービス・メディアカオスマップ2021年度版」の特徴

●2020年版と比較して紹介するサービス・メディア数、カテゴリーも約1.5倍増と多様化が顕著に
●サウナを筆頭とする「観光2.0」系のサービスや、食・伝統などを通して地域とつながる新たな「関係人口」の取り組みが台頭
●空き家や事業継承のマッチングサイトに熱視線、ユーザー数・問い合わせ増

SMOUT一般登録者数が前年比1.5倍増、地域数は1.3倍と引き続き移住・関係人口へ関心継続

引き続きコロナ禍が続いた2021年。地方に点をもったり、地方に移住をする動きはさらに広がりを見せたという。

SMOUTの一般登録者数は前年比1.5倍に増え約31,254人(2021年12月末時点)となり、SMOUTを利用して関係人口づくりや移住・定住促進を図る地域も前年比1.3倍に増え、723市町村(2021年12月末時点)となった。

SMOUTでは、2018年版から移住・定住のためのサービスやメディアをまとめたカオスマップを作成している。

2018年には、地域のコミュニティを活性化する地域通貨サービスやコミュニティコイン、クラウドファンディングサービスなどが目立ったが、2019年に入ると多拠点居住サービスや地域の仕事体験サービスが続々と立ち上がった。

2020年には、多拠点居住とワーケーションのサービスに加え、地域での副業、リモートワークや、地域のオンラインイベント・サロンの活性化が目立ったという。

2021年は関係人口や移住の切り口の多様化から、紹介するサービス・メディア数、カテゴリーが大幅に増加し、昨年の約1.5倍に。

2021年の特徴として、関係人口を生み出す領域の広がりが感じられる注目のカテゴリー「観光2.0」がある。

サウナや銭湯、キャンプやバンライフ、推し活といった、これまではこのカオスマップには入ってこなかった「交流人口」を示すような「観光」のジャンルが、「関係人口」に近づいてきていると考えられるとのことだ。

また、これまでも地域課題としてあった、空き家や事業継承への関心が高まり、サービスの利用者が増えていることも特徴であるとしている。

<「地域系サービス・メディアカオスマップ2021年版」特徴詳細>

観光(旅行)と関係人口の間、「観光2.0」

ここ数年、サウナを巡る旅は“サ旅”、“サ活”などとして知られるところであるが、地方のサウナへ行って食べるご飯を“サ飯”と呼ぶなど、ムーブメントはますます広がりを見せているとのことだ。

以前からある、いわゆる「温泉旅行」と趣がやや異なるのは、世代が代わり、地域のゲストハウスに宿泊するなどして、地域の“人”と積極的に関わり、その関係性が続いている点にあると分析される。

また、場所の価値情報を「見える化」する新しい観光の概念である「メタ観光」も、関係人口寄りの「観光2.0」であると言えそうであるとし、「観光(旅行)」と「関係人口」の間にある「観光2.0」の領域は、2022年も引き続き注目されそうとのことだ。

「食・工芸・伝統」を通して、関係人口の形成に貢献

左下に置いた「食・工芸・伝統」は「観光2.0」と同様に、これまでもあったジャンルでありながらも、「関係人口」に近づいてきていることが特徴として挙げられるという。

例えば、日本各地の食材がおうちに届き、その土地の暮らしと食文化をイベントや動画で楽しめるオンライン体験サービス「ふるさと食体験(キッチハイク)」や、全国の農家・漁師から直接やりとりしながら食材を買えるオンラインマルシェ「POCKETMARCHE(ポケットマルシェ)」などは、これまでの“お取り寄せ”とは異なり、食を通してその地域に触れ、地域を応援する行為を通じて関係人口が形成されているとのことだ。

商品ブランドプロデュース事業などを展開するMISO SOUPのプロデュース実績。地域発のブランドが発信力をつけ、都市部の人を中心に惹きつけている。

「空き家・リノベーション」関連サービスに移住希望者からの熱視線

2021年の潮流のもう一つは、地域の不動産マッチング支援サービスが新たな盛り上がりを見せているという点。地方にある空き家は増える一方で、なかなか売れない状況が生じ社会課題となっている。

そうした現状を踏まえ、買い手を自分で探すためのサービスを提供しているのが「家いちば」、そして無償譲渡を希望する物件の情報を提供し、あげたい人と欲しい人のマッチングをしているのが、「みんなの0円物件」。

以前からあったカテゴリではあるが、「家いちば」の利用者数は18,102人、商談件数は34,714件(2021年12月度集計)にのぼるなど、地域への足掛かりとしての立ち位置を担っていると思われるとのことだ。

地域課題「事業継承/承継」関連のマッチングサイトへの問い合わせが急増

「事業承継マッチング支援」は、後継者不在の小規模事業者から「第三者に引き継ぎたい」という要望を掘り起こし、「事業を譲り受けたい」という事業者や創業希望者と引き合わせる取り組みであるという。

2021年はこうした事業継承、事業承継のマッチングサイトも伸びたという。日本政策金融公庫が実施している2021年度上半期(4~9月)によると、「事業承継マッチング支援」の申し込み数は前年度の年間実績と比べて約4.8倍の1,808件に上がり、譲渡希望者と譲受希望者の引き合わせ数も約2.2倍の100件に増加。

経営者の高齢化はもちろん、コロナ禍で事業の見直しをするなど、引き継ぎたいと考える層が増えたことが背景にあると考えられるとのことだ。