渋谷区とKDDIは、高齢者のデジタルデバイド解消による生活の質 (以下、QOL) 向上を目的とし、渋谷区が募集した65歳以上でスマートフォンを保有していない約1,700名の渋谷区民を対象に、スマートフォンを無料で貸し出す実証事業を、2021年9月6日から開始すると発表した。

あわせて、勉強会などによるスマホデビュー時のサポートや同実証参加者のスマートフォン利用状況の分析結果を基にした利用促進サポートを実施するとのことだ。

高齢者がスマートフォンを使い始めてから使いこなせるようになるまで継続的にサポートを実施することで、渋谷区の高齢者のスマートフォン利用率向上を実現し、デジタルデバイド解消によるQOL向上を目指すとしている。

■背景と課題

渋谷区はこれまで、区民に対してLINEを活用した情報配信や防災アプリなどのデジタルサービスの提供を進めてきた。しかし、65歳以上の高齢者43,000人のうち、約25%の人はスマートフォンを保有していないなど、デジタルサービスを十分に活用できていない状況であるという。

デジタルサービスを普段から活用できていないと、災害時に避難情報がリアルタイムに届かない状況が想定される。

また、ウィズコロナ時代に求められる「新しい生活様式」の中では、オンライン申請など非接触型サービスの活用が重要であることから、高齢者のデジタルデバイド解消は喫緊の課題であるとのことだ。

高齢者のスマートフォン利用率が上がらない理由として、スマートフォンの利用方法を教わる機会が少なく、スマートフォンを使いこなせるようになるまでのハードルが高いといったことなどが挙げられている。

今回の実証では、スマートフォン勉強会の実施や専用コールセンターの開設により、スマートフォンの利用方法を教わる機会が少ないという課題を解決するという。

あわせて、同実証参加者の利用状況に応じたサポートを継続的に実施することで、スマホデビューをした高齢者がスムーズにスマートフォンを使いこなせるようになる環境づくりを目指すとのことだ。

両者は、同実証を通じて、高齢者のスマートフォン利用促進によるデジタルデバイド解消を実現し、スマートシティの実現を目指していくとしている。

■同実証について

1.同実証の概要

(1)高齢者に寄り添ったスマートフォン利用開始時のサポート
高齢者がスマートフォンをスムーズに利用開始できるよう、サポートを実施。

<サポート例>

端末貸与:スマートフォンを2年間無料で貸与

活用支援
参加者向けスマートフォン勉強会を適宜開催
参加者専用コールセンターを設け、簡単に相談できる環境を用意
操作方法がわかりにくい場合、遠隔での操作サポートを実施

QOL向上:
渋谷区防災アプリのプリインストール、および勉強会での講習
健康アプリのプリインストール、および勉強会での講習
キャッシュレスアプリのプリインストール、および任意勉強会での講習

なお、スマートフォン勉強会は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策を実施の上、開催するとしている。

(2)同実証参加者のスマートフォン利用状況の可視化と利用促進に向けた課題の分析
アプリケーションなどの利用ログや勉強会などにおけるアンケート情報を収集し、個人の特定ができない形で利用状況を可視化することにより、高齢者のスマートフォン利用の活性化に対する課題を抽出。なお、個人の通話およびメールの内容、写真、インターネットの検索履歴情報を利用することはないとしている。
 ● 利用ログなどの定量的なデータやアンケートから得られる定性的なデータの両面を用いて、スマートフォンの利用状況・意識の変化を見える化。
 ● 意識変化のアンケートに関しては、高齢者研究の専門家監修のもと、作成するという。

(3)分析結果を踏まえたサポート
同実証参加者のスマートフォン利用状況を分析した結果を踏まえ、スマートフォン利用を促進するためのサポートを実施。
同実証を通じて抽出した高齢者のスマートフォン利用を促進するための課題やその解決策については、渋谷区のデジタルデバイド解消に向けた取り組みに活かしていくとしている。

2.両者の役割

【渋谷区】
KDDIとともに同実証を推進。同実証における各種施策の企画・検討、参加者の募集、勉強会の会場管理、参加者へのスマートフォン普及と利用を継続的に支援する。
データから潜在的ニーズを把握し、高齢者に対して個別最適化された情報やサービスを提供できるようにするなど、区の新規施策の検討や既存事業の見直し改善につなげ、スマートシティの推進を加速するとしている。

【KDDI】
同実証全体のプロジェクトマネジメントを実施。同実証における各種施策 (スマートフォン端末、専用コールセンター、スマートフォン勉強会、データ分析の企画・運営) の検討支援・運営および利用促進を支援。

3.対象者

渋谷区の公募で募集した65歳以上でスマートフォンを保有していない約1,700名の渋谷区民。