リモートでも年収1000~1500万円超え多数、売り手市場の米国でリモートで働ける職種が急増中

売り手市場の米人材市場、リモートワークで魅了

2021年4月頃に始まったといわれる米国の「大退職トレンド」。ワクチン接種の増加や景況感の改善によって、転職活動が活発化したことがその背景にある。

米CNBCの報道によると、米国における2021年4月の退職者数は400万人と過去最高を記録。また、同月の求人数も930万件と過去最多を記録した。

完全な売り手市場となっている米国の人材市場では、企業は優秀人材を獲得するために、給与だけでなく、フレキシブルワークや福利厚生の拡充などさまざまなベネフィットを提供せざるを得ない状況だ。

特に、リモートワークやハイブリッドワークは、人材獲得のための必須要素となりつつある。企業側は、オフィスワークに戻りたいという動機があるようだが、売り手市場のため、強気にオフィスワークを強いることができない。

こうした状況は、さまざまな人材市場調査の数字にも如実に反映されるようになってきている。

企業レビューサイトGlassdoorがこのほど発表した「Best Jobs for 2022」調査では、同サイトにおける米国の求人情報において、リモートワークを含む「ハイブリッドワーク」という言葉が登場する頻度が2020年比で、626%も増加したことが判明したのだ。

これに伴い同調査では、リモート/ハイブリッドワーク率が高い職種も割り出している。

リモートワーク率、90%超えの職種

米国で現在リモートワーク率が最も高い職種は「Database Architect」だ。同職種でリモートワーク(work from home)ができる確率は94%に上ることが判明した。

このリモートワーク率は、Glassdoorの企業レビューデータから算出されたもの。Database Architect求人全体のうち、94%の求人案件でリモートワークが可能であることが示唆されたことを意味する。

Database Architectとは、企業のデータを守るコンピューターシステムをデザイン、また保守する職種。年収中央値(Median Base Salary)は、14万ドル(約1614万円)と高い水準となっている。

Talent.comの税金計算機で、ニューヨークで14万ドルを稼いだ場合の手取り額を計算すると、連邦所得税や州の所得税が差し引かれ、9万5896ドル(約1105万円)となる。

Glassdoorの「Best Jobs for 2022」総合トップ50企業のうち、47位にランクイン。米国内の求人数は3046件だ。

次いでリモートワーク率が高かったのは「Salesforce Developer」。リモートワーク率は93%だった。

文字通り、Salesforceのソフトウェアを活用し、ウェブサイトやアプリケーションを開発する職種。年収中央値は、9万8972ドル(約1141万円)。総合トップ50ランキングでは18位、求人数は5250件に上る。

次いでリモートワーク率が高い職種3位には、91%の「Solution Engineer」がランクイン。

顧客向けのソフトウェアのカスタマイズが主な仕事となるこの職種、年収中央値は10万915ドル(約1258万円)だ。総合ランキングでは45位、2365件の求人が掲載されている。

リモートワーク率が高い職種4位にランクインしたのは「Machine learning engineer」。リモートワーク率は90%だった。

機械学習により自動で動くソフトウェアのデザインを担い、データサイエンティストやソフトウェアエンジニアとの連携が多い職種だ。年収中央値は、13万5015ドル(約1504万円)。Machine learning engineerは総合ランキングでも6位と高順位に位置する。求人数も6801件と、上記の職種よりも需要が高くなっている。

リモートワーク率5位は「Product marketing manager」。Machine learning engineerと同じく90%の求人でリモートワークが可能であることが示された。年収中央値は、12万5015ドル(約1250万円)。総合ランクは33位、求人数は2396件だった。

以下トップ10内には、6位「Enterprise architect」(リモートワーク率90%、年収中央値14万4997ドル)、7位「Scrum master」(89%、10万9284ドル)、8位「Realtor」(88%、5万4090ドル)、9位「Customer success manager」(88%、7万3702ドル)、「Cloud engineer」(87%、11万8999ドル)がランクインした。

これらリモートワーク率が高い職種トップ10の中で、求人数が最も多いのは、6位の「Enterprise architect」だ。Glassdoorに掲載されている求人数は1万4021件だった。企業のITを幅広く担当する職種で、パンデミックをきっかけとするITシフトの影響を受け需要が拡大。この数字から、多くの企業でEnterprise architectが不足していることがうかがえる。

人気の職種で求められるスキル

Glassdoorの「Best Jobs for 2022」調査では、ランクインした職種においてどのスキル需要が高まっているのかという点も分析している。

技術系のスキルで需要が最も高かったトップ5は、「機械学習」「ディストリビューテッド・コンピューティング」「時系列分析」「統計モデリング」「ユーザビリティテスト」。

一方、非技術系のスキルでは、「プロダクトマネジメント」「コントラクトアドミン」「プロジェクトマネジメント」「ビジネスプランニング」「アカウントマネジメント」がランクインした。

米国の大退職トレンドのピークは過ぎ去ったとみられるが、2022年も退職・転職数が通常より多い状態が続くと予想されている。売り手市場が続く米国、他の職種でもリモートワーク率が高まってくるかもしれない。

文:細谷元(Livit

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