出光興産が幹事会社として実施する「常温、常圧下アンモニア製造技術の開発」が、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクト」の課題の一つとして採択されたと発表した。

事業期間は、2021年度から2028年度の8年間を予定。

脱炭素社会実現へ向け、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアは、エネルギーキャリアや発電・工業ボイラー用の新燃料として注目されているという。

しかし、現在の製造方法(ハーバー・ボッシュ法、以下、HB法)は、高温・高圧下で水素と窒素を反応させるため、製造に多大なエネルギーが必要となりCO2の排出が避けられないとのことだ。

また、HB法は原料の水素を石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料から取り出すため、原料由来のCO2も排出するという。

アンモニアは次世代のエネルギー源として有望視されているが、製造時のCO2排出量を抑制することが持続可能な社会を構築する上で課題となっているとのことだ。

同事業では、常温・常圧の温和な反応条件下でアンモニアを製造する新技術の確立とコスト競争力が高い量産化へ向けた技術開発を行い、アンモニアの製造工程におけるカーボンフリーの実現を目指すとしている。

技術開発にあたっては、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科の西林仁昭教授らが開発し、世界最高の活性を達成した「モリブデン触媒」(発表論文:Nature 568, 536–540 (2019))を応用。

「モリブデン触媒」が窒素ガスを活性化し、ヨウ化サマリウムが「水」と反応することで発生するプロトン(H+)および電子と反応することで、アンモニアを常温・常圧下で製造するという。

これは100年以上の歴史があるHB法に置き換わる可能性を持つ画期的な技術であるが、水と反応した後にヨウ化サマリウムの酸化物を大量に排出することが、社会実装への技術的な課題になっているという。

同事業は国立大学法人東京大学、国立大学法人東京工業大学、国立大学法人大阪大学、国立大学法人九州大学および国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で行い、高性能モリブデン触媒を活用した新規アンモニア製造技術の確立により商用規模でのグリーンアンモニアサプライチェーン構築に貢献することを目指すとしている。

【事業概要】

1.国立大学法人東京大学西林仁昭教授らが開発したモリブデン触媒を用い、水と窒素と電気から常温・常圧でアンモニアを製造する方法を確立する。

■体制:出光興産(幹事)、国立大学法人東京大学、国立大学法人東京工業大学、国立大学法人大阪大学、国立大学法人九州大学
再委託先・共同実施先:国立研究開発法人産業技術総合研究所、日産化学、東芝

■期間:2021年度~2024年度(予定)

2.開発された新規製造法の電解質膜面積を大きく(カートリッジ化)し、多層のカートリッジを組み合わせた実証試験でスケールアップデータを取り、実用化検証を行う。

■体制:出光興産(幹事)
■期間:2024年度~2028年度(予定)
【参考】NEDOグリーンイノベーション基金事業 特設サイト
  https://green-innovation.nedo.go.jp/