アサヒ、社有林で「低コスト再造林プロジェクト」の実証実験開始 早生樹「コウヨウザン」を植栽して生育期間も大幅短縮

アサヒの森 植栽

アサヒグループホールディングスは、全国森林連合組合会と、農林中央金庫が立ち上げた、再造林・育林にかかる期間短縮・コスト削減を実現する「低コスト再造林プロジェクト」に参画することを発表した。

社有林「アサヒの森」の一部を試験地として提供し、早生樹「コウヨウザン」を育林する実証実験の実際の作業は、三次地方森林組合に委託するとのことだ。

プロジェクトでは、10月上旬から「アサヒの森」の三次市地区の一部(約1ha)を伐採し、伐採と造林を一体的に行うことにより、10月下旬から「コウヨウザン」の苗木約1,500本を植栽。

5年間の実証実験期間において生育状況を確認することで、従来型の造林と比較した作業量や育林コストの低減などを検証するとしている。

現在林業が抱える課題を解決する持続可能な森林・林業の実現に向けた新たな事業モデルを開発し社会実装することを目指すことで、山村地域の活性化にもつなげるとのことだ。

【左】「アサヒの森」試験地(伐採直後の風景)
【右】「コウヨウザン」のコンテナ大苗

「アサヒの森」の試験地における各社の役割は、アサヒグループホールディングスは実証実験のための試験地の提供、全国森林連合組合会は事業主体としてプロジェクトの進捗管理(実証試験は三次地方森林組合)、農林中央金庫は、プロジェクト費用支援や企画・調整機能となるという。

日本は国土面積の約3分の2が森林で、生物多様性の保全やCO2吸収による地球温暖化防止への貢献など森林が有する多面的機能への注目が高まっている一方で、森林・林業経営においては、健全な経営を行う上で多くの課題を抱えているとしている。

日本の森林は戦後造林された人工林が中心で、その約半数が一般的な主伐期にあたる50年生を超え、国産材の利用や安定供給のために50年生の樹木を伐採し、新たな苗木を植える作業が必要となっているが、再造林とその後の育林にかかるコスト増、担い手の確保ができないことなどから、再造林が進まない状況だという。

これら林業の課題解決に向けた一つの方策として、「低コスト再造林プロジェクト」において、生育期間の短縮や育林コストの削減を目指し、木材強度と成長性に優れた早生樹「コウヨウザン」の再造林・育林を実施。

「コウヨウザン」はスギの約2倍の速さで成長するため、スギで約50年かかる伐採までの期間が30年弱に短縮できるという。

また、苗木にコンテナ容器で育苗された「コンテナ苗」で、かつ通常より大きな「大苗」を活用し、更に伐採と植栽を同時に行うことや面積あたりの植栽本数を減らすことで、地ごしらえや雑草の下刈りなどの作業が削減されることにより、再造林・育林コストが半減される見込みとのことだ。

「コウヨウザン」の再造林・育林イメージ

アサヒグループは持続可能な社会への貢献を目指し、「アサヒグループ環境ビジョン2050」を策定。

2050年までに、事業活動における環境負荷ゼロ(ニュートラル)を目指すとともに、アサヒグループの独自技術や知見を生かした新たな環境価値創出(プラス)することで、事業成長とともに持続可能な社会の実現に取り組んでいるとしている。

林業は気候変動の緩和・適応に貢献する産業で、森林の適切な整備や保全等を通じて地球温暖化防止の取り組みを推進していく必要があるという。

同プロジェクトで得られた成果を全国に波及させることで再造林を促進し、持続可能な森林・林業経営の実現に向けて取り組んでいくとのことだ。

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