日立ら、農業人材育成で成長を見える化する農業版iCDを開発 スマート農業分野にIT技術者育成モデルを適用

一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター、トップリバー、日立ソリューションズ東日本、ファインドゲート、一般社団法人iCD協会は、農研機構委託事業スマートファーマー育成コンソーシアムにおいて、『農業人材育成で成長を見える化する農業版iCD』(以下、農業版iCD)を開発したと発表した。

農業界では、農業従事者の高齢化が進むとともに、農業人口は減少を続けており、人手不足が益々深刻化している現状において、人材確保は焦眉の急となっている。

この問題における解決策の一環として、経営スタイルは個人から法人化への流れが加速しており、これまでの経験や勘に頼る農業から、効率的な農業を組織的に実践できるスタイルへの転換が求められているとのことだ。

こうした背景の中、教育研修やOJTに力を入れた農業人材育成への取り組みなどが近年積極的に行われるようになっているが、具体的な人材像が定義されていないまま行われているのが現状であるという。

また、農業界の人材育成に関しては、教育研修やOJT自体も体系化されておらず、経験則を元に構成されていることも大きな課題のひとつとなっている。

こうした背景のもと、効率的な農業を実践できる人材を育成するためには、効率的な農業の業務(タスク)を明確にし、そのタスクをレベルアップさせるための人材育成プログラムが必要になると考え、浅間リサーチエクステンションセンター、トップリバー、日立ソリューションズ東日本、ファインドゲート、iCD協会が協力し、「農業版iCD」を開発。

「農業版iCD」は、情報処理推進機構(IPA)が提供する、企業においてITを利活用するビジネスに求められる業務(タスク)と、それを支えるIT人材の能力や素養(スキル)を「タスクディクショナリ」、「スキルディクショナリ」として体系化した「i コンピテンシ ディクショナリ」(以下、iCD)を農業法人の監修のもとに農業向けに適用したものであり、農業界に導入することで、効率的な農業を実践できる人材の育成を支援するという。

「農業版iCD」では、農業のライフサイクル「戦略・営業・生産・評価改善」のタスクをベースに、リソースやスキルを見える化し、それぞれにタスクレベルを設定。

また、タスクレベルに合わせた教育コンテンツを提供し、習得度の測定を行うことにより、農業における導入・運用を可能としているとのことだ。

「農業版iCD」の有効性を検証するため、有限会社トップリバーにて、農業従事者にタスクレベルの診断を実施した後、タスクに連動させた人材育成プログラムの受講と農作業を実施。

その後、再度タスクレベル診断を実施し、一連のプロセスについてアンケートを行った結果、農作業への取り組み方への理解、自己成長へのモチベーション向上等で効果が現れることが確認できたという。

また、「農業版iCD」の導入により、効率的な農業を実践できる人材(スマートファーマー)育成へ向けた教育体系を現場の業務(タスク)を元に構成することが確認できたとしている。

農業iCDの特長

1) 業務(タスク)を体系化、業務の全体像を把握し、課題が見える。
2) 一人ひとりの業務(タスク)の遂行能力とスキルレベルを把握できる。
3) 自分自身の成長度合いを見える化し、成長のモチベーションにつながる。
4) 個人の強み、弱みに合わせた、効果の高い教育できる。また、教育コンテンツの再利用が可能。
5) 生産者(地域)の強み・弱みが視覚的に把握でき、注力すべき業務・教育がわかる。

農業版iCDの効果

<個人の効果抜粋>
1) 自己診断を実施することにより、自己理解と成長へのモチベーションにつながった。
2) 座学研修前後で自己診断を実施したが、生産計画やリスクマネージメントなど目に見える形で効果がわかった。
3) 年次教育の目標値として、診断レベルを利用することで、明確なキャリアパスが示せると考える。

<経営効果抜粋>
1) 名もなき業務の明確化により、業務引継ぎ等の効率化が期待できる。
2) 独立を目指していく中で、経営への参画意識が高まった。

各社の役割

浅間リサーチエクステンションセンター:スマートファーマー育成コンソーシアム代表機関
トップリバー:スマートファーマー育成コンソーシアムメンバーとして、農業版iCDの導入および運用
日立ソリューションズ東日本:スマートファーマー育成コンソーシアムメンバーとして、農業業務の体系化を行い、農業版iCDの導入・運用を支援
ファインドゲート:教育コンテンツの作成、研修の実施、iCDタスク診断ツール(あたりずむ)の提供
iCD協会:iCDタスク開発の指導および監修

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