日本取引所グループ(以下、JPX)とロンドン証券取引所グループ(以下、LSEG)は、2018年7月の両取引所におけるサステナビリティ関連分野およびESG関連の商品・サービスを中心としたマーケティング等における協力合意に基づき、日本の株式市場を広範にカバーするTOPIX 500をベースとする気候関連指数「FTSE/JPXネットゼロ インデックス シリーズ」を新たに開発することで合意したと発表した。

これに基づき、JPX、東京証券取引所(以下、TSE)およびLSEGのインデックス事業を担うFTSE Russell は、2022年上半期の指数算出開始に向け、緊密に協力していくとのことだ。

昨今、気候問題は、投資家にとっての重要性が高まっており、本年10月にFTSE Russellが公表したアセット・オーナーを対象とした「2021サステナブル投資サーベイ」においても、3分の2を超える(68%の)アジア太平洋地域のアセット・オーナーが、気候問題を優先事項として位置付けるとともに、気候リスクについて過半数が「非常に心配している」と回答。

こうした中、気候関連指数は、気候リスクの緩和を志向する投資家にとっての重要性が高まっているが、今般、JPX とLSEGが共同開発する指数によって、投資家は温室効果ガス排出量に基づく資本の再配分が可能となるとのことだ。

FTSE/JPXネットゼロ インデックス シリーズは、温室効果ガス排出量と化石燃料埋蔵量のそれぞれについて、TOPIX500をベースとする親指数から30%削減するように構成銘柄のウエイトを調整し、2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)の達成を目指すという。

また、加えて、グリーン・レベニュー等も踏まえた多面的な評価を行い、グリーン経済へのエクスポージャーの大幅な上昇を達成。

なお、FTSE/JPXネットゼロ インデックス シリーズは、EUの気候移行ベンチマーク(CTB)基準に準拠したものとなる予定しているとのことだ。

また、同指数は、気候問題に関する企業の将来的なパフォーマンスの予測指標である、Transition Pathway Initiative(TPI)の「マネジメント・クオリティ・スコア」を組み入れる予定。

同スコアは、低炭素移行について高い水準の対応を行っている企業へのエクスポージャーを高めるために用いられるという。

TPIは、運用資産および運用助言資産の総額が40兆ドルに上る100以上の主要なアセット・オーナーに支持されている。TPIマネジメント・クオリティ・スコアは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の推奨事項に基づくとのことだ。

TPIマネジメント・クオリティ・スコアはFTSEのESGデータに基づき1300社以上の日本企業について算出される。

今般の指数は、パッシブ運用の連動指標、アクティブ運用のベンチマーク、または投資調査のために活用されることが期待されるという。

日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEOの清田 瞭氏は、以下の通り述べている。

「LSEGと当社は、2018年7月、サステナビリティ関連分野およびESG関連の商品・サービスを中心としたマーケティング等において相互に協力することで合意しました。
今般、その合意に基づき、FTSE Russellと東京証券取引所が、新たな環境指数の共同開発を行うことを公表するに至ったことを誠に喜ばしく思っております。
地球温暖化防止に向けた温室効果ガスの排出削減は、国境を越えて官民で取り組むべき課題であり、本指数が広く利用されることによりこうした取組みをサポートできることを期待しております。」

また、ロンドン証券取引所グループCEOのDavid Schwimmer氏は、以下の通りコメント。

「各国政府が現在グラスゴーで交渉していますが、我々民間部門においても、気候変動関連のファイナンスへのシフトを加速させるため、行動を起こすことができます。
今回のJPXとのパートナーシップは、温室効果ガス排出量に基づく資本再配分を可能にする重要なツールを投資家に提供するものです。
FTSE/JPXネットゼロ インデックス シリーズは、投資家に広く利用されているTOPIX500をベースとしており、2015年のパリ協定を踏まえた日本株式のエクスポージャーを調整することを可能とします。」

JPXとLSEGは、国連の「持続可能な証券取引所イニシアティブ(Sustainable Stock Exchanges(SSE)initiative)」のパートナー取引所として、サステナブル投資の推進に明確にコミットしている。

2021年10月20日、ロンドン証券取引所は、英国の規制および政策を踏まえた発行体向け報告ガイダンスを発行。

この枠組みは、投資家が気候関連の目標に沿うようなポートフォリオのシフトや、投資先企業へのエンゲージメント活動に寄与。

JPXにおいても、2020年に、上場会社の自主的なESG情報開示を支援するために「ESG情報開示実践ハンドブック」を作成・公表し、更に「JPX ESG Knowledge Hub」を開設するなど、上場会社のESG情報開示をサポートしているという。

また、気候変動問題に係るJPX自身の取組みとして、2024年度末までに自社で使用する全ての電力について再生可能エネルギーに切り替えることなどにより、同時期までにJPXグループ全体でのカーボン・ニュートラルの達成を目指しているとのことだ。

その第一歩として、JPXは、2021年10月に本社オフィスビル等の電力契約を切り替えることにより、年間ベースで二酸化炭素排出量を27%削減する予定であるとしている。