新型コロナウイルス感染症が世界的に広がり始めてから2年以上が経った。この間、私たちの生活様式は大きく変わった。オフィスへ出社する代わりに、ビジネス上のコミュニケーションはオンライン会議ツールなどを使う、インターネットを介したものになった。
また、生活シーンにおいてもレジャー施設やイベントなど、人が多く集まる場所へ行くことが忌避され、旅行や出張などの遠出も難しくなった人々は、買い物や映画・ライブ鑑賞などまでも、自宅で済ませる時代となりつつある。
こうした生活様式の変化によって、インターネットのインフラとしての重要性がより高まったと言えるだろう。また、モバイルのネット回線が必要な場面が少なくなり、自宅の固定ネット回線との組み合わせでどうバランスを取るべきかと、通信環境を見直す人が増えている。
そのような中で、私たちはどのようにしてこれからの通信環境を選択していくべきなのだろうか。ITジャーナリストの林信行氏に、インターネット利用のニーズの変化や、それに合わせた通信環境の考え方について話を聞いた。
社会環境・生活様式とともに変化するネットの使い方
「皆さんがそうであるように、私も家でテレワークの機会が増えました。会議や打ち合わせ、取材だけではなく、私がよく登壇するカンファレンスやアートイベントなどもオンライン開催になるなど、変化は多方面に及びました。周りを見回しても、オンライン会議ツールが当たり前に使われ、飲み会をはじめ、ほとんど電話のような使い方をしている人も出てきています。そういうコミュニケーションが、全体的に増えたように感じています」
- 林信行 (ITジャーナリスト、コンサルタント)
- コラムニスト・コンサルタント。30年以上、ジャーナリストとしてテクノロジーが生活や社会にもたらす変化の最前線を取材。多数の著書を執筆。その経験を元にメーカーや通信会社、ベンチャー企業などのアドバイザーを歴任。現在はAI全盛となる22世紀に残すべき価値を模索して現代アートや伝統文化、世界の優れたデザインの取材に力を入れている。グッドデザイン賞審査員、ダイソン財団理事、リボルバー社社外取締役。
インターネット接続サービス「So-net(ソネット)」が実施した、週1日以上テレワークをするひとり暮らしの20代男女を対象に行った調査では、75.8%がテレワークを今後も「続けたい」と考えているそうだ。
また、テレワークに適した住まいに引っ越したいかを聞いたところ、65.5%が「引っ越したい」と回答した。転居を考えるほどにまで、テレワークが生活の変化の大きな部分を占めていることがうかがえる。
こうしたライフスタイルの変化を受けて、費用面も含めた通信環境の見直しの気運が高まっている。
「全体的にネット接続環境の底上げが起きているのを感じています。テクノロジー系の仕事に携わり、もともと高速なインターネット回線を使っていた人は、コロナ禍でより高速な回線、最上級の品質なサービスを求める動きが見られました。
一方で、インターネットはスマートフォン経由からの利用が主だった若い人たちでも自宅にパソコンと一緒にインターネット回線を用意する人が増えた印象があります。
2020年に大学でオンライン講義をしたときには、パソコンを持っておらずスマートフォンで授業に出席した学生が結構多かったのですが、オンラインが通常になってしまうとさすがにパソコンを買わざるをえない状況になってきました。パソコンを手に入れて最初はスマートフォンのテザリングでどうにかつないでいた人も、手頃な固定回線を引きたいと感じ始めたのではないでしょうか。
お年寄りの方たちも、外出を控えなければいけない状況下で、離れて暮らす家族の様子をビデオ通話で確認したり、家から行政のサイトを見たりワクチン接種の予約をしなければならなくなりました。スマートフォンもいいのですが、『これを機に』画面の大きなパソコンを買い、一緒にネット回線を用意という流れがあるようです。
世代など関係なく、みんながインターネットをより多く・より安定した回線で使う方向へ、一歩進んだ感じがします」
本音は「光回線を引きたい」のに利用しない20代テレワーカーの事情
前出の調査では、毎月の固定費についても聞いており、全体の9割が「なるべく低く抑えたい」と答えている。さらにその人たちに「何の支出を抑えたいか」という質問(複数回答可)をしたところ、64.1%が「通信費」と答えた。「水道光熱費」の61.2%を上回り最も多い回答となった。
この状況について林氏はこう分析する。
「以前のインターネットは“フリーミアム”という言葉があったように、回線の費用さえ払っていれば、その上でかなりの部分を無料で利用できるイメージがありました。無料でも、そこそこのことができた。でも最近はすっかり“サブスク”の時代になり、気づくといくつものサービスに登録してしまい、月の支払い額が増えているんですよね。
しかし、ネット回線がなければサブスクのサービスも使えないので、満足できるクオリティでサービスを使える範囲内でなら、通信費を抑えたくなる気持ちも理解できます」
実際にひとり暮らしでテレワークをする20代は、どういう通信環境を使っているのだろうか。
これも先ほどの調査によると、自宅のインターネット回線の種類は光回線が44.5%で、残りの55.5%は光回線以外、ホームルーターやモバイルWi-Fiルーター、CATVの回線、スマホのテザリングなどを使用していることが分かった。
自宅で光回線を利用していない211人に対し「光回線を利用したいか」を聞くと、半数以上の人が「利用したい」と答えている。それなのに、なぜ利用しないのか、その理由をたずねると、「費用が高い」(36.8%)が最も多く、次いで、光回線は「自身の生活に対し持て余してしまう」(27.2%)という理由が挙がった。
つまり、20代ひとり暮らしのテレワーカーは、「自宅で光回線を利用したい。でも、費用が高くスペックを持て余してしまう」と感じているというのが実態のようだ。
「スマホ世代」の台頭によって変化する通信環境
通信費が高くなりがちな背景には、スマートフォンを持たない生活が考えにくい時代ということもあるだろう。
スマートフォンでたいていのことは事足りるし、テレワークが週に1日程度なのであれば、固定ネット回線にかかる高い費用と、すでに持っているスマートフォンでのテザリングを天秤にかけて、テザリングを選ぶケースも考えられる。
いわゆる「スマホネイティブ」世代が台頭してきたことで、自宅の固定ネット回線への考え方が変化しているのだ。モバイルの通信サービスが各キャリアのプランから格安SIMまで多様化する今、それに加えて固定ネット回線を導入すべきか否かも含めて、自分のライフスタイルに合った通信環境をどのように考え、構築すればよいのだろうか。
「僕はよく、オンライン会議をしながら次に自分が話そうと思っていることについて手元のスマホで調べることがあります。テザリングでオンライン会議をしていても同じことはできるのですが、パソコンにはパソコン用の回線、スマホにはスマホの回線をそれぞれ持っておくことが安心感につながる部分はあると思います。
どちらかの回線に障害が発生して通信できなくなる可能性はゼロではないですし、ハードウェアや電波状況などによっても同様のことが起きる可能性はあります。そうなって重要な会議に出られなくなったり仕事が滞ってしまったりすることを考えると、バックアップとして通信経路を多重化しておくことは望ましいと僕なら考えます」
「もちろんそのために高額の出費が必要なのであれば無理をする必要はありませんが、手頃な額の投資でスマホにプラスして固定回線を導入できるなら、視野に入れてよいのではないでしょうか。仕事以外の用途、例えばネット動画を観るといったことも通信制限などを気にすることなくできるわけですから。
スマホで動画を観るしか選択肢がないのに比べて、動画をスマホで観てもいいしパソコンなどもっと大きな画面で観る選択肢があることで、生活の豊かさの幅が広がると思います」
これからの時代は、自分に合うただ1つの通信サービスを選ぶというよりも、1つのサービスの中に選択の幅があり、自分のライフスタイルに柔軟にフィットさせられるものを選ぶという視点が必要になるのだろう。
シンプルで低価格「No frills(ノーフリル)」な光インターネット回線
こうした20代ビジネスパーソンの生活様式と通信ニーズの変化を受けて、2022年2月、So-netは光回線のサービスラインアップとして、新プラン「So-net 光 minico(ミニコ)」をリリースした。
最大1ギガ(Gbps)の光インターネットサービスで、このプランのために専用に設計したネットワークを利用することにより、光回線をリーズナブルな価格(定額)で利用できるのが大きな特長となっている。
従来の一般的な光回線プランは複数人世帯に対応できるスペックのものが中心で、それがひとり暮らしには「持て余してしまう」ものになっていた。So-net 光 minicoは、機能を通信に絞ったシンプルなプランで、その分価格を抑えて提供する新しいタイプの光回線プランだ。
「英語では『No frills(ノーフリル)』という言葉があります。フリルというのは洋服などに使われる飾りの一種ですが、ノーフリルは本来必要な機能に絞った、一番シンプルな状態の製品やサービスのことを形容する言葉です。僕はこのノーフリルという言葉が表しているような、必要なものを必要なときに必要な分だけ買うという消費行動が、20代の若い人だけじゃなく、今の社会のトレンドとしてあると思います」
So-net 光 minico専用のネットワークは、テレワークで使うオンライン会議ツールの利用やWebサイトの閲覧、標準品質の動画視聴などには必要十分なスペックを備えている。ただし、利用が集中する混雑時には通信速度が低下する場合があり、その分、一般的な光回線プランよりも利用料を抑えめに設定している。「最低○カ月は利用しなければならない」といった契約期間はなく、いつ止めても解約金は必要ないのも1つの特長だ。
ただ、混雑状況を気にせず、高速な通信を確実に使いたい日も時にはあるかもしれない。そのようなニーズに対応して、So-net 光 minicoでは「さくさくスイッチ(ワンデー)」という追加オプションを用意している。前日までにマイページで申し込んでおけば、翌日の約24時間は混雑状況の影響を受けず安定した高速な通信環境を利用できるサービスだ。
「日本の光インターネット回線は、実は世界的に見ても非常に高速なのですが、すべての人がこの通信速度を上限まで使い切るほどのニーズを持っているわけではありません。
そんな中で、低価格で使える、でもオンラインライブやゲームのダウンロードなど大容量通信を遅延なく行いたい時はオプションで速くすることもできるというSo-net 光 minicoは、その振れ幅の中で自分にとって『必要な分だけ』に調節できるという意味で、非常に良い選択肢なのではないかと思います」
光回線を引きたい、けれども費用が高くスペックを持て余してしまうと感じている人にとって、So-net 光 minicoは検討に値するプランだと言えるだろう。ノーフリルなプランをベースに、あなたのライフスタイルにぴったりな通信環境を組み立ててみてはいかがだろうか。