横浜市大と慶応大学、新型コロナ禍による自殺率を共同研究 失業率と連動した増加を確認 20代女性で顕著に

横浜市立大学附属病院 化学療法センター 堀田信之センター長と、慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 森口翔助教の共同研究グループは、厚生労働省の死亡統計データのデータ解析を行い、結果を公表した。

なお、同研究成果は英文医学誌「JAMA Open Network」に掲載されたとのことだ。

■研究内容

2020年に新型コロナ禍が始まり、景気の悪化に伴う自殺の増加が懸念されているものの、1年以上の観察期間のある研究は報告されず、また以前の報告では、新型コロナ禍の影響による自殺の増加を肯定する論文、否定する論文があり、肯定する論文でも季節変動の影響との見方が主流だったという。

同研究グループでは、厚生労働省の死亡統計データのデータ解析を行い、その結果2020年度の人口10万人当たりの自殺件数は、2009年から2019年までの傾向から算出した予測値より、男性で17%、女性で31%増加していることを確認したとのことだ(図1A)。

また、死亡の増加は本邦の失業率と連動している結果となったとしている(図1B)。

2009年からの自殺件数、失業率の推移
【左】図1A【右】図1B

なお、年齢別の自殺件数では若年女性で増加が著しく(図2)、20代女性では予測値に対して72%増加していたとのことだ。

(図2)2009年からの自殺件数の推移

共同研究グループは、近年の自殺者数の増加における間接的要因として、新型コロナ禍における様々な事象が考えられる中、失業率の増加との連動の可能性を確認したとしている。

また同研究の結果から、感染対策と合わせて適切な経済政策を行うことにより、自殺者数の増加が抑制されることが考えられるとのことだ。

論文情報
タイトル:Trends in suicide in Japan following the 2019 Coronavirus Pandemic.
著者:Nobuyuki Horita(堀田信之)、Sho Moriguchi(森口翔)
掲載雑誌:JAMA Open Network
DOI:10.1001/jamanetworkopen.2022.4739

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