リモートワーク・オンライン授業からオフィス・学校に復帰、テック活用の可能性と課題

今後の働き方は、リモート、オフィス、ハイブリッド?

リモートワークが定着した一方で、オフィスワークやハイブリッドワークに復帰しようという企業は少なくない。

米CNBCの報道によると、米国ではグーグルが2022年1月にオフィスワークへの復帰を計画。アップル、アマゾン、フェイスブック、スターバックスも同様のタイムラインでオフィスワーク復帰を計画しているという。

こうした大手企業の意向は「安全スマートオフィス」という新たな市場を作り出すことになるだろう。実際、オフィスワーク復帰需要を汲み取った様々なソリューションが次々と登場している。

たとえば、米ロサンゼルスの不動産運営企業Coretrust Capitals Partnersは2021年6月7日のプレスリリースで、同社が運営するオフィスビルでUVC殺菌ロボットを導入することを発表した。

殺菌ロボットが導入されるオフィスビルの1つがロサンゼルスの「Four Forty Four」。UBTech Roboticsが開発したUVC殺菌ロボ「ADIBOT UV-C」を導入する。ADIBOT UV-Cロボがオフィスに導入されるのは米国では初と謳っている。

ちなみにUBTech Roboticsは、深センを拠点とし、テンセントや中国工商銀行から出資を受ける中国企業だ。

UV殺菌&空気清浄テクノロジー

このほかにも様々なオフィス向けのUVテクノロジーが登場している。

米ワシントン発のUV AngelはUV殺菌と換気を同時に行う空気清浄システムを開発。米国内外での利用が進んでいる。

2021年5月にはヘルスケア商品調達を行うオーストラリアの組織HPAがUV Angelと提携したことを発表。HPAは、オーストラリアだけでなく、ニュージーランドのオフィスやホテルのヘルスケア商品調達を担っており、域内で広く導入されることが見込まれる。

一方、米国内ではテキサスやイリノイのマクドナルド・フランチャイズ店、またシカゴの学校などで広く導入されているようだ。

超音波ハプティック技術で、タッチレスでも触る感触実現

UVC殺菌テクノロジーのほか注目されるのが「タッチレステクノロジー」だ。

タッチレスに関しては、赤外線を利用した技術がよく知られている。一方、超音波/ハプティック技術を活用した新しいテクノロジーも登場している。

シリコンバレーと英ブリストルに拠点を置くUltraleapは、超音波によってハプティック効果を生み出す技術を活用したタッチレスソリューション「Stratos」を開発。

これは超音波によって、ハプティック空間を作り出し、何もない場所に仮想タッチパネルを配置できるもの。赤外線では触った感覚は得られないが、Ultraleapのソリューションでは非接触でもボタンを押した感覚を得ることができる。

同社ウェブサイトによると、エレベーター、チケットマシン、ATMなどに応用可能という。

UV殺菌テクノロジーをめぐる課題

オフィスや学校を安心・安全に利用するための様々なテクノロジーが登場し注目されているが、課題も存在する。

特に、UVを利用する殺菌テクノロジーは現時点で業界基準がなく、有害なものや効果がないものが出回る状況。欧州では基準を設けるべきとのがあがっている。

UVCとは波長が200〜280ナノメートルの紫外線。通常オゾン層で吸収されるため、地表には届かない。殺菌力が強く、コロナ菌などを殺菌するために利用されている。

問題は、UVCの中でも波長によって有害になるものとそうではないものが存在するが、基準がないために、様々なプロダクトが出回っている点だ。

国際UV委員会(IUVA)のトロイ・コワン氏によると、280〜400ナノメートルと少し波長が長くなるだけで、火傷や角膜損傷、さらにはがんにつながる可能性があるという。

UVC波長の中では、222ナノメートルが最も安全といわれており、現在その安全性を実証するための研究が各国で実施されている。

この研究課題では、2020年3月に神戸大学とウシオ電機の研究グループが222ナノメートルの安全性を世界で初めて実証したとして海外メディアでも取り上げられている

コロナ禍ではこれまで、オンライン会議などリモートワーク向けのテクノロジーが注目されてきたが、大手企業のオフィスワーク復帰需要の高まりを鑑みると、今後はオフィスワーク向けのテクノロジーが盛り上がっていくことが予想される。

[文] 細谷元(Livit

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