帝国データバンクは、ロシアに進出している日本企業について調査・分析を実施。ロシアに進出している日本企業は、2022年2月時点で347社判明した。

ロシア進出の日本企業347社、ウクライナとの累計は375社 ロシア進出では現地生産など目立つ

2016年(314社)から、5年間で1割増加、2013年(213社)からは1.6倍に増加。進出先としては、ロシア首都のモスクワのほか、サンクトペテルブルク、ニジニノヴゴロド、サマラなど、多くがロシア西部に集中したという。

一方、天然ガスなど資源開発の進むサハリン、日本から地理的に近いウラジオストクへの進出も目立った。

ロシアへの進出形態では、判明する企業のうち、現地での販売拠点や駐在員事務所など「オフィス/店舗・販売拠点」が7割超を占めた一方で、「工場・製造拠点」も1割超を占めているという。

この結果、ロシア・ウクライナ両国へ進出している日本企業進出は、累計で375社に上るとのことだ。

欧州主要国と比較すると、ロシアへの進出企業数は欧州では最も多いイギリス(1298社)の3分の1となるものの、隣国ウクライナ(57社)とは6倍の差がある。

また、トルコ(約200社)・スペイン(約230社)といった国に比べても1.5倍の規模となるなど、日本企業の進出としては欧州各国のなかでも比較的多い。

2016年の安倍首相の「新しいアプローチ」による交渉とともに日ロ経済交流が近年進んできたほか、人口1億4,000万人を超えるロシア市場の成長可能性も大きかったことから、日本企業の進出や事業強化が進められてきたという。

そのため、現地でのサービス・保守拠点、営業・駐在拠点のみならず、製造業では現地向け・CIS諸国向けのグローバル生産を目的とした工場進出なども目立ったとしている。

ロシア進出、製造業が156社で最多 自動車産業などが中心 総合商社など卸売業も多い

業種別にみると、ロシア進出企業で最も多いのは「製造業」の156社となり、全体の4割超を占める。

トヨタ自動車など完成車メーカー各社のほか、自動車部品メーカー、武田薬品工業など、業界大手の企業が多く含まれ、「卸売業」(87社)は総合商社のほか、ロシア産水産品を取り扱う水産物専門商社、中古車の輸出・販売業者などが進出している。

「サービス業」(35社)では、ソフトウェア開発などのIT企業が目立ち、「金融・保険業」(33社)は、欧州やCIS諸国向けのグローバル拠点のほか、銀行の進出も目立つ。

ロシアがウクライナへ全面侵攻した。こうしたなか、日本も独立承認地域の資産凍結や輸出入禁止などの対ロ経済制裁へと舵を切り、これまでの経済協力姿勢は180度の転換を余儀なくされている。

ロシアビジネスを展開する日本企業でも、影響は避けられない情勢となっているという。

今後は、日米欧各国による経済制裁の内容や強度、ロシアの対抗措置といった内容によるものの、物流や貿易内容などにも踏み込んだ、「より厳しい制裁が科される」との見方が強まっているとのことだ。

対ロ輸出規制の網が日本製品にも拡大すれば、市場拡大を見込んでロシアに拠点を置き、多くの部品・製品をロシア国外から調達してきた製造業のほか、市場開拓を進めてきた日本の小売・卸売といった流通産業などもダメージが避けられなくなるといった見解がされている。