モデルナ、アジアでの事業拡大を視野に域内に4拠点を開設 マレーシア、台湾、シンガポール、香港に新会社を設立

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メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬とワクチンのパイオニアであるバイオテクノロジー企業のModerna Inc.(以下、モデルナ)は、マレーシア、台湾、シンガポール、香港に子会社を開設し、アジア全域で販売ネットワークを拡大する計画を発表した。

この計画は、新型コロナウイルスワクチンや将来のmRNAワクチンおよび治療薬の製造・販売拡大を企図するモデルナのグローバル戦略の一環であるという。

モデルナはすでにアジア太平洋地域内で日本、韓国、オーストラリアに子会社を設立しており、アジアはモデルナの事業にとって重要な地域となっている。

モデルナは2021年、韓国における研究と製造の可能性を探ることを目的とした韓国政府との協力関係について発表し、さらに最近では、オーストラリア政府との間に同国ビクトリア州での最新のmRNAワクチン製造施設建設に向けた合意に達したことを発表しているとのことだ。

モデルナの最高経営責任者(CEO)であるステファン・バンセル(Stéphane Bancel)は、以下の通り述べている。

2021年はモデルナにとって大きな意味のある年でしたが、2022年も引き続き、アジアでのプレゼンス拡大を通じて継続的な成長を遂げることができると期待しています。10年にわたるmRNAプラットフォームの開拓と開発を経て、当社は新型コロナウイルス感染症対策において世界規模で大きな役割を果たす準備を整えました。mRNAプラットフォームを礎に、新たに加わったアジア太平洋地域の4つの子会社とともに、域内に存在する重い疾病を含む健康課題の解決に貢献する新たな挑戦に臨んでいきます。

アジアは感染症の影響を最も高く受けており、高齢化に伴って非感染症による負荷も拡大している。

モデルナは、予防用ワクチン、循環器疾患、オンコロジー、希少疾患分野においてポートフォリオを拡大しており、域内の人々の健康に貢献するためにmRNA技術を最大限に活用することができる。

モデルナの多岐にわたるパイプラインには現在40件の開発プログラムが含まれており、そのうち25件は臨床試験の段階にある。

オミクロン株などの懸念される変異株に対応するための新型コロナウイルス戦略、ならびにさまざまな疾患や状態を対象とする新たなワクチンと治療手段の開拓を続けているという。

また、感染症、免疫腫瘍学、希少および超希少疾患、自己免疫疾患の各分野にわたる、大きなアンメットニーズが存在する疾患の予防と治療を目指したmRNA医薬を開発しているとのことだ。

モデルナは世界の12か国に事業拠点を持ち、そのうち10か国には子会社を置いている。モデルナの新型コロナウイルスワクチンは、カナダ、日本、EU、英国、およびイスラエルを含む、70を超える国の薬事規制当局から承認を取得している。

2021年には8億700万回接種分のモデルナの新型コロナウイルスワクチンが世界中に出荷され、そのうち約25%は低・中所得国に向けたものであったという。

モデルナの戦略の柱について

モデルナには2022年およびそれ以降において、会社が注力しインパクトを与えようとしている分野のガイドとなる4つの戦略の柱が存在する。この4つの柱は以下のとおり。

●呼吸器疾患全般を対象とする年次接種のブースターワクチンの開発とその継続的なカスタマイズ。
新型コロナウイルス、インフルエンザ、およびRSウイルスなど複数のウイルスを対象とする、年に1回接種する多価ブースターワクチンには、コンプライアンス、患者にとっての利便性(3回ではなく1回のみの接種)、およびワクチン接種コスト削減などの面を通じて医療制度に貢献する可能性がある。

●現時点において承認されたワクチンが存在しない、潜伏性ウイルスを対象とするクラス初となるワクチンの開発。潜伏性ウイルスは身体に感染した後に休眠に入り、その時点で複製は行わないものの、活性化して疾患を引き起こす能力を維持。
また潜伏性ウイルスによる感染には、未知の悪影響が伴うとのエビデンスも新たに明らかになっているとのことだ。
モデルナでは、エプスタイン・バーウイルス(第1相試験)、ヒト免疫不全ウイルス(第1相試験)、およびサイトメガロウイルス(第3相試験)を含む、複数の潜伏性ウイルスに対する臨床候補薬を開発中であるという。

●mRNAによりコードされるタンパクに基づく、オンコロジー、循環器疾患、自己免疫疾患、および希少遺伝疾患分野での治療薬開発

●mRNAによりコードされるゲノム編集酵素に基づく治療薬開発

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