集英社は、KADOKAWA、講談社、小学館とともに、クラウドフレア社に対し、海賊版コンテンツの公衆送信・複製の差し止めおよび損害賠償を求める訴訟を、東京地方裁判所に提起したと発表した。

なお賠償請求額は、一部請求として各社1作品、4作品合計で4億6,000万円。

原告となった出版4社はこれまで、顧問弁護団とともに、クラウドフレア社に対し、著作権侵害が明らかな9つの海賊版サイトを具体的に示したうえで、対象サイトが違法に蔵置している侵害コンテンツについて、
・同サーバーを介した公衆送信の停止
・同社が日本国内に有しているサーバーにおける一時的複製(キャッシュ)の停止
・違法であることが明らかな海賊版サイト運営者との契約解除
などを再三、求めてきた。

クラウドフレア社からは最終的に、対象サイトについて必要な措置を取ったとの回答があったものの、同社はどのサイトに対して、どのような措置を取ったのかについて何ら具体的な説明をしようとしないという。

何より対象サイトが従前通りの通信速度を維持したまま活動を続けている現状では、同社が効果的な対応を行ったと捉えることは困難であるとのことだ。

また、専門家による技術的な検証によっても、対象の海賊版サイトにおいて引き続き同社のサービスが利用され、キャッシュが行われている蓋然性が高いことがわかっているという。

以上の経緯と現状認識から、出版4社は、クラウドフレア社に対し、海賊版コンテンツの公衆送信・複製の差し止め及び損害賠償を求め、提訴に至ったとしている。

クラウドフレア社は世界規模でサービスを提供するコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)事業者の一社であり、2021年12月現在、アクセス数の多い悪質海賊版サイト上位10サイトのうち9サイト(当月だけでなく多くの期間、上位10サイトの半数以上)にサービスを提供している。

CDN事業者は、世界各所に大容量のサーバーを設置し、契約先サイトのコンテンツをそれらサーバーに一時的に複製(キャッシュ)してユーザーからのアクセス先を分散すると同時に、ユーザーの最寄りのサーバーからデータを配信することで、当該サイトの通信速度を確保するなどの役割を担っている。

各国のCDN事業者が展開しているそのサービス自体は、快適なインターネット環境の保持に欠かせない公共的サービスのひとつと認識されており、大手CDN事業者は多くの場合、契約締結時にサイト運営者の身元確認を適切に行い、かつ当該サイトが違法・不当なコンテンツ配信を行うことのないよう、様々な手段を講じているとのことだ。

一方、クラウドフレア社のCDNは、無料サービスの利用期間が限定されておらず、本人確認も不十分なまま契約が可能。

そのため、サイト運営者は同社サービスを利用することによって、CDNサービスのメリットを最大限享受しつつ、オリジンサーバー提供者やそのIPアドレスを秘匿することが可能。

こうした特性から、身元の特定を嫌う海賊版サイト運営者の多くが、クラウドフレア社のCDNサービスをこぞって利用するようになっているとのことだ。

海賊版サイトが利用するオリジンサーバーほかの通信インフラは、運営コストの観点からも、月間1億を超えるアクセスをこなせるような能力を到底有していないという。

従って、クラウドフレア社によるCDNサービスの提供が停止されれば、多くの悪質海賊版サイトの運営が不能、または極めて困難になると考えられる。

言い換えると、クラウドフレア社のCDNサービスは、多くの悪質海賊版サイトの運営にとって不可欠のものになっていると考えられるとのことだ。

原告4社と顧問弁護団は、今回の訴訟を通じ、海賊版対策への協力要請に対してクラウドフレア社がこの数年間示してきた非協力的な姿勢が、通信インフラという公共的サービスを担う企業としてふさわしいものかどうかについても、社会に問うていきたいと考えているという。

海賊版サイトの運営は犯罪行為です。集英社は、作者が心血注いで創作したコンテンツを預かり、適正な形で流通させるという出版社の役割を果たすため、引き続き侵害行為に対しては、刑事・民事含め厳正に対処していくとしている。