内閣府戦略的イノベーションプログラム「スマート物流サービス」プロジェクトは、セブンイレブンジャパン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ3社と連携し、各社の物流センター、ならびに店舗へのチェーン横断的な共同物流の実証実験を実施すると発表した。
1.背景と目的
コンビニエンスストアは全国で約58,000店舗あり、駅前の商業施設や大学、病院など様々な施設に展開するほか、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンは災害対策基本法に基づく指定公共機関にも指定され災害時においても重要な役割を果たすなど、社会インフラになっているという。
そのため、安定的に商品を供給するための物流網の維持・構築は非常に重要であるとのことだ。
昨年度、東京都内の湾岸エリアで大手コンビニ3社の共同配送の実証実験を実施したが、今回は店舗密度が都市部よりも低い地方部において、「①コンビニの配送センター間の物流の共同化」と「②遠隔地店舗(買い物困難地域)の配送の共同化」の実証実験を行うという。
この取り組みは、物流を効率化することでの買い物困難者対策、フードマイレージの削減、運行トラック数の減少、温暖化効果ガス排出量の削減を目的としている。
2.コンビニ共同店舗配送の実証について
今回は、北海道の函館エリアにて、2022年2月21日~1週間の間で、①コンビニの配送センター間の物流の効率化と②遠隔地店舗(買い物困難地域)の配送の共同化の2つの実証を行うとのことだ。
①配送センター間の物流の効率化
コンビニエンスストアの物流では、多くの在庫を持つ基幹センターと遠隔地にあるサテライトセンター間で商品の横持ち配送が行われているという。今回は、自社のセンター間でしか実施されてこなかったこのセンター間の横持配送をチェーン横断的に実施。
北海道では、それぞれのチェーンの基幹物流センターが札幌近郊にあり、函館にはサテライトセンターがある。
今回の実証では、セブンイレブンとファミリーマート、セブンイレブンとローソンの2つの組み合わせで、札幌近郊の基幹センターから、函館のサテライトセンターまでの横持ち配送の共同化の実証を行うという。
これは、取り組むコンビニチェーンの物流コストの削減につながるだけではなく、トラック配送の効率化による温室効果ガス排出量の削減にも貢献する取り組みであるとのことだ。
②遠隔地(過疎地域等)における店舗への商品配送の共同化
物流効率があまり良くない遠隔地(過疎地域等)における店舗への商品配送の共同化の効果測定(2020年度は都市沿岸部であったため)を行うという。
今回は、函館エリアの遠隔地にて、ローソンとセブンイレブンの組み合わせで共同化した店舗配送を実施。昨年度よりも、より社会実装に近い取り組みであるとし、遠隔地・過疎地の店舗への配送効率の向上、買い物困難者対応などが期待できるとのことだ。
函館から南西エリア7店舗で共同配送を実施(セブンイレブン2店舗・ローソン5店舗)
3.今後について
今回の実証実験の結果も踏まえ、SDGsの視点も持ってコンビニ業界における新しい物流の形を、コンビニエンスストア各社と、サプライチェーンを構成するステークホルダー全体で検討していくという。
また、より社会実装に近い形での実証であることから、コンビニ各社とも連携して、流通経済研究所は効果のある取り組みについては、2022年10月~の社会実装を目指して推進していくとのことだ。
なお、内閣府戦略的イノベーションプログラムとは、総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設するプログラムであるという。
同プログラムは13のテーマで実施されており、同実証実験はそのうちの「スマート物流サービス」の研究開発の一環として実施されるもの。
スマート物流サービスは、サプライチェーン全体の生産性を飛躍的に向上させ、世界に伍していくため、生産、流通、販売、消費までに取り扱われるデータを一気通貫で利活用し、最適化された生産・物流システムを構築するとともに、その社会実装を目指すものであるとのことだ。