地球温暖化の原因となる温室効果ガスで、もっとも排出量が多い二酸化炭素に次ぐのが、メタンガスだ。国連食糧農業機関によると、人為的に排出される温室効果ガスの14.5%は家畜に由来し、そのうち62%は牛が占めるという。

「牛とメタン」と聞いてピンとこない人がいるかもしれないが、胃袋が4つある反芻(はんすう)動物は、消化の過程でメタンを発生させる。彼らが排出するげっぷやおなら、糞尿にはメタンが含まれ、体が大きい牛は、ヤギや羊など他の反芻動物と比べ排出量が多い。

そうはいっても、牛乳や牛肉は、私たちの食卓に欠かせない存在。そこで、“やっかいもの”とされる牛の糞尿から再生可能エネルギーを生産する技術を、アメリカで燃料電池技術を提供するBloom Energyが発表した。

今回発表されたのは、アメリカ・カリフォルニア州ケアマンの酪農場「Bar 20 Dairy Farms」に1メガワット(MW)の燃料電池を配備し、牛の糞尿に含まれるメタンをバイオガスに変えるというもの。

詳しい仕組みを確認しよう。まず、メタン消化装置によって牛の糞尿からバイオガスが回収される。その後、バイオガスはガス浄化装置を経て、電気化学的なプロセスによって再生可能エネルギーに変換される。通常、メタンを燃焼させると二酸化炭素が排出されるが、Bloom Energyの開発した燃料電池は、燃焼せずとも再生可能エネルギーを生み出すことができるという。

糞尿に含まれ大気中に放出されるはずだったメタンを燃料とすることで、牛由来のメタンの排出量削減につながる。さらに、酪農場で使わなかった余剰電力はカリフォルニア州内の電気自動車充電ステーションへ供給され、発電やガソリンの排出に伴う二酸化炭素の削減にも効果が期待される。

Bloom Energyの副社長Sharelynn Moore氏はプレスリリースで、「廃棄物のメタンを回収して再生可能な燃料として利用することは、気候変動に積極的かつ迅速に影響を与える方法です」と語っている。

酪農が盛んなカルフォルニア州では、農場経営者にメタンガス排出量の削減を義務づける法案が登場するなど、牛の排出するメタンを減らす取り組みが盛んだ。たとえば、餌に「藻」を利用することでメタンの排出量を大幅に削減できることも話題になった。

重要なのは「牛を食べることが悪い」「牛を飼わなければいい」ではなく、どう共存できるのかという視点。やっかいものをいかに活用するかという技術やアイデアのさらなる発展に期待したい。

【参照サイト】BLOOM ENERGY DELIVERS RENEWABLE POWER FROM DAIRY FARM WASTE|Bloom Energy
【参照サイト】Global Livestock Environmental Assessment Model (GLEAM)|Food and Agriculture Organization of the United Nations
【参照サイト】Tackling Climate Change through Livestock|Food and Agriculture Organization of the United Nations

(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:牛の糞尿で再エネづくり。アメリカの農場で進む「バイオ」な実験とは?