JALは、航空業界として世界初となるトランジションボンドの発行を決定した。
トランジションボンドとは、パリ協定に整合的な長期目標の実現を戦略とする企業が、脱炭素社会への移行(トランジション)に資する取り組みを資金使途として発行する社債であり、「SDGs債」の一形態であるという。
同社債は、JALにとって初めての「SDGs債」の発行であるばかりでなく、航空業界として世界初のトランジションボンドの発行となる。
また、同社債は経済産業省の「令和3年度クライメート・トランジション・ファイナンスモデル事業」に係るモデル事例に本邦航空業界で初めて選定されていることに加え、適合性評価に関するセカンド・パーティ・オピニオンは世界的な第三者評価機関であるSustainalyticsから取得しているとのことだ。
JALは、同社債の発行によって調達した資金を活用し、航空運送事業におけるトランジションの推進と最終的な脱炭素化に向けた取り組みをさらに強力に推進していくという。
1.同社債発行にいたる背景
JALは、足許のコロナ禍を乗り越え、ポストコロナにおける環境変化に適応し、持続的な成長・発展を実現するために、2021年5月に「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」を策定。
この中期経営計画では、大きく時代が動き価値観が変わるなかで、「安全・安心」と「サステナビリティ」を未来への成長エンジンとして、2030年に向けたJALグループのあるべき姿である「JAL Vision 2030」の実現に向けて、「事業戦略」「財務戦略」に加え、「ESG戦略」を経営戦略の3本柱の一つとして設定。
社会全体で持続可能性を追求し、真の豊かさ、幸福を実現しようという機運が高まっているなか、JALグループは事業活動において持続可能な社会の実現を目指すべくESG経営を強力に推進し、2030年のSDGs達成を目指して取り組んでいる。
特に、航空機による移動は他の移動手段に比べて単位当たりCO2排出量が格段に多いことから、航空機からのCO2排出量の削減は社会からの強い要請であり、航空業界における最重要課題の一つであるとのことだ。
JALグループでは、CO2排出量の少ない省燃費性能の高い最新鋭の航空機への更新や、代替航空燃料(SAF)の搭載量拡大などにより、2050年の総排出量実質ゼロの目標達成を目指しているという。
2.同社債発行の目的
JALは、初めての「SDGs債」発行を通じて、航空運送事業運営において最大のCO2排出源である航空機からの排出量削減に正面から向き合う姿勢を明確に示したいと考えているという。
航空機からのCO2排出量削減には、航空機の省燃費化と、SAFの供給量確保および経済性の改善が大きな役割を果たす。SAFについては、脱炭素社会の実現を目指すステークホルダーと共にCO2排出量実質ゼロを目指していくとしている。
一方、航空機については、現在の技術では、電気や水素など、化石燃料を代替できる航空機は開発途上となっている。
そのため、将来の新技術の活用までの移行期間として、現有技術において最善の手段である最新鋭の省燃費航空機への更新を進めることが、航空会社が最も優先すべきトランジションに向けた取り組みであるとのことだ。
以上の理由から、今回「SDGs債」の起債に際して、同社は「省燃費機材への更新」を資金使途とするトランジションボンドの発行を選択したとしている。
今回の起債に際し、JALでは、資金調達面でもESG戦略に関する取り組みを推進していくため、「トランジションボンド・フレームワーク」を策定。
このフレームワークは、国際資本市場協会(ICMA)の定める「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック(Climate Transition Finance Handbook)2020」および「グリーンボンド原則(Green Bond Principles)2021」、金融庁・経済産業省・環境省の定める「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針 2021年5月版」、環境省の定める「グリーンボンドガイドライン2020年版」に則り策定している。
また、第三者評価機関としてグローバルな評価が高いSustainalyticsより、適合性評価に関するセカンド・パーティ・オピニオンを取得しているとのことだ。
3.同社債の概要
4.同社債で調達した資金の使途
JALは、このSDGs債で調達した資金はCO2排出量の大部分を占める航空運送事業に充当し、トランジションの実現に資するファイナンスを目指したいと考えているという。
なお、同社債の発行により調達した資金は、省燃費性能の高い最新鋭機材(A350・787など)への更新に関連する新規投資及び既存投資のリファイナンスに充当する予定。
省燃費性能の高い最新鋭機材への更新により、2050年のネット・ゼロエミッションに向け、中間地点である2025年度、2030年度のCO2削減目標の達成に向けた取組みを加速していくとのことだ。