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企業レビューサイト大手、2022年「働きたい企業ランキング」
日本でも多くの就職・転職希望者が参考にする企業レビューサイト。海外の労働市場でも必須の情報源となっている。
様々なレビューサイトが存在するが、欧米で人気の高いサイトの1つとして挙げられるのが「Glassdoor」だ。同社が発表する企業レビューのまとめや労働市場に関するレポートは、大手メディアで取り上げられることも多く、就職・転職トレンドを占う上でも重要な情報源となっている。
そのGlassdoorがこのほど、2022年の「働きたい企業ランキング・トップ100(米国版)」を発表した。
レビューでの評価は、投資ファンドのデューデリジェンスにおける参考要素とされるなど、就職・転職希望者だけでなく、投資家や企業経営者にとっても無視できないものとなっており、各方面から注目されている。
どのような企業が上位にランクインしたのか、その順位をお伝えするとともに、高評価・低評価の理由も探ってみたい。
GAFAMの順位?
まず、日本でも広く知られるテック大手GAFAMの順位を見てみたい。
GAFAMの中で、最も順位が高かったのは7位のグーグルだ。次いで、マイクロソフトが28位、メタ(旧フェイスブック)が48位、アップルが56位にランクイン。一方、アマゾンは100位圏外の結果となった。
各企業どのような点が高評価・低評価の理由となっているのか。
グーグルの高評価ポイントとして最も多かったコメントが「素晴らしい職場と優秀な人材」というもの。現時点で、同様のコメントが790件投稿されている。次いで「全体的に良い職場」が652件、「優秀な人材と素晴らしい企業文化」が601件、「福利厚生が非常に良い」が591件、「平均より高い給与」が531件となった。
一方、同社の低評価の理由としては、「大企業であり、より企業的になっている(Large company; becoming more corporate)」というもので337件投稿されている。おそらく、大企業特有の課題が増えているという意味になるのだろう。このほか「仕事上のストレスが非常に大きい」(167件)、「一部にフリーライダーがいる」(147件)などのコメントが投稿されている。
マイクロソフトに対する社員評価
マイクロソフトはどうか。
高評価コメントとしては、「優秀な人材に囲まれた競争的な環境」が最も多く、2073件投稿されている。このほか「医療費が無料になるなど充実した福利厚生」が1992件、「素晴らしい福利厚生と職場環境」が1382件、「様々な形態で仕事ができるフレキシブルワーク制度」が790件、「正社員の高い給与」が766件あがっている。
低評価の理由としては、「人事評価制度の公正性に課題がある」(552件)、「東海岸の大企業」(445件)、「ミドルマネジメントが時々混乱している」(366件)、「大組織特有のヒエラルキー」(340件)などのコメントが見受けられる。
メタに対する満足度
メタに関しては、以下の高評価・低評価コメントが投稿されている。
投稿数が多い高評価コメントは、「世界中から集まった優秀な人材と働ける環境」(447件)、「素晴らしい仕事と福利厚生」(378件)、「ダイナミックな仕事環境」(341件)、「仕事に真摯に取り組む人が多い」(239件)、「通信代控除などの福利厚生制度」(239件)など。
一方低評価の理由として、「時折長引く冗長な仕事」(153件)、「短期間で大企業に急成長した故の課題」(89件)、「Move fast文化の消失」(86件)、「他社に比べ、ワーク・ライフ・バランスを取るのが難しい」(65件)というコメントが投稿されている。
アップル社員の高評価・低評価コメント
アップルに関しては、以下のコメントが多かった。
高評価コメントは、「充実した福利厚生と給与」(2214件)、「優秀な人材と素晴らしい仕事環境」(1008件)、「福利厚生が充実した素晴らしい企業」(972件)、「素晴らしい企業文化」(776件)、「素晴らしい仕事環境と給与」(757件)と、重複する内容が多いが、福利厚生、給与、仕事環境の良さが高評価理由になっていることが分かる。
一方低評価の理由としては、「一部プロジェクトでの長時間労働」(734件)、「一定でないリテール時間」(422件)、「ワーク・ライフ・バランスの欠如」(302件)、「昇進が非常に難しい」(242件)、「秘匿情報による社内分断」(229件)などがあがっている。
GAFAMに関しては、全体的に、福利厚生、仕事環境、給与の良さが高評価理由となっている一方で、大企業的なヒエラルキー、動きの遅さ、ワーク・ライフ・バランスの困難さなどが低評価点として指摘されている。
1位は、注目のメタバース関連企業
Glassdoor 「働きたい企業ランキング」1位には、どの企業がランクインしたのか。
1位だったのは、メタバース関連企業として注目を集める半導体開発企業NVIDIAだ。
高評価コメントとして最も多かったのは、「ワーク・ライフ・バランスが充実している」というもの。現時点で273件のコメントが投稿されている。
このほか「先端テクノロジーに関われる」(237件)、「エキサイティングな仕事環境と企業文化」(221件)、「素晴らしいコミュニティと仕事環境」(205件)などが高評価の理由となっている。
低評価理由としては、「ワーク・ライフ・バランスに改善の余地あり」(296件)、「イノベーション速度が異常に速い」(222件)、「チームによって長時間労働がある」(64件)、「労働時間がフレキシブルではない」(35件)などがあがっている。
このほか、トップ10には、2位HubSpot、3位ベイン・アンド・カンパニー、4位eXp Realty、5位Box、6位ボストン・コンサルティング・グループ、8位Veterans United Home Loans、9位lululemon、10位セールスフォースがランクイン。
カンサス大学の2015年の調査によると、社員の満足度と企業のパフォーマンスには、統計的に有意な因果関係があることが判明。このほかにも、企業レビューサイトに反映される社員満足度と企業の時価総額などとの相関関係を示す研究はいくつか存在する。
企業レビューの件数やコメント数は毎年増加しており、それに伴い精度も高まっていくものと思われる。今後、就職・転職においてますます重要なツールとなっていくはずだ。
文:細谷元(Livit)