2021年も残すところあとわずか。今年はどんな一年だっただろうか。グーグルが毎年発表している「検索で振り返る1年」のランキングとともに、2021年に起きたことを振り返ってみよう。

グーグル「検索で振り返る1年」とは?

グーグルは毎年年末、前年と比べ、その年にトラフィック数が急増した検索ワードをランキングにして発表している。このランキングを見ると、その1年を通してどのようなトピックが世間を賑わせたのか、ひと目で知ることができる。ではさっそく、このランキングから、今年2021年がどのような年だったのかを月ごとに振り返ってみよう。

1月から12月のトレンドワードは?

1月には、世界で「アファメーション(肯定的な自己宣言)」というワードの検索が過去最多となった。なりたい自分に近づくために、「私には価値がある、私には愛されている」といった前向きな言葉を自らに投げかけること。コロナ禍で先の見通しが立たない中、不安を受け止め、立ち直ろうとする人が多かったのかもしれない。

2月には、「起業する方法」の検索回数が「仕事の見つけ方」の検索回数を上回った。このことから、多くの人が職を追われて雇用が期待できない中、生きていく術を模索しようとしたことが見て取れる。

3月には、Twitterの共同創設者でCEOのJack Dorseyがこの世で初めてのツイートを売りに出し、そのたった一件のツイートに3億2000万円という高値がついたというニュースをきっかけに、「NTF(非代替性トークン)」というワードが世の中を賑わせることとなった。

同じく3月には、「スエズ運河」が急上昇。オンラインショッピングへの需要が高まる中、スエズ運河で台湾船籍の大型コンテナ船エバーグリーンが座礁。国際物流の重要拠点であるスエズ運河を封鎖する形で挫傷したこの事故による世界物流への影響は甚大で、世界中の事業者や消費者が影響を受けた。

スエズ運河で座礁した大型コンテナ船エバーグリーン

4月には、世界中で「サステナビリティ」の検索回数が過去最大に達した。世界中の企業・個人・政府・教育機関が地球と社会の持続可能性の向上に取り組む中、4月の「アース・デー」や「アース月間」がきっかけとなり、多くの人が検索することになったことが伺える。

5月には、世界でいまだかつてないほど「メンタルヘルス対策」が多く検索された。5月は「メンタルヘルス月間」となっており、世界中で様々な機関や企業、団体がメンタルヘルスに関する意識を高め、偏見をなくすために多くのキャンペーンを行う月。2年弱という長期に渡って続くコロナの影響はメンタルヘルスに深刻な影響を与えており、多くの人がその対策を模索しようと検索した。

薄着になる機会が増える初夏の6月には、完璧なボディになるためのエクササイズ方法や新しいビキニをどう選ぶかといった話題が急増する。しかし、今年の6月には「ボディ・ポジティブ」の検索回数が世界で過去最多に達した。美しさは誰もが持っており、画一的な基準で測られるものではない。恥じることなく自分の身体を受け入れ、祝うこのムーブメントに賛同が集まっている。

同じく6月に、検索数が通常の5000%増となったワードは「近くのプライドイベント」。世界中の人たちがLGBT+Qコミュニティを祝福する方法を検索した。

7月には、「どこに旅行に行けるか」というワードの検索数がパンデミック前と比較して3倍に。コロナで様々な規制がかかる中、どこならば行けるのか多くの人が知恵を絞った。

同じく7月、世界で「愛してる 手話」の検索が過去最大に。人気K-POPアイドル「BTS」のメンバーが同月に発表した楽曲「Permission to Dance」のなかで、振付に手話を取り入れたことがきっかけ。これに対し、WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長が「世界に15億人いる聴覚障害者が音楽を楽しむ上で役に立つ」と感謝の意を伝えたことも話題となった。

BTSが所属するHYBE LABELがYouTube上で公開している「Permission to Dance」の公式動画

8月には、東京オリンピックにおいて、男子やり投げでインドのNeeraj Chopra氏が同国初となる首位のメダルを獲得したことで、「金メダル」がインドでかつてないほど検索された。

Neeraj Chopra氏の公式ツイッターアカウントより

​​世界中で8月以降、検索が急増したのは「アフガニスタンを支援する方法」。

アフガニスタンでは、4月末にアメリカ軍が撤退を開始して以降、反政府武装勢力タリバンが勢力を拡大。首都カブールに進攻し都市を制圧し、政府に対する勝利宣言したのに対し、ガニ大統領は出国したため、政権は事実上崩壊し、女性の人権が著しく損なわれる状況に陥った。日本やイギリス、米国など60カ国余りの政府は人権の確保などを求める共同声明を出している。

同じ理由から、「アフガニスタン」はニュース検索ランキングでもトップに入っている。

多くの国が学校・仕事始めを迎える9月、世界では「新しいことの習得にかかる時間」が多く検索された。中でも「日本語を習得するのにかかる時間数」が最も多い結果に。日本語を習得が難しい言語の代名詞と捉えている人が多くいるのかもしれない。

10月には、イギリス・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)を前に、イギリスでは「気候変動は人間が原因か」と「肉食を控えることが気候変動にどう役立つか」という検索量が急上昇。気候変動に関する関心が高まり、自分にできる行動を知りたいと多くの人が感じることとなった。

イギリス・グラスゴーで開かれたCOP26の模様

グーグルの発表には、11月と12月のトレンドは、発表時点で未集計だったためか、11月と12月の検索トレンドには言及されていない。

ちなみに、筆者がGoogle トレンドで調査したところでは、11月、「ブラック・フライデー」が検索急上昇ワードに浮上。

ブラックフライデーはもともとアメリカで感謝祭当日に行われる在庫一斉セールだったが、小売大手アマゾンが様々な国・地域で大々的なブラックフライデー・セールを展開したことなどが拍車をかけた。今では世界各地で多くの人がクリスマス前のギフトや自分へのご褒美品を買い求める一大イベントとなっている。

世界検索各部門の上位を飾ったのは?

世界検索急上昇総合トップを飾ったのは「オーストラリア対インド」、それに2位「インド対イングランド」、3位「IPL(クリケットのインディアン・プレミアリーグ)」というワードが続いた。

これらはすべてクリケットに関連する言葉で、14億人の人口を有するクリケット大国のインドの検索動向が大きく影響した。英語を公用語とする世界最大の国の一つであるインドの存在感がそのまま反映される結果となった。

Netflixの人気作品『イカゲーム』は世界総合テレビ番組でトップに

世界総合テレビ番組トップを飾ったのは、世界を震撼させたNetflixの人気作品『イカゲーム』。勝てば大金が手に入るが負ければ即死、という過激なゲームの行方と、参加する人びとの生い立ちや感情の変化、お互いとの関わり合いなどを鮮明に描き出したドラマシリーズに世界が注目。世界中で熱狂的なファンが生まれ、真似をする人が続出するなどの社会問題も発生したほど。韓国のエンタメコンテンツの強さが浮き彫りとなった。

世界総合フードランキングトップ10には、意外にも日本の「生姜焼き」「ぶりの照焼」「豚汁」というワードがランクイン。日本国民のソウルフードとして小倉優子や剛力彩芽ら著名人が美味しい作り方や食べ方を発信する一方で、世界で高まる日本食ブームの影響を受けた結果となった。

総合ニュースランキング1位は「アフガニスタン」。8月の急上昇ワードにも登場したが、今もなおそこに暮らす人びとの人権は大きく損なわれ続けており、一時のトレンドとしてではなく、状況が改善するまで国際社会は注視し続けなければならない。

2位に登場したワードは「AMC株価」。米映画館大手のAMCエンターテインメント・ホールディングスの株価乱高下劇で関心が高まったのがこのワード。

コロナ禍に閉鎖した映画館の株価が今年5月に急騰を見せ、年初来上昇率1150%を記録。6月に5億8700万ドル(約650億円)を増資した後には、昨年末比で20倍もの上昇振りを見せた。その結果、AMCは今や、米国市場における「ミーム銘柄」の代表的存在となった。

ミーム銘柄とは企業の業績に関係なく、TwitterなどSNSやネット上の情報拡散で大きく注目が集まり、短期間で急激に株価が上がる特徴を持つ。

3位には「コロナワクチン」がランクイン。この一年の間にいかに世界中の多くの人びとがワクチン接種を検討したり、実際に接種したかを伺わせる。

一方、日本の検索急上昇ランキングトップは「東京2020オリンピック」だった。世界を襲うコロナパンデミックの影響で2020年から一年延期された史上初の大会。緊急事態宣言下で、ほとんどが無観客試合を強いられた。しかし、日本にとっては史上最多となる27個の金メダルを含む、合計58ものメダルを獲得するという成功を収めることとなった。

東京2020オリンピックに新種目として採用されたスケートボード

今年も残すところあとわずか。2022年はどんなワードが世界に注目される一年となるのだろうか?

文:西崎こずえ
編集:岡徳之(Livit