エイチ・アイ・エス(以下、HIS)は2021年12月24日付「同社連結子会社における取引に関する調査委員会からの調査報告について」で発表したとおり、同社連結子会社であるジャパンホリデートラベルおよびミキ・ツーリストにおけるGo Toトラベル事業のルールに適合しない取引に関する調査委員会の調査報告書を受領したと発表した。

その後、調査委員会からの意見・提言等も踏まえ、組織運営上における問題発生の原因の特定および再発防止に向けたガバナンス改善を策定し、本日、監督官庁である観光庁に改善報告書を提出。

要旨は下記のとおり。

今般のGo Toトラベル不正受給問題に係る調査の過程においては、Go Toトラベル事務局による宿泊実態等に関する調査が2020年12月から開始されていたにも関わらず、その状況に関しては、長期間にわたり上記連結子会社2社から親会社に対する報告がなされておらず、また、親会社としてもそれを把握することができていなかったとのことだ。

各社のコンプライアンス意識の乏しさや、親子間の適切な情報共有が行われていなかったという同社の関係会社管理体制については非常に反省すべき点であると認識しているという。

同社としては、こうした事実の発生を重く受け止め、下記再発防止に向けた改善措置を着実に実施し、より良いグループ運営を実行し信頼回復に努めていくとのことだ。

1.疑惑(問題取引)の発生原因の分析

(1)親会社(同社)の側に由来する原因
子会社の自立性を尊重する企業文化が子会社の問題取引の早期把握・是正への取組みを遅らせた可能性があるほか、同社グループの傘下に入った企業に対する同社グループ理念や行動規範の浸透が不足していた点が、問題取引の適切性に疑問を感じる意識の欠如につながった可能性があると考えているとのことだ。

また、関係会社管理体制について、子会社役員として任命した同社役職員が多重兼務となるなか、子会社プロパー役員との意思疎通の機会が不足していたことや、関係会社の業務執行に対するコンプライアンス上の観点からの牽制が十分に機能していなかったとしている。

さらに、助成金の受給に着目した内部監査の監査項目の設定がなされておらず、内部通報制度の適用範囲や存在周知も十分ではなかったという。

(2)子会社の側に由来する原因
ミキ・ツーリストについては、コンプライアンス精神の欠如、社長への権限集中・牽制機能の不全等が原因と考えており、ジャパンホリデートラベルについては、社長の業務執行に対する不十分な監視・監督、コンプライアンス意識の不足、関係会社管理体制の不十分性や内部通報制度の不十分性等が原因と考えているとのことだ。

(3)紹介者・提案者の属性に由来する原因
案件を主導した紹介者(提案者)が同社元代表取締役の平林氏であった点も、案件の無謬性を無批判に信じ、問題点に異議を唱えにくかった背景と考えている。

2.再発防止に向けた改善措置(実施済みのものも含む)

(1)コンプライアンス意識の改革
同社のリスク・コンプライアンス委員会の活動を通じ、同社グループのコンプライアンス施策の実施、コンプライアンス意識の向上を図るという。
事務局としてのリスク管理室は、子会社役職員が、コンプライアンス違反が疑われる事案に遭遇した際の報告・相談窓口として機能。

また、経営トップがコンプライアンス遵守を発信するとともに、Go Toトラベル事業の趣旨の再確認を含むコンプライアンス研修を実施するという。さらに、グループ各社のマネジメント層との面談を実施し、コンプライアンス意識の確認を進めるとしている。

(2)各社取締役会による監督機能の強化
社長の業務執行に対する監視・監督機能を強化するため、各社取締役会における付議事項の見直しを実施するとともに、十分な検討時間や事前の情報共有、事後の進捗報告等により取締役会の審議の実質化・充実化を図る。

また、従前同社役職員からの役員任命が行われてこなかった子会社についての任命要否を再検討するとともに、現在の任命役職員の定期的な見直しを行っていくとのことだ。

(3)親会社による子会社管理の強化
前記のとおり、従前同社役職員からの役員任命が行われてこなかった会社(特に同社から見た孫会社の中で、グループ連結業績に与える影響が大きいと思われる会社)について任命要否を検討。

また、関係会社管理規程を見直して一定金額以上の経常的取引についても報告義務を課すほか、事前承認・報告ルールの周知徹底および事後チェックを通じて運用状況を改善していくとし、加えて、人材の採用・育成・確保等を含めた関係会社管理部門の体制の強化を図る。

(4)内部監査の強化
内部監査については、ITを活用したリスク分析の強化、監査部門の人員補充を含めた監査体制の強化並びに助成金受給に関する項目追加など監査項目の見直しを検討していくとしている。

(5)不祥事の早期発見のための取組み
内部通報制度をグループ横断型の制度とし、定期的に制度の周知を図る。また、グループ各社経営層に対する定期的なアンケートを通じてコンプライアンス意識の浸透や不正発生への抑止力を高めるという。

(6)その他の再発防止に向けた改善措置(IT統制について)
内部不正の早期発見や事後的監査の効率的実施、IT統制の観点から各種施策を実施していくとしている。