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帝国データバンクは、2021年度のカラオケ市場の見通しと今後の展望について調査・分析を行った。調査結果の要旨は以下となる。
●2021年度のカラオケ市場、コロナ前から6割減の1,400億円予想に
●復調傾向だった繁華街の「ナイト需要」 まん延防止などで再び消失の可能性高まる
●ライブビューイング、テレワークなど「歌わないカラオケ」への転換急ピッチ 離れた客足呼び戻せるかが今後のカギ
コロナ禍で離れた客足が戻らない。帝国データバンクの調査では、2021年度のカラオケ市場(事業者売上高ベース)が1400億円程度の見通しとなり、前年に続き大幅な減少となることが分かったという。
この規模は、新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年度)から6割近い減少で、ピーク時から3割台と低水準での推移となる。
全国カラオケ事業者協会の調査でも、2020年度のカラオケボックス店舗数は感染拡大前の19年度から908店減の8436店、過去最大の下げ幅となる1割減と厳しい状況だった。
こうしたなか、東京都などで適用されたまん延防止等重点措置などで、深夜帯を中心に「回復してきたサラリーマン需要が落ち込むのは痛い」(都内カラオケ店)など、繁華街の店舗を中心に飲み会後の二次会・三次会、「ナイト需要」が見込めず、売り上げが大きく落ち込む可能性が高まったとのことだ。
もともと、都心部を中心に広がったテレワークに加え、コロナ禍を機に高まった忘新年会や会食の自粛・敬遠ムード、スマホゲームをはじめとしたアミューズメントの多様化といった逆風が吹いており、当面の間、苦しい経営を余儀なくされる状況が続きそうであるという。
回復遠いカラオケ市場、飲み会後の「ナイト需要」消失打撃
2022年1月までの企業業績(予想を含む)から、2021年度のカラオケルーム市場を推計したところ、1,400億円前後にとどまることが分かった。
前年度比で4割超の急減となった20年度に比べると、21年度の減少率は3割ほどと低くなったものの、それでも20年度に続いて大幅な減少を余儀なくされるという。
この結果、21年度市場はコロナ前となる19年度の3,482億円の4割程度と半分以下の水準となるほか、直近でピークだった11年度の3,837億円からは3割台になるなど厳しい内容が見込まれているとのことだ。
2021年度も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返し発出され、休業や営業時間短縮等の活動制限を余儀なくされたことでカラオケルームの稼働率は大きく低迷した状態が続いたという。
それでも、郊外のロードサイド店などでファミリー層などを中心とした日中のレジャー需要には回復がみられた企業が多くあるほか、昨年秋以降は緊急事態宣言の解除により、駅前繁華街といった都市部店舗で「飲み会」後の二次会・三次会目的での来客も復調するなど明るい動きがあったとのことだ。
コロナ前の水準には及ばないものの、書き入れ時となる年末年始にかけては小規模な忘新年会需要も発生した。
足元でも、これまで抑えられていた消費が一気に爆発するコロナ後の「リベンジ消費」に期待感を持つカラオケ店も少なくなかった。
「コロナが落ち着いたらやりたいこと」 カラオケは旅行や外食などに次いで8番目
オトナ女子向けメディアアプリ「LOCARI」を運営するWondershake社が2021年1月に明らかにした、「コロナが落ち着いたらやりたいこと」を尋ねたアンケート調査では、カラオケは旅行や外食などに次いで8番目に高く、帰省などを上回る水準となるなど、底堅い需要があったためだという。
こうした動きも背景に、積極的な事業拡大や先行投資を進める企業もあったとのことだ。
駅前繁華街を中心に新規出店を継続してきた「まねきねこ」のコシダカHDは、2021年9-11月のカラオケ事業売上高が前年同期比3.0%減の59億4,800万円となり、厳しい経営環境ながらも小幅の減少にとどめたとしている。
ただ、レジャーの多様化に加え、人流の変化などから来客数が想定を下回るといった経営環境を背景に、コロナ前の6割程度と弱めの回復を想定している企業も多いという。
カラオケ「ビッグエコー」を展開する第一興商のカラオケ・飲食店舗事業は、「コロナ禍によって多くの店舗で休業・時短営業を余儀なくされた」(同社)ことを背景に、2021年4-9月時点の売上高は前年同期比43.4%減の63億3,100万円であった。
ライブビューイング・テレワークプランは好調「歌わないカラオケ」への転換、急ピッチで加速
カラオケでの集客が難しいなか、カラオケ各社では「歌うだけの場所」からの脱却、通常のカラオケ利用以外の需要取り込みに注力する動きが加速している。
ブラザー工業傘下で、カラオケ「JOYSOUND」を展開するエクシングは、防音性能が高いカラオケ個室の特徴を生かし、大音量でライブ音楽や映像を楽しむことが可能な「みるハコ」や「楽器カラオケ」などの活用事例を紹介し、消費者のニーズに応えるエンターテインメント設備を充実させた。
また、テレワークが増えたことを背景にWi-Fi通信の完備をはじめ、プロジェクターや電源タップ、HDMIケーブルの無料貸し出しなどビジネスユースをターゲットにしたテレワークプランを充実させるカラオケ店[飯島 大介1] もあり、「利用状況は上々」との声が聞かれるという。
コロナ禍の影響は今期一杯影響するとみられるなか、従来のナイト・アミューズメントユース中心のイメージを転換する取り組みで、離れた客足をいかに呼び戻すことができるかが、22年度以降の市場動向を占うカギとなるとしている。