コロナ禍、世界各地で多くの雇用が失われた。

たとえば米国では、2020年だけで937万人(net)もの人が失業、2009年のリーマンショック時の505万人(net)を大きく超え、雇用統計が残る1939年以来で最悪の年になったといわれている

一方、労働市場は2021年後半頃から回復の兆しを見せており、2022年も引き続き回復基調となる見込みだ。

しかし現在の労働市場の様相はコロナ前と少し変化しており、求職者にもその変化への適応が求められる。

2022年海外の労働市場では、どのような変化が起こっているのか、その動向を探ってみたい。

2022年、完全雇用状態に近づく米国労働市場

2020年に1000万人近い失業者が出た米国だが、2022年はパンデミック前の水準に戻り、完全雇用に近い状態になる可能性がある。

米U.S.Newsが報じたところによると、米国の労働市場では2021年7月に単月で109万人の雇用が生まれた。7月以外の月も順調に雇用が増えており、直近の月間平均雇用数は53万7000件となっている。

これに伴い2021年1月に6.3%だった失業率は、同年末時点では3.9%まで低下した。パンデミック前、2019年通年の米国失業率は3.67%だった。着実にパンデミック前の水準に戻りつつある

他の数字も、労働市場がパンデミック前の水準に戻りつつあることを示している。

たとえば現時点の米国大卒者の失業率は2.1%。パンデミックの影響が出始める前の2020年2月の1.9%まで、0.2ポイントのところまで近づいている。

需要の増加率が顕著な職業トップ10

2022年1月17日に発表された国際労働機関(ILO)による雇用情勢レポートによると、2022年世界全体の平均失業率は5.9%と前年から0.3ポイント改善する見込みという。米国以外でも、世界的に労働市場が回復基調であることを示す数字だ。

雇用が増えている中、どのような職種の需要が高まっているのか気になるところ。

ビジネスSNSリンクトインの最新分析(2021年12月)から、世界的に見て、どのような職種需要が高まっているのか見ていきたい。

リンクトインが2021年4〜6月期と7〜9月期の求人増加率を分析したところ、最も伸びているのは「テクノロジースペシャリスト」であることが判明。7〜9月期は、前期比で171%の増加となった。

テクノロジースペシャリストを含めトップ10には、以下の職種がランクイン。2位「オートメーション・テスト・アナリスト」(166%増)、3位「開発チーム・リード」(160%)、4位「カスタマーサービス・アシスタント」(151%)、5位「サービス担当者」(147%)、6位「デザイン・コンサルタント」(134%)、7位「パーソナルショッパー」(111%)、8位「コミュニケーション・マネジャー」(96%)、9位「ファイナンス・コンサルタント」(91%)、10「ケーキデコレーター」(83%)。

リンクトインのチーフエコノミスト、カリン・キンブロウ氏は、テクノロジースペシャリストのほか、トップ3にテクノロジー関連の職種がランクインした理由として、コロナ禍におけるデジタルトランスフォーメーション需要の高まりがあると指摘している。

2位の「オートメーション・テスト・アナリスト」とは、ソフトウェア開発の品質保証試験の自動化を担当する職種。市場は急速に拡大しており、今後も関連職種の需要は高い状態を維持するものと思われる。Markets and Marketsによると、オートメーション・テスト市場は、2021年の207億ドル(約2兆3743億円)から2026年には499億ドル(約5兆7236億円)に拡大する見込みだ。

需要の絶対数が大きな職種トップ10

リンクトインは求人増加率だけでなく、7〜9月期に求人数(絶対数)が多かった職種についてもまとめている。

トップ10にランクインしたのは、1位ソフトウェアエンジニア、2位セールス、3位Javascript開発者、4位看護師、5位プロジェクトマネジャー、6位DevOpsエンジニア、7位フルスタックエンジニア、8位Javaソフトウェアエンジニア、9位リテールセールス、10位プロダクトマネジャーと、絶対数でもテクノロジー関連職種需要の高さが目立つ結果となった。

パンデミックの影響やテクノロジー関連職需要の増加で、一部では既存の雇用プロセスを見直す動きが加速しており、新たな取り組みも見られるようになってきている。

たとえばVenturebeatが伝えたCoderPadとCodinGameのレポートによると、テクノロジー人材の雇用プロセスにおいて、履歴書(CV)を使わないというリクルーターが57%に上ることが判明。また人材プールを広げるために、リモートワーク前提で、海外の人材にアプローチするという割合も40%と高めであることが明らかとなった。

2022年は、NFT、メタバースなどの新分野への投資の拡大とともに、新たな雇用が生まれる可能性も高い。いち早くパンデミック前の水準に戻ることを期待したい。

文:細谷元(Livit