KDDI、分散型電源のリアルタイム制御に成功 5GとAWS Wavelengthを活用し再エネ拡大・脱炭素に貢献

エナリスとKDDIは2021年10月から2021年12月の間、5GとMECの商用サービスであるAWS Wavelengthを活用した仮想発電所「VPP(バーチャルパワープラント)」 の実証実験を実施し、日本で初めてMECを用いた分散型電源のリアルタイム制御に成功したと発表した。

各分散型電源に接続する専用端末の性能をMECに持たせることにより、端末の低コスト化と制御精度向上の両立を実現するとのことだ。

再生可能エネルギーの導入拡大には発電量と電力需要量の変動に応じた迅速なバランスの調整が必要となる。

バランス調整を行う仕組みとして期待されるVPPには、効率的かつ迅速に家庭用蓄電池などの分散型電源を制御し、必要とされる電力量を供出する技術が求められているという。

同実証実験では低遅延の特長を持つ5GとKDDIの5Gネットワーク内に配置したAWS Wavelengthを掛け合わせることにより、分散型電源の制御周期を従来の1分から1秒に短縮。

さらに、同一基地局エリア内にある分散型電源間で誤差を補い合い、制御精度を高めることにも成功したという。

これにより、今後普及が見込まれる家庭用蓄電池をはじめとするさまざまな分散型電源をVPPに取り込み、より大容量に、より素早く柔軟に電力の安定供給に貢献できることを確認したとしている。

両社は、5GとAWS WavelengthのVPPへの活用を通じて再生可能エネルギーの大量導入における課題である発電量の不安定性の解決に取り組み、日本のカーボンニュートラルの実現に貢献していくとのことだ。

■同実証実験の背景

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの大量導入による主力電源化が目指されている。安定した電気の供給には発電量と電力需要量とのバランスを常に保つ必要があるが、再生可能エネルギーは発電量が季節や天候に左右されやすいため、家庭用蓄電池をはじめとした分散型電源の制御による需給の調整が重要になるという。

VPPは需給の調整を行う役割として期待されており、今後の利用拡大に向けて、より多くの分散型電源を低コストで迅速かつ高精度に制御できる技術が求められているとのことだ。

■同実証実験の概要

AWS Wavelengthは、KDDIの5Gネットワーク内にAWSのシステムを配置しデータ処理することで、アプリケーションの超低遅延処理を実現するもの。

同実証実験は、今後普及が見込まれる家庭用蓄電池やバッテリー式電気自動車を想定し、エナリスのVPP技術基盤とKDDIの5G×AWS Wavelengthを活用し、より高度で高速な分散型電源制御の実現性を実証したとのことだ。

これまで各分散型電源リソースに設置していた専用端末とクラウド型の分散型電源マネジメントシステム (DERMS) で担ってきた制御処理などをAWS Wavelengthに移行。

5G×AWS Wavelengthを利用したVPPにおいて、今後必要とされる分散型電源の制御のリアルタイム化、高度化を実現し、分散型電源による安定的な電力供給が図れることが実証できたという。

また、各分散型電源リソースに接続した専用端末をAWS Wavelengthに移行するため、従来、分散型電源側に設置していた高性能なゲートウェイ装置が不要となり、電力ユーザー側にかかるコスト低減が可能となる。

エナリスとKDDIは、エネルギー分野におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進と多様な分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスの拡大を通じ、日本社会のカーボンニュートラル実現に貢献するとしている。

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