順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの研究グループは、都内在住高齢者を対象に骨粗鬆症に関する調査を実施し、中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動習慣がある女性では骨密度が高く、骨粗鬆症のリスクが低いことが明らかになったことを発表した。

同成果は骨粗鬆症のリスク低減となる運動を実施すべき重要な時期を示唆し、日本における介護予防や健康寿命の延伸の観点から極めて有益な情報であると考えられるとし、同研究は「Journal of Clinical Medicine」のオンライン版で公開されたとのことだ。

同研究では、東京都文京区在住高齢者のコホート研究「Bunkyo Health Study」に参加した65~84歳の高齢者1596名(男性681名、女性915名)を対象とし質問紙調査を実施。

中学・高校生期に運動部活動をしていたかどうかで中学・高校生期の運動習慣の有無を、現在運動習慣があるかどうかで高齢期の運動習慣の有無をそれぞれ定義したという。

次に、それらの運動習慣の有無の組み合わせで4群に分類し骨密度や骨粗鬆症の有病率を比較。その結果、女性の股関節の骨密度は、中学・高校生期および高齢期の運動習慣が両方ある群では、他の3群と比べて有意に高いことが明らかになったとのことだ。

高齢女性における4つの運動グループ間の股関節の骨密度

また、これと同様に女性で中学・高校生期と高齢期の両方で運動習慣を有している群は、両時期運動していない群に比べて骨粗鬆症のリスク(オッズ比※)が35%低下していたという。

その一方で、男性では骨粗鬆症の割合が女性と比べ低く、過去の運動歴との有意な関連性も認められなかったとのことだ。

高齢女性における運動習慣(4群)と骨粗鬆症(腰椎)の有病率との関係

同研究では、女性は中学・高校生期の運動と高齢期の両方の時期に運動することにより骨粗鬆症のリスクを低減する可能性が明らかとなった。

日本の女性においては、現在、中学・高校生期に運動を全く行わない人と、活発に行う人の「2極化」が顕著に進んでおり、その原因として現在の運動部活動などが女性の運動のニーズに必ずしも合っていないことが指摘されている。

そのため、競技スポーツでない「ゆるい」スポーツの普及の推進が期待されるという。

また同調査に参加した高齢者は、カルシウムやビタミンDの摂取量が国の推奨量に達していない人も多く、今後栄養摂取の面でも改善が必要と考えられるとしている。

同研究により、中学・高校生期だけでなく高齢期の運動も骨に良い影響を与えうることが示唆されたが、それぞれの時期にどの運動をどれくらい行うことが必要かなどまだ不明の点が多く残されているとし、今後さらなる研究を進めていくとのことだ。

(※)オッズ比:ある疾患などへのかかりやすさを群間比較した尺度のこと。オッズ比が1より小さいとかかりにくいことを意味する。

<参考>
順天堂大学『女性の骨粗鬆に関する調査