インドの暗号通貨動向、禁固ありの全面禁止から規制強化に緩和
人口14億人に迫るインド、暗号通貨・コインに投資をする人の数も非常に多い。ロイター通信が伝えたところでは、1500万〜2000万人に上ると推計されている。
一方、インド紙IndianTodayが伝えたBrokerChooserのデータでは、インド国内で暗号通貨・コインを保有する人の数は、1億70万人に達する可能性も示されている。2位米国2740万人、3位ロシア1740万人、4位ナイジェリア1300万人と、2位以下を大きく引き離す。
このように暗号通貨・コインの取り引きが活発なインドだが、規制が強化される方向で話が進められており、この先投資活動は沈静化する公算が大きくなっている。
以前は完全禁止の可能性も取り沙汰されており、インド当局の暗号通貨に対する姿勢は最近になり幾分緩和された格好だが、今後どのような規制が施行されるのか、多くの人々やメディアがその動向を注視している。
完全禁止の可能性が取り沙汰されたのは2021年1〜3月頃。このとき政府当局の間では、暗号通貨のマイニング、発行、取り引きだけでなく、保有すらも違法にするという世界で最も厳しい禁止案が議論されていた。
このときは暗号通貨のマイニング、発行、取り引き、保有をする者に対して最大10年の禁固を科すべきという政府パネル勧告(2019年)が採用されるのかどうかという点に焦点が当てられていた。
一方2021年11月末時点では、政府当局の態度は緩和しており、上記のような厳しい禁止案ではなく、一部の暗号通貨を例外として認める方針だと報じられている。
CNBCが伝えた11月23日付けのインド議会メモによると、今冬季国会においてインド議会は、デジタル通貨の規制を目的とする新法案を導入する計画であり、それに伴いほとんどのプライベート暗号通貨を規制する方針という。
一方、インド中央銀行が公的なデジタル通貨を発行する法的枠組みも整備する構えであり、ブロックチェーン技術を促進する上で、一部のプライベート暗号通貨を例外的に認める方針であることが示されていた。
今後インド議会ではどのプライベート暗号通貨が例外として認められるのか、市場関係者の関心はこの点に集中している。
中央銀行のデジタル通貨発行、世界の大半で検討開始
中央銀行による公的デジタル通貨の発行は、インドだけでなく世界中の中央銀行が研究・導入検討を行っており、今後同様のニュースが増えてくることが見込まれる。
モルガン・スタンレーの顧客向けレポートによると、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency=CBDC)の導入に関して、すでに世界の86%の中央銀行が導入に関する研究を実施しているという。
また、国際決済銀行(BIS)による2020年の調査でも、ほとんどの中央銀行がデジタル通貨に関する何らかタスクを実施していると回答。シミュレーションを実施しているとの回答は60%、実際にパイロットプログラムを実施・開発中であるとの回答は14%だった。
中央銀行デジタル通貨の推進派が唱える利点には、銀行口座がない人に金融システムへのアクセスを与えるというものや金融取り引きの迅速化・簡易化などが含まれる。ビットコインなどと同様に、スマホのデジタルウォレットさえあれば利用できるようになるため、こうしたことが可能となる。
英国では、中央銀行であるイングランド銀行が2021年4月19日に、CBDC発行の可能性を検討するタスクフォースを設立したことを発表。同中央銀行はこの発表で、CBDCを現預金を代替するものではなく、補完する通貨として家計やビジネスに恩恵をもたらすものと説明している。
また、タスクフォースだけでなく、今後はイングランド銀行内に専門部署を設け、国内機関や国際機関との連携・調整を行っていく方針も明らかにした。
米国も近日中に中央銀行デジタル通貨レポートを発表
中央銀行によるデジタル通貨発行に関して先行しているといわれるのが中国だ。中国の目論見は、外貨準備通貨として世界中で使われている米ドルの覇権を崩すことにあるとみられており、米国も対抗する形でCBDC導入の議論を開始している。
2021年4月の報道では、米中央銀行(FED)はマサチューセッツ工科大学との共同プロジェクトで、デジタル米ドルに関する研究を実施しており、その効果を評価していることが明らかになっている。
同年11月末には、FEDのパウエル議長がデジタル米ドルの導入に関する研究は進んでおり、研究結果に関するレポートを発表すると近況を報告。数週間以内にレポートが発表される見込みで、市場関係者の注目を集めている。
現在CBDCに関しては、各国が独自に検討・評価を進めている状況で、発行や運用に関する国際的なコンセンサスには到達していない。どのような形でCBDCが運用され普及するのか、各国中央銀行の動向に注目が集まる。
文:細谷元(Livit)