ヤマハ発動機は、2022年から2024年までの3か年における新中期経営計画を策定したと発表した。

同社は、企業目的「感動創造企業」のもと、2030年に向けて「Art for Human Possibilities~人はもっと幸せになれる~」という長期ビジョンを掲げ、成長戦略と基盤強化を進めている。

2022年から始まる新中期経営計画では、これらに加えサステナビリティ対応を強化するという。

コア事業の稼ぐ力を強め、サステナブルな社会に貢献する新規事業・成長事業に投資し、デジタルと共創の加速で成長性を高めることを基本方針とし、企業価値を向上させていくとのことだ。

事業ポートフォリオ

新中期経営計画では、売上高成長率と投下資本利益率により事業の位置づけを明確化し、経営資源を適正に配分するポートフォリオマネジメントを進めるという。

新規事業と成長事業を戦略事業領域として、将来のコア事業に育てるために経営資源を積極的に配分するとのことだ。

戦略事業領域

【新規事業】

長期ビジョンでは、「Rethinking Solution」を注力領域の1つにしているという。同社がこれまで培った技術・知見とパートナーとの共創活動で、ヤマハらしい新価値を創造し、社会課題解決に貢献する事業開発を加速させるという。

モビリティサービスでは、インド、ナイジェリアに新会社を設立し、現地協業でアセットマネジメント事業を拡大するという。

低速自動走行では、モノ輸送の事業化と、ヒト輸送の事業性の検証を進めるとのことだ。特定条件下での自動運転技術の確立により、物流の省人化と公共交通機関にアクセスできない地域の移動課題の解決を目指すとしている。

医療・健康分野、農業自動化については、2030年までの売上貢献を目標に事業化に向けた取り組みを進めるという。

【ロボティクス事業(成長事業)】

デジタル社会の基盤を支えるロボティクス事業は、成長する市場で事業規模と領域をさらに拡大するため、商品力、生産能力、営業体制を強化し、成長を加速させるという。

また、前中期で同社グループに加わったヤマハロボティクスホールディングスとのシナジー効果を高め、さらなる収益力を向上させるとのことだ。

【SPV事業(成長事業)】

世界的な新型コロナウイルス感染症のまん延により、人々の行動様式が「より近場へ」「密を避けて」に大きくシフトし、小型パーソナルモビリティに対する需要が急増している。

また、環境意識の高まりにより電動モビリティにも関心が集まっている。この市場ポテンシャルに対し、同社ではe-Kitのカスタマイズと完成車ニューモデルの投入で、市場成長以上の規模拡大により、売上高の倍増を目指していくという。

コア事業領域

【二輪車事業】

需要が回復する新興国市場でプレミアム戦略を推進し、収益性の向上に取り組むという。アセアン、インドでは、今後10年で急速に拡大する上位中間層をターゲットと位置づけ。

そして、プレミアムセグメントへの魅力的な商品の提供と、デジタルとリアルを融合した顧客との強い絆づくりを進めるとのことだ。

【マリン事業】

提供価値拡大と高収益体質の維持・強化を図るという。大型船外機のラインナップ拡充と販売比率の拡大、生産能力の増強により事業競争力を高める。

また、米国のR&D機能拡充によりコネクティッド技術を活用したシステム開発を加速させ、顧客へ安全・快適なマリンライフを提供する「マリン版CASE」戦略を推進するという。

財務戦略(経済的価値を高める)

2024年度の売上高2.2兆円以上(年平均売上高成長率7%以上)、3年平均営業利益率9%以上を目指すとのことだ。「効率性」については、資本コスト以上のリターンを継続的に創出し、ROE15%水準、ROIC9%水準、ROA10%水準(いずれも3年平均)を目標とする。

株主還元については、「業績の見通しや将来の成長に向けた投資を勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当を行う」ことを基本方針とし、キャッシュ・フローの規模に応じて機動的な株主還元も実施。

コア事業・戦略事業・基盤構築に4,800億円の資源を配分するとともに、株主還元は自社株買いも含め総還元性向40%(中期経営計画期間累計)とする。

非財務戦略(社会的価値を高める)

【持続的な社会への貢献】

企業活動における自社のCO2排出量の削減に向け、省エネ・再エネ設備を10か国以上で導入するとともに、2022年にCO2フリー電力を国内事業所から採用していくという。

製品使用などに関わるCO2排出量については、プラットフォーム戦略によるEV化の加速に加え、多様なパワートレイン(動力源)に対応した開発を推進。また、新たに設立する環境ファンドを通じた技術・ビジネスモデルの探索活動を加速させるとのことだ。

【人とつながる、伸びやかな企業の実現】

安心・安全な移動の実現に向けては、安全運転支援装備の拡充、技量向上のサポート活動に取り組むという。

さらに、生涯を通じたヤマハファンを創造するため、DX戦略を推進し、世界中の顧客とのつながりを広げていくとしている。そして、人財戦略では、社員エンゲージメントを重要な指標として取り入れ、ダイバーシティ&インクルージョンと人財育成を進めるとのことだ。