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大気・海洋・土壌の汚染、そして地球温暖化など、待ったなしと言われる環境問題。2015年に国連で採択されたSDGsにより、産業活動を支える個々人にも意識改革と行動変容が求められている。なかでも私たちの生活に密接しているのが食品廃棄物の問題や3R(リデュース・リユース・リサイクル)に代表される消費行動であり、未来を担う子供たちへの教育も急がれる。
こうしたなか、日本マクドナルドは食品廃棄物のリサイクルをはじめ、さまざまな環境保全活動を推進。この度、地域活動の一環として子供たちと一緒にサステナブルな世界について考える『笑顔咲かそうプロジェクト』を始動した。SDGsを学ぶオンライン授業や、コーヒー豆のかすを含んだたい肥を撒いた花壇に球根を植えるイベントなど、兵庫県姫路市の豊富小中学校で実施した本プロジェクトの様子をリポートする。
マクドナルドが取り組む食品ロス・食品リサイクル
マクドナルドが取り組む食品ロス対策としてまず挙げられるのが、2005年に導入したオーダーを受けてから作るキッチンシステム『メイド・フォー・ユー』である。システム導入前の2001年と比較し、完成品の廃棄は約51.5%減少したという。
食品リサイクルは、排出したフライオイルを鶏の配合飼料にしていることに加え、2016年から兵庫県姫路市内の8店舗にて、コーヒーを抽出した後の豆かすをたい肥として再資源化(2021年11月現在11店舗で実施)。たい肥は現在香川県のレタス農家でも使用され、収穫したレタスは関東エリアの店舗にて提供されている。
そのほかにも、生ゴミを31店舗で飼料化、31店舗で肥料化、12店舗でメタンガス化(いずれも東京都内)、ポテトの揚げかすを37店舗で飼料化(大阪府内)するなど対策に務め、その範囲を拡大中だ。
子供たちと一緒に取り組む『笑顔咲かそうプロジェクト』
プロジェクトのスタート地となったのは、コーヒー豆のかすのリサイクルを開始した兵庫県姫路市にある豊富小中学校。学校にコーヒー豆のかすを含んだたい肥を贈呈するとともに、五年生の子供たちにマクドナルドの取り組みを紹介しながらSDGsを学ぶ授業(感染症対策を行ったうえオンラインで実施)を行った。講師はマクドナルド312姫路保城店のクルーが務め、スペシャルゲストとしてマスコットキャラクターのドナルドが登壇。楽しく学べるクイズを交えながら進められた。
伝えたいのは、おいしさとスマイル!
まず初めに子供たちに伝えられたのは、マクドナルドはおいしさに加えて“スマイル”を届けたいということ。「おいしいハンバーガーを作るだけではなく、環境にやさしく食品ロスのない世界がみんなを笑顔にできるのではないか」と子供たちと一緒に考えた。
そして、マクドナルドではハッピーセット®のおもちゃがリサイクルされていることが伝えられた。遊ばなくなり回収されたおもちゃは、店舗で使用する緑色のトレイに生まれ変わっている。物が別の物へと形を変えて循環する“リサイクル”という言葉の意味を、わかりやすく知る学びとなった
地球のことを大切にした証【環境ラベル】について
続いて、『FSC認証』をはじめとする環境ラベルについて学ぶ。
『FSC®認証』とは、持続可能な森林の利用と保護を目的とし、それを管理できているかを証明する国際的な制度のこと。マクドナルドではドリンクのカップや持ち帰りの袋などに『FSC®認証』を受けた紙を使用(FSC® N002365)。そのほかにも、コーヒーを提供するカップには、森や生産者の労働環境などを守りながら、より持続可能な農法に従う認証農園産の原料を使用している証であるカエルのマーク『レインフォレスト・アライアンス認証』があり、魚を使ったフィレオフィッシュ®の箱には、海と海の生き物を守る証として魚のマークMSC『海のエコラベル』が付いている。各種環境ラベルを覚えた子供たちは、「今度マクドナルドで食べるときは家族や友だちに教えたい!」と笑顔で語った。
みんなを笑顔にするために何ができるか?
日本における1年間の食品ロスは600万トンであると述べたが、その量を想像してもらうため次のようなクイズが出された。
Q. 日本では1年間にどのくらいの量(重さ)の食品ロスがあるでしょうか? 次の3つの中から考えてください。
① 姫路城(大天守)、約100個分
② 大型客船、約50隻分
③ 大型トラック(10トン)、約1万台分
答えは ② 大型客船、約50隻分。
一方的に答えを提示するのではなく、このようにクイズ形式で進めることで考える力を養い、記憶に残る方法で授業は実施された。食品ロス以外にも、野菜や生ごみの飼料・肥料化、コーヒー豆のかすのリサイクルなど、調理の過程で出てしまうゴミのリサイクルについてもクイズ形式で学んでいった。
コーヒー豆のかすのリサイクルを始めたのは、ここ姫路市内のマクドナルドが全国で最初であると知ると、子供たちは嬉しそうな表情を浮かべる。このたい肥を使って「みんなを笑顔にするために何ができるか?」と問われると、「農家やお花屋さんに送りたい」「街中に花を咲かせてみんなを笑顔にしたい」といった意見が出されるなか、「多くの人にたい肥を配ることで自給自足を促し、日本の自給率を上げたい」という驚きの回答も見られた。
授業を終えた一人の児童に話を聞くと、「SDGsやリサイクルという言葉を知っていたけれど、今日それがどんなものかを詳しく知ることができた」と語った。
コーヒー豆のかすのたい肥から、チューリップを咲かせよう!
授業に続いて行われたたい肥の贈呈式では、日本マクドナルド株式会社コミュニケーション&CR本部CSR部マネージャーの岩井正人氏より「空や海の青、山の緑を守るために、これかもリサイクル活動を一緒にしていきましょう!」と、子供たちと元気な挨拶が交わされた。
そして、先生と児童が協力して作った新しい花壇に、コーヒー豆のかすを含んだたい肥『はなとやさいの土』を撒き、約80個のチューリップの球根が植えられた。このチューリップの花壇は一年生の教室の前に作られており、来年の春に入学する新一年生を笑顔にしたいという歓迎の想いが込められている。
笑顔になれる未来のための学び
最後に、今回のプロジェクトに賛同した豊富小中学校の山下雅道校長と、マクドナルドの岩井氏に話を伺った。
山下校長は、「(小学校と中学校が一つになり)義務教育学校として開校2年目だが、それ以前から消費者教育に取り組んでいた。教育目標に『変動する社会の中で自己を実現できる人材の育成』を掲げているなかで指標が見えにくかったが、SDGsが掲げる17のゴールと169のターゲットがわかりやすく、いろんな授業と絡めて実践を進めている」と話す。
姫路市が『SDGs未来都市』に選ばれたこともあり、郷土愛を育みながらSDGsに関わる学びを推進していきたい思いがあるという。
初のプロジェクトを終えた日本マクドナルドの岩井氏は、「子供たちからSDGsやリサイクルという言葉が出てきて驚いた。SDGsが何であるかを知っていただく入り口として、豆かすのリサイクルについて学んでいただきたかった。ESD(持続可能な開発のための教育)は子供たちだけではなく、学生や社会人の方も一緒に学んでいこうという取り組み。ここ姫路を皮切りに、たくさんの場所に広がっていければ嬉しい」と、感想と今後の展望を話した。
今回のプロジェクトを通して印象的だったのは、子供たちが想像以上に積極的に学ぶ姿勢を見せ、活発な議論が交わされていたこと。SDGsと一口に言ってもその内容は実にさまざま。全体を把握することも大切だが、このように実例のある企業が学びをサポートすることで、子供たちはより具体的に、そしてより身近な問題として捉えられたのではないだろうか。
撮影協力:兵庫県姫路市豊富小中学校
文・安海まりこ
写真・西村克也