三井住友DSアセットマネジメントは、マーケットレポート「EUで進む『ロシア産エネルギー依存』からの脱却」を発行したと発表した。
欧州連合(EU)が2021年にロシアから輸入した天然ガスは1,550億立方メートルと、ガス輸入全体の約45%を占めており、ロシアへの依存度が高い状態となっている。
このため、ロシアによるウクライナ侵攻により欧州のエネルギー需給がひっ迫し、エネルギー価格が高騰している中、3月に入ってから国際エネルギー機関(IEA)や欧州委員会から提言が示されるなど、EUで『ロシア産エネルギー依存』からの脱却に向けた動きが加速しているとのことだ。
1.IEAが『ロシア産エネルギー依存』を減らすようEUに提言
IEAは3日、欧州の『ロシア産エネルギー依存』を減らすよう、10項目の提言。具体的には、ロシアとの新規のガス供給契約を結ばず他国からの輸入を確保することや特に需要が高まる冬に備えて事業者にガス貯蔵を義務づけること、風力・太陽光発電といった再生可能エネルギーの拡大、原子力発電の活用、省エネの強化等が挙げられているという。
これら10項目の提言の実施により、ロシアからの天然ガス輸入を3分の1以上減らすことができるとしている。
2.欧州委員会もエネルギー政策案を発表、具体的な目標が示される
欧州委員会は8日、エネルギー政策の包括案を発表。欧州委員会は、政策の実行により、年末までにロシア産ガスの需要を3分の2程度削減することができると見ているという。
さらに、10、11日に開催された非公式のEUサミットでは、上述の欧州委員会の提案に沿う形で、ロシアからの天然ガスや石油、石炭の輸入をできるだけ早期に廃止することで合意され、2027年までに『ロシア産エネルギー依存』から脱却することが目標に。
具体的には、液化天然ガス(LNG)の輸入やバイオガスの増加、エネルギー効率の引き上げ、再生可能エネルギーへの投資拡大やプロジェクト認可の加速などが挙げられているとのことだ。
【今後の展開】欧州の再生可能エネルギーの普及は一段と進むと見られる
欧州委員会の提案では、加盟国とエネルギー事業者に10月1日までに貯蔵能力の90%を目標にガスを貯蔵するよう求めており、4月に義務化する法案をまとめる方針だという。
また、ロシア以外へと輸入元を多様化することが、短期・中期的に計画されているとのことだ。
欧州委員会は、今後さらに具体的な計画を5月末までに提示する予定で、EUは6月までに特別サミットを開催してこれらを協議する予定だとしている。
欧州は、電気自動車の普及をはじめ、再生可能エネルギーの普及が比較的進んでいる地域だが、今回のウクライナ情勢の緊迫化による『ロシア産エネルギー依存』の脱却を通して、今後一段と再生可能エネルギーの拡大が見込まれるとのことだ。