JR東日本は、ドライバレス運転実現に向けた開発を推進すると発表した。
同社では、変革のスピードアップを目指し、技術イノベーションに取り組んでいる。
その中で、列車の安全性向上や将来のドライバレス運転で必要とされる技術開発として、車両前方にステレオカメラを搭載して障害物をリアルタイムで自動検知するシステムをJR東日本研究開発センターの先端鉄道システム開発センターが開発しているとのことだ。
これまでは、車両に適したカメラの開発や画像処理の精度向上のため、首都圏で走行試験を行っていたが、2022年度にはカメラと画像処理装置の小型化開発を行い、走行試験を実施するという。
その後、2023年度から営業列車へ搭載して通常走行時のデータの蓄積、機能改善を継続することで、同システムを乗務員の運転支援や将来のドライバレス運転に適用することを目指すとしている。
1.開発の目的・背景
乗務員を支援するためのシステムや、将来のドライバレス運転など次世代の運転のあり方を考えたときに、安全確保の手段として車両前方の障害物を事前に検知する必要がある。
このためJR東日本では、ステレオカメラを用いた障害物検知システムの開発を行っているとのことだ。
2.障害物検知システムの特徴
■車両の前方に搭載した2台のカメラ画像から、画像処理装置がステレオカメラの技術を用いて画像解析を行い、物体までの距離を計算することにより、列車が走行する線路内の障害物をリアルタイムに検知。
■自動車などにおいて前方の障害物検知システムは実用化されているが、鉄道車両の場合、列車を停止させるまでの距離が自動車と比較して長いことから、より遠方の障害物を検知する必要がある。
開発したカメラおよび画像処理装置を用いた走行試験において、遠くまで撮影した画像を解析することにより物体までの距離が計算できることを確認しているとのことだ。
■鉄道車両に適した専用カメラを開発し、車両の揺れによる影響が少ない画像を得ることができ、障害物の誤検知が少なくなったという。また、トンネルや夜間など、明るさの変化に対応できる画質調整も可能に。
カメラと画像処理装置で機能を分担することにより、障害物を検知する処理速度が向上したという。
■同システムをMUE-Train(Multipurpose Experimental Train(多目的試験車)209系電車を改造した在来線用試験電車)や、京浜東北・根岸線の車両に搭載し、2020年2月から本線上で走行試験を行っている。
試験では、カメラや画像処理装置の性能調整を行い、首都圏において車両前方の障害物検知が可能なシステムになるよう開発を進めているとのことだ。
3.今後の予定
首都圏におけるさまざまな場所での試験を行い、さらなる性能向上に向けた開発を継続することで、同システムを安全性向上につながる乗務員の運転支援やドライバレス運転に適用することを目指していくとしている。