朝日新聞社は、外交や米国・中国を専門分野とする編集委員の峯村健司記者(47)を停職1か月とする懲戒処分を決めたと発表した。また、編集委員の職も解くという。

安倍晋三元首相が週刊ダイヤモンドのインタビュー取材を受けた後、ダイヤモンド編集部の副編集長に公表前の誌面を見せるように要求した峯村記者の行為について、報道倫理に反し、極めて不適切だと判断したとのことだ。

ダイヤモンド編集部から「編集権の侵害に相当する。威圧的な言動で社員に強い精神的ストレスをもたらした」と抗議を受け、同社は調査を実施。

監督責任を問い、当時の上司だった多賀谷克彦・前ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長を譴責としたという。峯村記者はこの問題の以前から退職の準備を進めており、20日に退社を予定しているとのことだ。

調査結果によると、ダイヤモンド編集部は外交や安全保障に関するテーマで安倍氏にインタビューを申し入れ、3月9日に取材を実施。

取材翌日の10日夜、峯村記者はインタビューを担当した副編集長の携帯電話に連絡し、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」と発言。「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと語ったという。

副編集長に断られたため、安倍氏の事務所とやりとりするように伝え、記事は3月26日号(3月22日発売)に掲載されたとのことだ。

峯村記者の行為について同社は、政治家と一体化して他メディアの編集活動に介入したと受け取られ、記者の独立性や中立性に疑問を持たれる行動だったと判断し、同編集部に謝罪。

峯村記者は社内調査に、「安倍氏から取材に対して不安があると聞き、副編集長が知人だったことから個人的にアドバイスした。私が安倍氏の顧問をしている事実はない。ゲラは安倍氏の事務所に送るように言った」と説明。昨年、副編集長から取材を受けたことがあり、連絡先を知っていたとのことだ。

峯村記者は「安倍氏とは6年ほど前に知人を介して知り合った。取材ではなく、友人の一人として、外交や安全保障について話をしていた。安倍氏への取材をもとに記事を書いたことはない」と説明。

朝日新聞社は峯村記者の行為を裏付けるために安倍氏の事務所に質問書を送り、事務所からは「ダイヤモンド社の取材を受けた際、質問内容に事実誤認があり、誤った事実に基づく誤報となることを懸念した。峯村記者が個人的に(副編集長を)知っているということだったので、(安倍氏が)マレーシア出張で時間がないこともあり、事実の誤りがないかどうかについて確認を依頼した。峯村氏からは電話で『インタビューの内容について確認はできなかった』と聞いている」との回答が寄せられたとのことだ。

宮田喜好・朝日新聞社執行役員ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長のコメント

本社は記者行動基準で「独立性や中立性に疑問を持たれるような行動はとらない」と定めています。編集委員の行為は、政治家と一体化してメディアに圧力をかけたと受け止められても仕方がなく、極めて不適切です。ダイヤモンド社と読者のみなさまに深くおわびします。取材対象との距離の取り方を誤り、読者からの信頼を揺るがす大変重い問題と受け止めています。報道倫理についての指導を改めて徹底いたします。