東京発ローランド・ベルガーは、2022年4月、ロシア・ウクライナ侵攻に関する最新スタディ「ロシア・ウクライナ侵攻による経済への影響」を発表した。
同スタディは、今後のシナリオを3つのケースに分け、欧州連合(EU)、アメリカ、中国の3つの地域に与える侵攻の影響と、EUの産業界に与える侵攻の影響を分析し、企業活動に対する示唆を抽出しているという。
■要旨
ロシアによるウクライナへの侵攻は、開始から1か月以上を経過しても終息の見通しはついていないため、企業活動に与える影響も大きく、エネルギー価格の高騰や原材料不足などサプライチェーンを中心に様々な影響が出始めている。
今回同社はロシア・ウクライナ侵攻が及ぼす経済的なインパクトを複数のシナリオで予測し、EU・アメリカ・中国に対する経済的影響と企業の対応方針について示唆抽出を試みたとしている。
想定したシナリオは、大きく下記の3つ。
●シナリオA:短期的(2022年上期中)に停戦となるシナリオ
●シナリオB:紛争が長期化し、終息が2022年下期以降になるシナリオ
●シナリオC:紛争が長期化し、EUが更なる経済制裁(エネルギー禁輸)に踏み込むシナリオ
同社による分析の結果、ロシア・ウクライナと地理的にも経済的にも近いEUは、大きな経済的影響を受けることがわかったという。
分析によると、早期に紛争が収束するシナリオAでも2022年のEUの経済成長率は、当初予想の4.0%から3.1%へとマイナス0.9ポイントの影響となる。
紛争が長引いたシナリオBではマイナス1.9ポイント、経済制裁が強化されエネルギー禁輸となるシナリオCでは2022年の成長率はマイナス3%となり、実にマイナス7ポイントという大きな打撃に。
経済合理的に考えるとエネルギー禁輸は難しい選択ではあるが、キーウ近郊の凄惨な状況が明らかになる中で現在EUの論調は、部分的なエネルギー禁輸も含めた追加制裁に傾きつつあるという。
また、リトアニアは既にロシア産ガスの全面輸入禁止に踏み切っており、今後のEUの動向が注視されるとのことだ。
なお、侵攻の影響はエネルギー価格の上昇に加え、様々な原材料の不足・高騰を招き、企業のサプライチェーンにも影響をおよぼすとしている。
企業は、侵攻が長期化した場合に備え、自社が属する業界やサプライチェーンへの影響を分析し現時点から様々な対策を講じる必要があるとのことだ。