KDDI、三菱重工業(以下、三菱重工)、NECネッツエスアイは、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置を活用し、データセンターを小型コンテナに収容して稼働させる実証実験に成功したと発表した。
従来型のデータセンターと比較して43%の消費電力削減と、PUE1.07のコンテナ型スモールデータセンターを実現したとのことだ。
3社は、同実証のコンテナの中で稼働させた液浸冷却装置を、大規模なデータセンターへの導入に向け、2022年4月1日からKDDI小山テクニカルセンター(以下、KDDI小山TC)での試験運用を開始。
また、KDDIにおいては2024年度中に液浸冷却装置の商用提供を目指すとのことだ。
実証概要
2021年6月21日から三菱重工のYokohama Hardtech Hubにて、50kVA相当のサーバーなどのIT機器と液浸冷却装置を12ftのコンテナに収容し、稼働させる実証を実施。
設置が容易なコンテナ型スモールデータセンターを実現することで、データセンターの設置環境や条件を大きく緩和するほか、既存のデータセンターの処理を補完することができるという。
また、同実証では、コンテナ型スモールデータセンターの成立性のほか、サーバーの冷却性能、エネルギー効率を検証。
実証内容の詳細、各社の役割、協力企業などは2021年6月21日のニュースリリースにて記載。
成果
冷却効率の向上
サーバーの冷却において、従来の空調空冷の代わりにオイル状の液体冷媒と外気を使用することで、43%の消費電力削減とPUE1.07を実現。
小型データセンターの実現
実装設計や小型装置の開発を行い、液浸冷却装置(液浸装置+ラジエーター)や外気冷却機構一式を12ftの小型コンテナに実装。
■KDDI小山TCでの試験運用について
1.内容
KDDI小山TCで液浸冷却装置を試験運用し、安定性や成立性を検証。
(1)冷却効率の立証
最適化されたラジエーターや外気冷却装置を開発し、データセンターでの実装を想定した排熱処理能力の向上と省電力化を目指すという。
日本の厳気象などを想定し、冷却能力が十分に機能することを確認。
(2)高可用性の実現
液浸冷却装置および外気冷却装置に可用性を持たせ、ティア4レベルのデータセンターでの実装設計を具現化し、安定稼働の成立性を検証。
(3)商用導入計画の具現化
保守体制の検討も含めた実践的な運用を行い、国内での商用普及や導入計画の具体化を図るとのことだ。
2.期間
2022年4月1日から2023年2月28日
3.各社の役割
KDDI
同実証試験の円滑な管理推進。
可用性を考慮したデータセンターへの液浸システム導入におけるシステム設計。
IT機器の導入、保守、運用体制の課題解決とフィールドトライアル。
三菱重工
外気冷却装置の開発および試作。
液浸冷却システムの設計、構築。
液浸冷却システム制御および運用試験。
外気冷却装置の保守・運用設計。
NECネッツエスアイ
液浸データセンター向けの設備導入設計と課題抽出および改善。
液浸装置、電源設備などの調達、設計、施工を通して課題抽出と改善。
液浸データセンター向け統合監視システムのSI設計構築を通して監視、管理、制御手法の検証。
液浸データセンター向けの最適な保守設計、運用、保守スキームの確立。
4.試験運用への協力企業(ABC順)
ENEOSホールディングス
GIGABYTE Technology
Intel Corporation
MiTAC Computing Technology Corp
Super Micro Computer, Inc.
Western Digital Corporation
アリスタネットワークスジャパン
エヌビディア
DC ASIA
工業技術研究院(ITRI)
シスコシステムズ
ソリダイム・ジャパン
デル・テクノロジーズ
日本AMD
日本フォームサービス
日本ヒューレット・パッカード
パンドウイットコーポレーション日本支社
3社は今後も、同実証を通じて、国内のデジタルトランスフォーメンション(DX)の発展に寄与するとともに、脱炭素化および地球環境保全に貢献していくとのことだ。